馬産地見学ガイドツアーレポート[ツアー3日目]
ツアー3日目:胆振地区の牧場・施設を見学。日帰りツアー組みが合流しました。
2019年10月5日
早来ファーム
台風一過とはよく言ったもので、前日までとは打って変わって、最終日は快晴に恵まれました。この日からは新千歳空港近隣の牧場をまわる「日帰りツアー」の方々にもご参加いただきました。
日高案内所の河村所長率いる一行は午前8時に宿泊地を出発。一方、この日からご参加いただく「日帰りツアー」の方々は胆振連絡センターの職員が先導役を務め、ほぼ同時刻に集合場所となった新千歳空港を出発します。
日帰りツアー組が向かうのは競走馬の小学校ともいうべき「早来ファーム」です。ここは離乳を終えたばかりの当歳馬が入厩し、本格的な育成段階に入るまでの約1年を過ごす場所です。
清水さんの案内で、離乳を終えたばかりの当歳馬を見学させていただきました。「中期育成」というと、なかなか馴染みがないかもしれませんが、今、生産界ではもっとも注目されている部分です。体力をつけること、そして人間との信頼関係を築くこと。生産部門から後期育成部門へと橋渡しを行ううえで、大切な役割を担うところです。
ここでは、ディープインパクトやオルフェーヴル、キタサンブラックといった年度代表馬の産駒など5頭ずつ2グループに分けて計10頭のパレードを見ていただきました。快晴の分、風は強く、また普段とは異なる環境に置かれた当歳馬たちですが、引き手の方々との意思疎通もピタリ。息のあった行進を披露してくれました。
社台ファーム
日本を代表する総合牧場の社台ファームですが、実は競走馬のふるさと案内所ツアーで訪れるのは、今回が初めてです。ここから2泊3日でご参加いただいた方々と、早来ファームでの見学を終えた日帰りツアーの方々が合流します。
日帰りツアー組は途中社台ファームの近くにこの春オープンしたばかりの「道の駅あびら」に立ち寄り、その後合流したツアー一行は2台のバスで社台ファームへと向かいます。
社台ファームでは青田さんの案内で、繁殖牝馬、そして当歳馬、場内施設を案内していただきました。
最初に登場してきたのはサラフィナです。現役時代は世界的な大馬主アガ・カーン氏の所有馬として活躍し、仏オークス(G1)やサンクルー大賞(G1)などG1競走を3勝、凱旋門賞(G1)でも3着となった馬です。繁殖牝馬としても日本産馬ジェニアル、そして2歳サヴァランがフランスの重賞競走を勝ったことなどが青田さんから説明があります。そして、仏オークス馬ラクレソニエールを産んだアブソリュートレディと、その当歳(牡・父ディープインパクト)、ディープインパクト産駒の桜花賞馬マルセリーナが産んだ当歳馬(牡・父キングカメハメハ)。いずれも貴重な血統馬であることは言うまでもありません。活躍を期待したいと思います。
その後は、場所を移動して社台ファームの育成施設を見学させてもらいました。屋内トレッドミルはルームランナーの馬バージョン。そしてウッドチップ坂路コースでは、実際にウッドチップの上を歩かせてもらって感触を確認、そして坂路の角度をご確認いただきました。坂路の入り口にはゲートも設置されており、普段は見ることが出来ないゲートを実際にくぐる参加者もいました。
ノーザンホースパーク
昼食会場にもなっているノーザンホースパークは開業30年を迎える「馬とふれあえる北海道のテーマパーク」。ここでは、ゆっくりと食事を楽しむ方、みやげ物を選ぶ人、名物となっているポニーショーを楽しむ方、そして乗用馬として活躍している引退名馬との再会を楽しむ人など、それぞれです。また、ちょうど訪れた日はホースギャラリーで行われている「ディープインパクト展」の開催日。7月に急逝した名馬の思い出の品々を見学させてもらいながら、在りし日のディープインパクトを偲ぶ方もいらっしゃいました。
