2019秋 北海道馬産地見学ガイドツアー 現地取材レポート

馬産地見学ガイドツアーレポート[ツアー1日目]

ツアー1日目:待ちに待ったツアーがはじまりました。初日は平取・門別・新冠地区の見学をしました。

2019年10月3日

新千歳空港


新千歳空港に集合。ここからツアーが始まります。
他の写真を見る
他の写真を見る

毎年ご好評をいただいております「秋の北海道馬産地見学ガイドツアー」。11回目となる今回は、北海道市場の開催スケジュールの変更に伴い10月での実施となりましたが、通常は見学不可の名馬や繁殖牝馬にも出会えるチャンスとあって定員の約4倍のお申し込みをいただきました。

例年どおりに参加者の方々は羽田空港発着組、新千歳空港発着組に分かれてスタート地点の新千歳空港到着ロビーでの集合となります。毎年のことながら「北海道馬産地見学ガイドツアー」は競争率の高いツアーゆえにお1人、あるいはお2人での参加がほとんどです。中には、他のツアーで一緒になったことがあるという旧知の方もいらっしゃったようですが、この時点では参加される方々は、どこかぎこちない印象を受けます。もちろん、スタッフも声がけはいたしますが、集合場所は新千歳空港のロビーですから、他のお客様の邪魔にならないように静かにみなさんが集合するのを待つことになります。

やがて出発時刻となり、バスに乗り込みます。移動するバスの座席は毎回主催者の方で決めさせていただいておりますが、今回、2泊3日で参加される方々はお手数ではありますが、日毎に席順を替えさせていただきました。後方座席の方々はどうしてもバスの乗降に時間と手間を取らせてしまうこと、それから見学場所で良いポジションをキープしにくくなるという背景があるからです。

今回もバスのハンドルを握るのは日交ハイヤーの堀茂行さん。馬産地を知り尽くしているベテランドライバーです。

車中では、競走馬のふるさと日高案内所の河村伸一所長から見学に関するマナーと注意点と、昨年から導入したイヤホンガイドに関する説明と、同行させていただくスタッフの紹介がありました。

坂東牧場


ツアー最初の訪問先、坂東牧場に到着
他の写真を見る
他の写真を見る

最初の目的地は、ハードル界というカテゴリーを越えたヒーローとなったオジュウチョウサンを生産、育成した坂東牧場です。その歴史は長く、創立は昭和25年。当初は育成に特化した牧場だったのですが。歴史を積み重ねていく中で事業を拡大させ、現在は生産、育成、そして休養と300馬房を有す総合牧場へ発展してきた牧場です。

ツアーが行われた10月上旬は、秋を目指す馬たちを送り出し、来年のデビューを目指す1歳馬たちのブレーキングが行われる時期です。残念ながら時間の関係で馬の調教を見ることはできませんでしたが、キーンランドカップ(G3)、阪急杯(G3)など2つの重賞競走に勝ったほかスプリントG1競走で2着2回3着1回と活躍し、現在は種牡馬として供用されているビービーガルダンと、調教施設を同牧場の深瀬将行さんに紹介いただきました。

15歳になったビービーガルダン、そして1周1000mの周回コースと全長840mの坂路コース。そして何よりも人馬の安全を見守るモニタールームに参加者の方々は感心しきりでした。

ダーレー・ジャパン スタリオンコンプレックス


ファインニードル
他の写真を見る
他の写真を見る

「とねっこの湯」では、立食形式でのランチタイムです。「旅のしおり」には“軽食”とありますが、今回も「とねっこの湯」様の粋な計らいで食べきれないほどの食材がテーブルに並べられます。参加者の多くはほぼ初対面なのですが、そこは同じウマ好き同士。たっぷりの食材を前に共通の話題に花が咲いたようです。

そして、ツアーはいよいよ本番です。

ダーレー・ジャパン・ファームは、世界7か国で競走馬の牧場を所有する「ダーレー」グループの日本法人。ツアーの直前に行われたスプリンターズステークス(G1)を制したタワーオブロンドンも、同ファームの生産馬ですが、今回は「ダーレー」グループが誇る種牡馬たちを同ファームのノミネーションオフィス・石澤考康さんの解説で見学させていただきました。最初に登場したのは現役を引退したばかりのスプリンターズステークス(G1)覇者ファインニードル。続いて産駒活躍中のフリオーソ。続く3頭目には年度代表馬にもなったアドマイヤムーン。16歳になり、風格のようなものも備わってきたような印象です。続いてブリーダーズCターフ(G1)の覇者タリスマニック。漆黒の馬体に派手な4白流星。おそらく初めて見る方がほとんどだと思いますが、一度見たら、忘れられないような馬かもしれません。その後、アメリカンペイトリオットや、モンテロッソなど6頭の種牡馬を、たっぷりの解説とともに堪能させてもらいました。また、見学の予定にはありませんでしたが、1997年のフェブラリーS(G1)を勝ったシンコウウインディも馬房から顔をのぞかせてのプチ・サプライズ。26歳という年齢を感じさせない元気そうな表情に、参加者のみなさんも頬を緩ませていました。

