オグリキャップ馬像建立募金~オグリの雄姿を、永遠に。~

私とオグリキャップ 感動をありがとう。今、想いを形に

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鈴木淑子(すずき・よしこ)
東京都生まれ。OLから放送界に転職し、競馬とめぐり合って四半世紀!訪れた競馬場は13ヶ国・32場。テレビ・ラジオへの出演やイベント司会などで幅広く活躍中。著書に「思い出競馬」(ミディアム出版)、「わたしの競馬物語」(双葉社)、「もっと知りたい絶叫KEIBA」(光文社)など。

2010年12月26日、第55回有馬記念の日。中山競馬場には12万人のファンがつめかけ、大変な活気に包まれました。その様子に、オグリコールに沸いた20年前の有馬記念が思い出されました。「オグリキャップ・メモリアル」と称された昨年の有馬記念は、あのときの熱気を感じさせるものでした。

2010年7月3日。オグリキャップの悲報が友人から携帯メールに届きました。地下鉄のホーム。あまりに突然のことに愕然とする。車中、いろいろな場面が頭をよぎって、涙がでてきました。

1988年3月、地方・東海で12戦10勝の実績をひっさげて中央入りした初戦のペガサスS。圧勝ぶりに驚きました。はじめてその強さを目の当たりにしたのは、関東初見参となった、6月のニュージーランドT。持ったままの7馬身差の勝利に、皆、呆然でした。

その後も、一戦一戦、ファンを虜にしていくのですが、とくに印象深かったのは、89年、平成元年の毎日王冠です。

直線、先頭に立ったウインドミルをかわして、いったんメジロアルダンがチャンスをつかむかに見えたのですが、その外から、オグリキャップとイナリワンが豪快そのものの伸び脚をみせて、並んでゴール。写真判定の結果、鼻差でオグリキャップに軍配が上がりましたが、力を底力がねじ伏せる、まさに背筋が凍りつくようなレースでした。またあの最後にグッと首を伸ばすところがオグリキャップの勝負根性であり、真骨頂なのですよね。いまでも(いえ、オグリのラストランまではかな?)、私自身の“レース・オブ・ザ・ライフ”ではないかと思えるほどで、あの直線の醍醐味は、一生忘れることがないと思います。

オグリキャップの取材で最も興味深かったのは、89年、マイルCSから連闘で臨むことになったジャパンCのときのことです。

レース3日前の木曜日の朝、東京競馬場の馬房で、カイバを一心不乱に食べるオグリキャップを、私は少し離れたところからしゃがんで眺めていました。オグリキャップは、馬房ではいつも食べるか寝るかののんびり屋さん。厩舎では、無駄な力を使わない賢さだったのでしょう。食べるときは、カイバ桶に一度顔を入れたらきれいに食べ終わるまでモクモクと食べ続けるオグリキャップが、突然、カイバ桶から顔を上げたのです。そしてある方向をじっと見ている。視線をたどると、そこには引き運動をしているホーリックスの姿が。オグリキャップは、ホーリックスをずうっと目で追い、見えなくなるとまたカイバ桶に顔を戻したのです。そして一周してふたたびホーリックスが姿を現すと顔を上げて目で追ったのです。エッ、初恋?なんて考えて、とても可愛く思えてなりませんでした。そしてジャパンCでは、ホーリックスを懸命に追いかけ、世界レコードのワンツーフィニッシュ。

いつも力の限り頑張るオグリキャップのみせたあの仕草。いま思い出してもほのぼのとしてきます。一時オグリキャップとホーリックスの配合が話題になりましたが、実現には至りませんでした。オグリの初恋、叶えてあげたかったなあと残念でした。

そういえば、記者の友人が許可を得て、オグリの馬房前で写真を撮ったとき、彼女の肩に顔を乗せたままオグリが寝てしまったそうです。それから、温泉療養していたとき。タオルを耳と耳のあいだに載せて温泉につかり、目がトロンとしてきもちよさそうな”タオルキャップ”の姿も、ほんとうにかわいかった。愛嬌たっぷりなところもオグリキャップの大きな魅力でした。

黄色い声援を競馬場にはじめて起こしたオグリキャップ。あのときオグリに魅せられファンになった女性たちは、その後母になり、息子や娘が競馬好きになっても、決してめくじらを立て反対することなく、「あ~、お母さんもね、オグリキャップという馬が大好きで追いかけていたのよ」と、競馬の楽しさを一緒に話せる母親になっていると思います。それは競馬にとって大切な文化遺産です。

クラシック登録がなく、3歳で天皇賞・秋からJC、有馬記念のローテーションに挑み、結果を出したことで、3歳秋の新しい道を作り、また、クラシックの追加登録制度にもつながりました。それもまた、オグリキャップが残してくれた大きな財産です。

叶わないような夢を現実に変えてくれたラストラン。とてつもなくすごいものを見てみたいというファンの願いを叶え、あわただしく過ぎていく日々に、いくつものアクセントをつけてくれたオグリキャップ。そしてこんなにもファンに愛される馬はもう二度と現れないでしょう。ニュージーランドTが、「オグリキャップ記念・ニュージーランドT」と冠名レースになることを熱望し、オグリキャップの素晴らしさをこれからも語り継いでいきたいと思います。

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