乗用馬厩舎では、「日本の競馬を変えた1頭」28歳になったディープインパクトの母ウインドインハーヘアが余生を過ごしていました。
また乗用馬としても活躍を続けるアロンダイトやラストインパクト、フォゲッタブル、アドマイヤジュピタなどと再会を果たし、訓練中のデルタブルースをカメラに収める方もいらっしゃいました。昨日までの悪天候が嘘のような、穏やかな時間でもありました。気がつけば、正午前に到着したノーザンホースパークですが、すでに時計の針は13時30分をまわりました。さまざまなアトラクションが用意されているノーザンホースパークは丸々1日を楽しむこともできる場所ですが、バスの集合時間に遅れる方は1人もおりません。
さぁ、いよいよ名馬がキラ星のごとくにラインナップされている社台スタリオンステーションです。
社台スタリオンステーション
到着すると、三輪さんが出迎えてくれました。簡単なあいさつのあと、さっそく展示場所へと向かいます。
最初に出迎えてくれたのはスプリンターズS(G1)2連覇を成し遂げた芦毛の快速レッドファルクスでした。続いて最優秀短距離馬で、2歳チャンピオンサイアーのダイワメジャー、最優秀2歳牡馬で皐月賞馬ロゴタイプ、産駒活躍中のリーチザクラウン、菊花賞(G1)と有馬記念(G1)に勝ったサトノダイヤモンド、欧州チャンピオン牡馬ノヴェリスト、宝塚記念(G1)優勝サトノクラウン、三冠馬オルフェーヴル、ダービー馬キズナ、父子で海外G1競走制覇を成し遂げたルーラーシップ、昨年の新種牡馬チャンピオンになったジャスタウェイ、いまや貴重な存在になったサンデーサイレンス直仔のハーツクライ、年度代表馬キタサンブラック、高松宮記念(G1)2連覇で、いまやサイアーランキングの上位常連キンシャサノキセキ、米国のチャンピオンスプリンターとなったドレフォン、皐月賞馬イスラボニータ、幻の三冠馬とも言われるドゥラメンテ、初年度産駒が好調なリアルインパクトとエピファネイア、ドバイゴールデンシャヒーン(G1)連覇のマインドユアビスケッツ、次代を背負う存在になったハービンジャーと、日本生産界の宝ともいうべきロードカナロアが、種牡馬展示会さながらの、三輪さんの解説とともに約60分の間に紹介されます。今年は南半球へシャトルされている馬を除き、ほぼすべての種牡馬を紹介いただきました。毎年のことではありますが、本当に贅沢な時間です。お土産に貴重なスタリオンブックもご厚意でいただきました。
ノーザンファーム
長いようで、それでいてあっという間のツアーの最後を飾るのはノーザンファームの本場ともいうべき、早来牧場です。言うまでもなく生産、育成、そして調教を行う総合牧場で現在は北海道内外に6つの牧場(ノーザンホースパーク含む)を構え、世界に通用する強い馬づくりに励んでいます。
今年は宮本さんと、杉田さんのお2人にバスへ乗り込んでいただき、場内を解説いただきました。また、途中ではスイープトウショウが産んだ1歳馬(牝、父ドゥラメンテ)をご紹介いただきました。期待の新種牡馬ドゥラメンテの初年度産駒にして、母は牡馬を蹴散らして宝塚記念(G1)に勝利した最優秀4歳以上牝馬。期待の大きさは言うまでもありません。そして、再びバスに乗り込むと、数々の名馬を送り出してきたノーザンファームの屋内800m坂路コースへ。ここでは、ノーザンファーム創設以来、数々の馬を育ててきた育成主任の林さんからフサイチコンコルドやシュヴァルグラン、ドゥラメンテなど、これまで手掛けてきた数々の馬たちのエピソードなどをご紹介いただきました。
楽しかったツアーも本当にラスト。ノーザンファーム早来の坂路コースから新千歳空港へと向かう道すがら、事実上種牡馬を引退したクロフネの姿を横目でみながら帰路につきました。