2015秋 北海道馬産地見学ガイドツアー 現地取材レポート

馬産地見学ガイドツアーレポート[ツアー1日目]

ツアー1日目:快晴の天気のなか牧場、スタリオンを巡りました。途中サプライズ訪問もありました。初日の夜は毎年恒例の牧場関係者との食事懇親会を開催。

2015年9月17日

新千歳空港


新千歳空港に集合
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今年も「北海道馬産地ガイドツアー」の季節がやってきました。参加者の皆さんを歓迎するように、快晴の幕開けです。当日午前、空港に揃って受付を済ませると、一行はバスに乗り込みました。初めて馬産地を訪れる人、2度目の応募で参加が叶った人、それぞれ旅の始まりはどんな心境だったでしょう。重い荷物を持ちながらも、軽い足取りでバス停へと向かう姿は、その胸の高まりを表していたかもしれません。バスが出発すると、競走馬のふるさと案内所・日高案内所の吉田秀夫所長の挨拶から始まり、見学マナーの説明がありました。バスの運転手は昨年に引き続き、馬産地の道を熟知している日交観光バスの堀茂行さんです。今回のツアーでも時には裏道を通り、巧みにゴールを目指してくれました。

下河辺牧場


アンプルカット母子から見学スタートです
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バスが走ること約1時間。最初の目的地は下河辺牧場です。昭和、平成と数々の重賞馬を送り出している名門牧場で、一昨年はアユサンが、昨年はショウナンアデラとダノンシャークがG1を制し、常にリーディング・ブリーダーランキングの上位を走っています。

参加者は牧場へ降り立つと厩舎前に並び、2組の母子を見学しました。1組目は七夕賞(G3)の勝ち馬ドモナラズの母アンプルカットと当歳牝馬(父シニスターミニスター)。母は下河辺牧場生産の重賞馬ナリタハヤブサの血を受け継ぎ、牧場ゆかりの血統です。2組目は桜花賞(G1)で好走したロンドンブリッジと当歳牝馬(父ロードカナロア)。オークス馬ダイワエルシエーロの半妹にもなる当歳馬は、時折飛び跳ねるような仕草を見せ、秀でたバネを感じさせました。今年20歳となるロンドンブリッジは健在で、名牝らしい風格を漂わせていました。

その後は下河辺行雄社長の案内で、繁殖厩舎内を見学。母子寄りそう自然な姿は、北海道の牧場ならではの光景でしょう。バスに戻り、今度は下河辺隆行専務のガイドで牧場の放牧地・育成施設を見学しました。専務のお話の中では、牧場が長いスパンで取り組んでいる土地改良や屋内坂路の効果、生産馬が休養に帰ってくる際の馬の安堵した様子、シビアな競走馬の世界と1勝の重みなど、牧場サイドにおける様々な視点が伝えられました。

ブリーダーズ・スタリオン・ステーション


記念撮影
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一行は日高町の温泉「とねっこの湯」レストランで昼食をとった後、午後一番にブリーダーズ・スタリオン・ステーションを訪れました。ここでは、事務局の大川和久さんの解説で、5頭の種牡馬が展示となりました。最初に登場してきたのはトーセンジョーダン。現役時代は日本レコードで天皇賞(秋)(G1)を制し、今年から種牡馬生活を送っています。まるで見せ場を作るように何度もフレーメンをしてみせると、後の順番で登場したジャングルポケットも同じように上唇を動かし、「父子で全く同じですね(笑)」という声が上がっていました。ヴァーミリアンは自分のすべきことがわかっているかのように、落ち着いて参加者の前に立ち、今年200頭近い交配を済ませたブラックタイドは、好調をアピールするように力強く周回しました。「年齢以上に若々しく、美しかった」という感想があったのは、このツアーでも毎年人気を集めているグラスワンダー。先に見たロンドンブリッジと同じく年齢は20歳に達していますが、堂々たる体つきで、お目当てにしていた参加者を喜ばせました。その後は自由見学となり、新入厩のシビルウォーやローズキングダムらと厩舎の外から対面しました。また、希望者はステイゴールドらのお墓がある場所へ向かい、在りし日を思いながら手を合わせていました。

