馬産地見学ガイドツアーレポート[ツアー1日目]
ツアー1日目:待ちに待ったツアーがはじまりました。快晴の天気のなかで門別地区を見学しました。
2018年9月20日
新千歳空港
秋晴れの空のもと、「2018秋 北海道馬産地見学ガイドツアー」が始まりました。2009年に、馬産地を訪れるファンに見学マナーなどを啓蒙する意味でスタートしたこのツアーも、今回で記念すべき第10回目です。
9月6日未明に発生した北海道胆振東部地震の影響によって開催の中止も検討されましたが、当選された参加者の方からほとんどキャンセルが出ることなく、行程の一部を変更することで開催を決定しました。
集合場所は新千歳空港。まずは全員無事の到着を確認したのち、バス内にて見学の基本となる、マナーや注意点を確認しました。加えて、今年からはイヤホンでも解説の音声を聞くシステムが導入となり、その説明もありました。ドライバーは、馬産地のありとあらゆる道を知り尽くしている堀茂行さん。安心して任せることができます。
白井牧場
最初の目的地の白井牧場へと、スムーズに到着しました。バスの降り口で消毒マットを踏んで、いよいよ馬たちと対面です。秋の北海道らしい気持ち良い風と、牧場独特のほのかな香り。ツアーの場面を想像していた参加者の皆さんにとって、その実感はいかがだったでしょうか。
さて、オープニングを飾ったのは繁殖牝馬チリエージェでした。白井牧場生産の重賞馬ハクサンムーンの母で、そばにいる当歳牡馬はオルフェーヴルの子です。1頭目から楽しみな血統馬が出てきました。参加者は、馬を驚かさないように気を付けながら、マナーを守って見学しました。続いて繁殖牝馬グリーリーレイが登場。寄り添う当歳牝馬はハクサンムーンの初年度産駒。立ち合いの白井牧場・白井直樹さんより、馬の気性や特徴が伝えられました。
その後は功労馬のいる厩舎へ移動し、エモシオンとオースミイチバンが展示となりました。今回は牧場のご厚意により、特別に功労馬たちの顔をなでることもできました。馬たちはどこか嬉しそうに、参加者の手を受け入れていました。
ダーレー・ジャパン・ファーム
2018年は生産馬ファインニードルが大活躍のダーレー・ジャパン・ファームでは、G1馬サマリーズとレディオブオペラの2頭が展示となりました。両馬はこのツアーではレギュラー的存在で、大勢の見学者を前にしながらも動じることなく、落ち着いた様子でした。サマリーズの子は父パイロ、レディオブオペラの子は父ディープインパクト。おそらく前者はダートで、後者は芝で出世の期待が膨らみます。
ここでは、展示時間にゆとりがあり、参加者は出発時間まで放牧地を眺めたり、牧場の猫を可愛がったり、ゆったりとした時間を過ごしました。雲一つない青空と、放牧地の緑のグラデーションは、北海道らしい癒しの眺めでした。何もかも忘れて、馬たちと一緒に、のんびりと放牧時間を過ごしたいぐらいですね。
ダーレー・ジャパン スタリオンコンプレックス
ダーレー・ジャパン スタリオンコンプレックスでは、ノミネーションオフィス・石澤考康さんの解説で種牡馬5頭が展示となりました。中でもアドマイヤムーンとフリオーソは、日本の競馬ファンにはなじみ深く、参加者の熱い視線が注がれました。ファインニードルをはじめ、産駒絶好調のアドマイヤムーンは、自信をみなぎらせるように周回。「天才肌で、頭の良い馬。尻尾が長くて、豊富なたてがみも特徴。産駒は栗毛が多いです」と、石澤さん。フリオーソは、まぶしいほどピカピカの毛ヅヤで、馬が光っていました。石澤さんより「努力型で、産駒も稽古をするたびに着実に強くなるタイプ」とのお話。「普段はやんちゃ」というモンテロッソは、ツアーでは大人しく周回し、これから日本での産駒に注目が集まるアメリカンペイトリオット、ディスクリートキャットも参加者の興味を誘いました。最後に、パイロが厩舎前でお披露目となりました。そのワイルドな風貌は、アクション俳優を見ているようでした。
ブリーダーズ・スタリオン・ステーション
ブリーダーズ・スタリオン・ステーションでは、5頭の種牡馬が展示となり、事務局の遠藤幹さんが解説役を務めました。トップバッターを務めたリオンディーズは、エネルギッシュで、黒光りする馬体が印象的でした。“黒光り”ではブラックタイドもしかり。こちらはいつもながら貫禄たっぷりで、キタサンブラック効果でしょうか、遠藤さんより「交配牝馬の質が上がっています」とのお話でした。今年パパになったラブリーデイは、穏やかな様子で現れ、2歳世代がブレイクしているヴィクトワールピサは、さすが世界を制した馬らしく、王者の風格がありました。トリを飾ったコパノリッキーは、今年種牡馬“1年生”。中央・地方で数多く出走したこともあり、記憶に新しいレースシーンを思い出す参加者も多かったことでしょう。遠藤さんからは、種牡馬としてのお話だけでなく、生まれ故郷のヤナガワ牧場や、オーナーについてなどたっぷりと紹介がありました。
展示後のお墓参りでは、10人以上の参加者がありました。それぞれ、エアシャカールやステイゴールド、デュランダルなどのお墓に、静かに手をあわせました。
下河辺牧場
初日最後の訪問牧場は、名門・下河辺牧場です。今年も代表である下河辺行雄さんにご案内いただきました。
最初の展示馬は、繁殖牝馬となったアユサンとブロードストリートでした。ともに下河辺牧場生産馬で、アユサンは桜花賞馬、ブロードストリートはローズS(G2)を勝ちました。アユサンは、このツアーにおいて、競走馬時代にも一度、サプライズで登場したことがあります。すでに2頭の子を産んだアユサンはすっかりお母さんらしい体つきになっていました。ブロードストリートは、産駒サトノウィザードがツアー後に新馬戦を快勝しており、母子で重賞制覇を成し遂げる日も近そうです。
場所を移して、3頭目に厩舎から出てきたのは名牝ロンドンブリッジ。このツアーでは何度も登場いただいている馬で、孫のキセキは芝中長距離で日本を代表する馬へと成長し、その血は繁栄を遂げています。23歳という年齢以上に若々しい馬体を映し、展示後は放牧地を元気よく駆けました。放牧時の、夕焼け色に染まる馬たちの群れの迫力や美しさは、芸術的なシーンでした。
最後はロンドンブリッジの孫となる2歳馬がお出まし。父はロードカナロア、母はオークス馬ダイワエルシエーロという良血です。立派な体つきで、新たなスターホースの予感を漂わせていました。