2015秋 北海道馬産地見学ガイドツアー 現地取材レポート

馬産地見学ガイドツアーレポート[ツアー2日目]

ツアー2日目:朝から夕方までたくさんの名馬たちを見学しました。午後から天気が悪くなり雨具を着用して見学となりました。

2015年9月18日

JRA日高育成牧場
BTC軽種馬育成調教センター


展望台で記念撮影
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ツアー2日目の始まりはJRA日高育成牧場・BTC軽種馬育成調教センターの見学となりました。ここは過去のツアーでも見学していることと、早朝7時出発ということで、希望者のみ参加としていましたが、大半の参加者がバスへ。あいにく雨が降り出しそうな空模様で、合羽を手元に用意しての乗車となりました。

今年はJRA日高育成牧場の菱田圭吾さんがガイド役となり、場内をバスでめぐりました。車窓の先には大井競馬場ぐらいの規模があるダートコースや、どこまでも緑が広がるグラス馬場、後の重賞馬が鍛えられた屋内坂路馬場などが点在し、アジア最大級のスケールや、バリエーション豊かな調教施設が視野に広がりました。2つの屋内馬場ではバスから降り、ゴール地点にある監視小屋から調教を見学しました。調教馬はデビュー前の若駒が中心で、育成スタッフが慎重に且つ馬をリラックスさせながら操っており、現場には静かな緊張感が張り詰めていました。

日高スタリオンステーション


ダノンバラードは展示形式で見学
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バスは西へ進み、国道沿いにある日高スタリオンステーションへ。太平洋が見えるロケーションで、涼しい海風が吹き抜けます。ここでは放牧中のは種牡馬を順繰りに見学。鋭い眼光が特徴のゴールドヘイローや、ビュンビュンと走っていたフォーティナイナーズサンが印象的でした。2007年の2歳王者ゴスホークケンと、種牡馬入りしたばかりのダノンバラードは展示となり、間近で見ることができました。ゴスホークケンはアメリカ産馬らしいパンチのある馬体で、ダノンバラードはディープインパクト産駒らしい薄さがあり、対照的な2頭でした。他にも、G1馬ウインクリューガーや中央・地方で重賞馬量産のプリサイスエンド、ロードカナロアの半兄となるロードバリオスらを見学しました。

ツアー2日目の行程に入り、参加者は団体での見学に慣れた様子で、見学マナーや挨拶、バスを乗り降りする際の消毒といった流れは、すっかり浸透していました。

優駿スタリオンステーション
優駿記念館


カネヒキリと記念撮影-A班
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三石の「道の駅」で休憩をとって、向かった先は優駿スタリオンステーションです。普段は種牡馬の一般公開をしていないため、このツアーでは毎年、お目当てにしている参加者が少なくありません。まず厩舎前で4頭が展示となり、快速馬ローレルゲレイロから始まり、その父キングヘイロー、エスポワールシチーはダートG1馬らしい力強い動きを披露しました。最後に登場したカネヒキリは落ち着きたっぷりで、馬を挟んで記念写真を撮ることができました。展示終了後には厩舎で自由見学となり、種牡馬入りしたばかりのサダムパテックやサンカルロ、ダービー馬ロジユニヴァース、馬産地で人気沸騰のヘニーヒューズらを見学。ある女性参加者はジョーカプチーノがお目当てで、「ちょうど馬房から顔を出してくれて、間近で会えました」と、喜んでいました。

その後は隣接する優駿記念館へ移動し、参加者は功労馬として公開中のマヤノトップガンを撮影したり、グッズコーナーで買い物を楽しんだりしました。また、オグリキャップの等身大ブロンズ像やナリタブライアンの馬碑を前に、往年の名馬の走りを思い出していました。

ビッグレッドファーム


コスモバルクと記念撮影-D班
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時計の針が正午に近づいて、一行は左右に牧場が広がる“サラブレッド銀座”通りを進んで明和地区へ。馬の生産から育成、現役馬の調教、種牡馬事業を行う総合牧場・ビッグレッドファームに到着しました。牧場スタッフの松尾篤さん、木村浩史さん、井上有希さん、浅子裕貴さんが出迎え、参加者と一緒に昼食をとりました。野菜カレーを食べながら、各テーブルでは牧場スタッフを中心に、馬の扱いや血統について会話を弾ませていました。

その後は種牡馬厩舎へと移動。途中、休養馬のいる放牧地を通り、その中には今年の日本ダービー(G1)に出走したコスモナインボールの姿もありました。残念ながら天候が悪化してしまい、この時間から小雨となりましたが、アグネスデジタル、アイルハヴアナザー、コスモバルクの3頭が展示となり、バルクとは馬を中央にして引き手綱を持って、口取り写真風に記念写真を撮ることができました。馬産地で注目を集めているアイルハヴアナザーは来年、待望の初年度産駒がデビュー。現役時代はケンタッキーダービー(G1)制覇を成し遂げたアメリカのスターホースで、木村さんは「ビッグレッドファームからFacebook上で近況を掲載すると、海外から反応があります」と、誇らしく話していました。展示終了後には厩舎見学となり、G1馬アドマイヤマックスやタイムパラドックスらを見学しました。