イーストスタッド


メイショウサムソンと記念撮影-A班
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バスは東へ走り、途中で休憩を挟みながら浦河町へ。こちらもツアーではおなじみ、イーストスタッドに到着しました。浦河町と言えば、“メイショウ”の冠がつく活躍馬が多いことで知られていますが、ここでは浦河産のG1馬メイショウサムソンとメイショウボーラー、浦河町で育った外国産馬メイショウドトウが展示馬として登場。サムソンとドトウの展示では、記念写真を撮ることができました。片やダービー馬、片やグランンプリホースで、両馬の獲得賞金を合わせると約20億円。さぞかし自慢できる記念写真となったことでしょう。他にも、馬産地で注目の新種牡馬ダンカーク、派手なルックスが特徴のオウケンブルースリが力強く展示場を周回しました。最後は再び浦河産のダービー馬、ディープスカイのお出まし。まさに名前のごとく青空のもと、世代の頂点に立った馬らしい、大物感たっぷりのオーラを放っていました。

カナイシスタッド


オーストラリアに遠征してG1を優勝したハナズゴール
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今回のバスツアーでは1か所、サプライズの行程を用意していました。それは今年6月に引退したばかりのハナズゴールの見学です。バスで移動中、吉田所長から「予定表にはないのですが、皆さんにお知らせがあります」と報告があると、車内に驚きと歓声が入り混じりました。大半の繁殖牝馬がそうであるように、ハナズゴールは見学非公開となっている馬ですが、今回は所有・飼養者のご厚意で特別に機会をいただきました。彼女がいるカナイシスタッドへ到着すると、島崎圭三場長が一行を案内。厩舎からハナズゴールが出てくると、時折舌をペロッと出しながらポーズをとってくれました。島崎場長より、なかなか売れなかった幼小時代や競走馬時代のエピソードが伝えられ、気になる来年の交配について話が及ぶと、現在は未定としながらも、リーディングサイアー上位の馬名が上がっていました。オーストラリアG1で見せたあの豪脚を、将来誕生する息子・娘たちにも遺伝して欲しいですね。

うらかわ優駿ビレッジAERU


ダービー馬ウイニングチケット
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初日最後の到着地で、宿泊場所となるのがうらかわ優駿ビレッジAERUです。あたりは夕暮れになってきましたが、ホテルから近くの場所に功労馬厩舎があり、チェックインする前に立ち寄りました。ここでは馬房のそばでウイニングチケット、ニッポーテイオー、ヒシマサルを見学。それぞれ25歳、32歳、26歳という高齢で、人間ならば100歳に迫るおじいちゃんになりますが、元気に余生を過ごしています。乗馬スタッフの方より、十分注意していただければ触ってOKということで、参加者は優しく顔を撫でていました。その穏やかな眼差しは癒しをもたらし、厩舎内に黄色い声が響いていました。

交流食事会


チェックイン後は懇親食事会
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初日の夜は牧場の方と一緒に、交流食事会となりました。参加者はチェックインを済ませ、休憩時間を挟んでうらかわ優駿ビレッジAERUのレストラン「CORRESSA」へ。班ごとにテーブルを囲み、お酒やワイン、お刺身、中華料理などを食べながら、馬談議に花を咲かせました。牧場ゲストの方は各班に一人ずつで、A班に高村伸一牧場の高村洋子さん、B班にビクトリーホースランチの荻野豊さん、C班に杵臼牧場の鎌田信一さん、D班に酒井牧場の酒井一馬さん、E班に荻伏三好ファームの三好直樹さん、F班に笹島牧場の笹島智則さんが着席。乾杯前に自己紹介があり、それぞれ歓迎の意を込めたメッセージを送っていました。牧場の方と会話できる機会を楽しみにしていた参加者も多かったようで、競走馬の生産・育成の醍醐味や苦労、仕事内容について、様々な質問を寄せていました。参加者からは「牧場の皆さんの一頭一頭にかける思いに触れて、競馬の見方が変わりました」、「想像していたよりも、ビジネス色の濃い世界だなと思いました」という感想がありました。

一方、宴では参加者同士はじっくりと話す場にもなり、馬の話題を展開しながら、交流を深めている様子でした。後半はプレゼントが当たるじゃんけん大会があり、最後はテイエムオペラオーを生産した鎌田さんの一本締めでお開きとなりました。