下河辺牧場


ブロードストリート
他の写真を見る
他の写真を見る

「北海道馬産地見学ガイドツアー」ではすっかりお馴染みの下河辺牧場。ここは生産、育成、調教と競馬場に送り出すまでのすべてを行う総合牧場です。年間の生産頭数は約100頭。「生産・繁殖部門」「イヤリング(中期育成)部門」「育成・トレーニング部門」に分かれて強い馬づくりに励んでいます。

今年は、凱旋門賞(G1)に挑戦するキセキを応援するために下河辺行雄社長は渡仏。代わって。バスには隆行専務に乗り込んでいただき、延べ総面積250ha(東京ドーム約50個分)という牧場を案内いただきました。

時期的なものもあって母仔一緒のシーンは見ることができませんでしたが、同牧場生産馬でブエナビスタやレッドディザイアと好勝負を繰り広げたブロードストリートや、阪神ジュベナイルフィリーズ(G1)に勝ったショウナンアデラの母オールウェイズウィリング、それから下河辺牧場生産で桜花賞(G1)に勝ったアユサンの当歳馬(牡・父ルーラーシップ)を見学させていただいたほか、1周1400mの周回コースや、全長1000mのバーク坂路などの調教施設などを隆行専務の解説を織り交ぜながら見させていただくことができました。参加された方々も想像を超えたスケールの大きさ、そして競走馬の生産・育成の最前線を目の当たりにして目を丸くするばかりでした。

ビッグレッドファーム


ゴールドシップと記念撮影・1班
他の写真を見る
他の写真を見る

時計の針は15時をまわっていましたが、バスは新冠町のビッグレッドファーム明和牧場へと向かいます。ここでは場内散策と種牡馬展示、そして種牡馬見学をさせていただきました。

バスはまず、ビッグレッドファームの事務所前に到着します。この事務所は、以前は小学校の校舎だったものをリフォームしたものです。ここでトイレをお借りし、場内を散策します。ここの場所は、かつて凱旋門賞優勝牝馬サンサンを導入したほか、スプリンターズS2連覇の快速メイワキミコや皐月賞馬ハワイアンイメージなどを生産し、ハイセイコーを種牡馬として繋養していた明和牧場の跡地でもあります。自然の地形をいかしたなだらかな丘陵地に人工池を設置。まるで、映画のセットに出てくるような美しい牧場風景です。長田基洋さんに案内してもらいながら、10分ほど場内を歩いて種牡馬エリアへと向かいます。

ここで参加者の方々を待っていたのは芦毛の怪物ゴールドシップです。G1競走6勝は芦毛の競走馬としては史上最多勝。そして、獲得した賞金も芦毛馬としてはナンバーワン。圧倒的な強さと、負けるときの潔さもまたファンの心に強く残るものかもしれません。しかし、それ以上に種牡馬として初年度産駒が札幌2歳S(G3)でワン・ツー・フィニッシュを決めるあたりが千両役者たる所以かもしれません。

ゴールドシップとの記念写真、そして種牡馬展示に続いては欧州から2年ぶりに帰国したダノンバラード、24歳のグラスワンダー、22歳のアグネスデジタル、そして、産駒ケイティブレイブが帝王賞(Jpn1)やJBCクラシック(Jpn1)に勝ったアドマイヤマックスが主任の木村浩史さんによって説明され、その後は展示された馬も含め、夜間放牧前の同スタリオン繋養種牡馬とのご対面です。時計の針は16時30分をまわり、周囲はやや暗くなってきましたが明かりがつけられた厩舎でジョーカプチーノやロージズインメイ、あるいは功労馬として余生を送っているコスモバルクなどの元気な姿を確認することができました。

17時15分は、ビッグレッドファームの放牧時間です。本当は17時なのですが、私たちのために放牧時間を若干遅らせてもらいました。感謝です。もう日没時間も過ぎ、放牧写真を撮ることはできませんでしたが、しっかりとその目に焼きつけてくれたと思います。

あわただしくも充実の初日は、これにて終了です。

この日のホテルは、2017、18年と2年連続で楽天朝ごはんフェスティバル北海道地区大会1位の静内エクリプスホテルです。ゆっくりと旅の疲れを癒して明日に備えますが、多くの参加者の方が気にしていたのは九州地方に大雨をもたらした台風18号の進路でした。天気予報のとおりならば、勢力を維持したままツアーを直撃することになります。