イワミ牧場


スノードラゴンの母マイネカプリースとその当歳
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あいにくの雨に打たれながら、バスはお隣のイワミ牧場へ。牧場3代目の岩見昌弘さんが出迎えてくれました。ここは昨年のスプリンターズS(G1)を制したスノードラゴンの故郷。殊勲の母マイネカプリースと、G1馬の半弟となる当歳馬が展示となりました。当歳馬の父は先ほど対面したアイルハヴアナザー。沢山のカメラが向けられても取り乱さず、行儀良くポーズをとってくれました。もう一頭、展示となったのは19歳となる繁殖牝馬マイネレジーナ。現役時代は度々重賞で上位争いし、秋華賞(G1)に駒を進めました。繁殖牝馬としては重賞3勝馬で、G1でも3着の実績があるマイネイサベルを生んでいます。今年は初日に見学したトーセンジョーダンを受胎中とのことで、サンデーサイレンス肌らしい漆黒の馬体を披露してくれました。

レックススタッド


スペシャルウィークと記念撮影-B班
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バスは山道を通って二十間道路へ。このあたりは昔々「新冠御料牧場」の中心地として栄え、帝室御用馬の生産・馬匹改良が行われました。二十間道路には大正天皇、昭和天皇が皇太子時代にご宿泊された「龍雲閣」があり、毎年地元の桜まつりで一般公開されています。

レックススタッドではちょうど種牡馬の集牧時間と重なり、放牧中の様子と集牧前の洗い場の様子を見学できました。参加者はお目当ての馬を探しつつ、時間の許す限りそれぞれの素顔を追っていました。洗い場にはダービー馬タニノギムレット、グランプリホースのマツリダゴッホ、新種牡馬シルポートやトーセンラー、パドトロワが順に入り、気持ち良さそうにシャワーを浴びていました。こうした場面を見られるのは、恐らくこのツアーでは初めて。今年の参加者はラッキーだったかもしれません。集牧の流れで時間ができたため、急きょスペシャルウィークが展示できることになり、記念写真の機会をいただきました。バス出発前でお手洗いの時間と重なり、写真に参加できなかった方には申し訳なかったのですが、嬉しそうな参加者を前にして、ダービー馬の機嫌は良かったようです。

アロースタッド


デスペラードと記念撮影-A班
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気付けば雨も上がり、早くも午後3か所目の牧場に向かいます。レックススタッドから目と鼻の先にあるアロースタッドです。本間一幸主任が見守る中、リニューアルしたての展示場で6頭の種牡馬を見学しました。種牡馬入りしたばかりのグランプリボス、レッドスパーダは若々しい体つきで、キレのある動きで周回。地元・静内生まれのデスペラード、先ほど見たスペシャルウィーク直子のリーチザクラウンとは、並んで記念写真を撮ることができました。海外で連対を果たしたトランセンド、ヒルノダムールは、以前より種牡馬らしくなり、タイキシャトルとサウスヴィグラスは大御所の雰囲気がありました。タイキシャトルは孫のストレイトガールがG1を制し、サウスヴィグラスは今年のサマーセールで30頭以上の上場産駒が落札と、まだまだ底力を示しています。

展示終了後は厩舎の外から自由見学となり、スーパーホーネットやスマイルジャックらを見学しました。ある女性参加者は「現役時代からアジュディミツオーを応援しているので、再会できて嬉しかった」と、じっくりと顔を合わせていました。

新和牧場


重賞4勝のサクラメガワンダー
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競走馬のふるさと案内所・二十間道路案内所でトイレ休憩を済ませた後、バスは“サクラ”の活躍馬が余生を送る新和牧場へ。残念ながら再び空模様が怪しくなってしまいましたが、ツアーのためにサクラローレルが展示となりました。現役時代は有馬記念(G1)、天皇賞(春)(G1)を制し、午前中に見学したマヤノトップガンとは度々対戦。今年24歳となりますが、体のラインや動きは年齢を感じさせず、鮮やかな決め脚が蘇ってきます。年配の参加者からは「現役の頃が懐かしい」と、目を細めていました。

その後は自由見学となり、参加者は三々五々に放牧地へ。サクラメガワンダーは牧柵のそばまで寄ってきて、愛嬌を振りまいていました。一番奥の放牧地にはサクラローレルと同い年のサクラエイコウオーがいて、お目当ての参加者は上り坂をせっせと歩いて移動。僅かな時間を惜しみながら対面を果たしていました。帰りの車窓からは、ローカル重賞を得意としたサクラオリオンの姿が見え、私たちが乗っている馬の描かれたバスの方向を向き、見送っているかのようにたたずんでいました。

畠山牧場


シルクジャスティスと記念撮影-D班
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あたりがだんだんと暗くなり、肌寒くなってきたところで、ツアー2日目最後の目的地、畠山牧場へ到着しました。昭和48年設立の牧場で、農屋地区に本場、豊畑地区にトレーニングセンターを構えます。過去には逃げ脚を武器に活躍した重賞馬ホットシークレットやヒマラヤンブルーを生産しています。ここでは新潟記念(G3)、福島記念(Jpn3)を制した生産馬で、現在は繁殖生活を送っているアルコセニョーラと、功労馬として余生を送っているグランプリホース・シルクジャスティスを見学しました。

厩舎から登場してきたアルコセニョーラは、元気いっぱいの様子。ステイゴールド産駒らしく小柄なタイプで、ふつふつとした闘志を秘めた印象を与えました。さすが牡馬相手に重賞を勝ってきた馬です。繁殖牝馬としては毎年出産していて、今年は父キングズベストの牝馬が誕生しています。目指すは母娘重賞制覇です。

続いて厩舎の裏手に行くと、放牧地でシルクジャスティスが待ち構えていました。普段は「引退名馬繋養展示事業」対象馬として、一般公開しています。今年21歳となりましたが、年齢ほどの老いは感じず、牧柵のそばから記念写真を撮ることができました。現役時代にコンビを組んでいた藤田伸二騎手は今年引退しましたが、有馬記念(G1)で見せた人馬一体の追い込みは、レース史に残る名場面として、これからも語り継がれていくでしょう。