馬産地見学ガイドツアーレポート[ツアー2日目]
ツアー2日目:3日間の中で1番盛りだくさんな1日です。10か所の牧場にいる名馬たちを朝から夕方まで見学しました。
2014年9月27日
レックススタッド
ツアー2日目は11の牧場をめぐります。このツアーらしい盛り沢山の日程となりましたが、朝から快晴に恵まれて見学日和でした。ホテルを出発し、最初に向かった先は桜の名所として知られる「二十間道路」沿いにあるレックススタッド。ここではダービー馬スペシャルウィーク、タニノギムレットをはじめ、グランプリホースのマツリダゴッホ、昨今産駒成績を伸ばしているショウナンカンプ、スクリーンヒーロー、ローエングリンが展示されました。国内で現役生活を送った馬が多く、参加者にはなじみの顔ぶれが揃っていたようです。後半は自由見学となり、産駒スノードラゴンの活躍に沸くアドマイヤコジーンや、種牡馬入りしたばかりのパドトロワらの放牧風景を見学しました。どの馬も厩舎から出た後で、草を食べるのに無我夢中。参加者は競馬場で見ていた頃を懐かしみながら、もしゃもしゃと食べるその様子を目に焼き付けていました。アドマイヤコジーンのファンという男性は「芦毛が好きなので、目当ての一頭でした。年齢を重ねて馬体は真っ白でしたね」と、緑の芝生にひと際映える風貌をじっと見つめていました。
アロースタッド
次はレックススタッドからは目と鼻の先にあるアロースタッドへ。昨日の懇親食事会にも参加したアロースタッド主任・本間一幸さんが見守る中、展示が始まりました。登場したのはダート界のトップサイアー・サウスヴィグラスを筆頭に、国内外のG1で激闘を繰り広げたトランセンド、ヒルノダムール、先ほど見たスペシャルウィークの産駒リーチザクラウンの4頭。どの馬も落ち着き払っていて、トランセンドとは記念写真を撮ることができました。ここも後半は自由見学となり、参加者は事前に配布された放牧地図を頼りに目当てのエリアへ移動。アロースタッドの見学は通常午後で、放牧地での見学はこうしたツアーか、地元の観光周遊バス「しずないロマン・ロード号」に乗車するしかありません。参加者は出発時間まで貴重な見学機会を満喫していました。アジュディミツオーのファンという女性は「現役時代、大井でよく応援していました。再会が叶って嬉しいです」と、感慨深い様子でした。
松田牧場
ここからは繁殖牝馬の登場が続きます。松田牧場はこのツアーで初めて行く牧場で、昔から活躍馬が頻繁に生まれている、新ひだか町静内の豊畑地区にあります。松田牧場生産馬は今年、ケイアイエレガントが福島牝馬S(G3)を制しました。バスが到着すると2組の母仔が準備をしていました。松田大地さんの案内でまず現れたのは名牝ダイナカールの血を引くカーリーエンジェルと当歳牝馬(父ジャングルポケット)。これまでエガオヲミセテやオレハマッテルゼを生んだ実績ある繁殖牝馬で、24歳ながら栗色の馬体を光らせていました。たくましいお母さんと一緒に記念写真を撮った後は、同じく栗毛の繁殖牝馬セクシーココナッツが登場。連れ立つ当歳牝馬は重賞馬ザラストロの半妹で、父はこのツアーのオープニングを飾った種牡馬キングズベスト。注目の血統馬は未来の重賞馬を思わせました。最後に厩舎からご自宅前に移動し、牧場生産馬で1981年のオークスを制したテンモンのお墓参りをして牧場をあとにしました。
トウショウ牧場
バスは午前中最後の目的地へと向かいます。たどりついた先は名門・トウショウ牧場。このツアーでは毎回人気が高く、今回も「印象に残った」という参加者が大勢いました。絶好のお天気のもと、空の青さと放牧地の緑が鮮やかで、山々を背景に走る馬たちの姿は牧場の美しさを極めていました。バスは斜面を上がって放牧地エリアへと進み、場長の志村吉男さん案内のもと放牧地の牧柵付近で見学しました。披露されたのはスイープトウショウと当歳牡馬(父ディープインパクト)、タバサトウショウと当歳牝馬(父キングズベスト)2組の親子、シーイズトウショウです。スイープトウショウのファンという女性は「ずっと応援していて、引退後は初めて会うことができました。母馬になっても顔が可愛かった」と、興奮気味。他にもスイープトウショウに会えて嬉しかったという方が複数いて、ツアーの度にファンの多い馬だと実感します。現役時代は馬場入りを嫌がることもありましたが、母となってすでに5頭出産し、牧場スタッフの指示によく従っていました。
川越ファーム
ホテル浦河インで昼食をとり、合わせて地元名物の揚げかまぼこを味わいました。午後はこちらも名馬のふるさと、浦河町の牧場をめぐります。最初に向かったのは名牝テイエムオーシャンの故郷・川越ファームです。家族経営の牧場で、川越敏樹さんと息子の祐樹さんが出迎えてくれました。放牧地の中へと移動し、2頭の母馬と対面しました。まずは2012年の安田記念(G1)3着馬コスモセンサーの母ケイアイバラード。今年21歳となるベテランの繁殖牝馬で、敏樹さんに撫でられながら、参加者に体を向けてくれました。コスモセンサーと同じ栗毛で、よく似ていたのが印象的です。続いての登場はG1・3勝の実績を引っさげるテイエムオーシャン。川越さんの計らいで班ごとの記念写真に加え、時間の許す限り個別の記念写真も撮ることができました。馬を安心させながら展示に努めていた川越さんを見て、参加者の女性は「川越さんからは馬への愛情をすごく感じました」と、感想を話していました。
市川ファーム
バスはこれまで数々のダービー馬を生み出してきた荻伏地区へ。昨今のダート界を牽引するホッコータルマエの故郷・市川ファームに到着しました。市川さん夫婦が見守る中、牧場スタッフに連れられてホッコータルマエの母マダムチェロキーと当歳牝馬(父ストリートセンス)が披露されました。現役一流馬の母と半妹を見られる機会とあり、ギャラリー側もやや緊張した空気が漂っていました。当歳馬はピカピカの好馬体で、母と離れても平気な様子。人間に置き換えると幼稚園児ぐらいの時期ながら、頼もしくポーズを決めていました。13歳となる母マダムチェロキーは今年種牡馬入りしたオルフェーヴルの仔を受胎中とのことで、これまた楽しみなカップリングです。市川さんからは参加者プレゼントとして、ホッコータルマエの記念品クオカードも提供いただきました。
伏木田牧場
続いてはファイモーションに会いに伏木田牧場へ。昨晩の懇親食事会にも参加した伏木田修さんが出迎えてくれました。今年15歳となるファインモーションはいたって健康で、悠々自適な功労馬生活を送っていました。牧柵の外に出していただき、仲間の牝馬が見守る中、記念写真を撮ることができました。昨年は阪神競馬場でお披露目もありましたが、牧場では初対面の参加者が大半で、ツアーならではの機会を喜んでいました。時間の許す限り個人の記念撮影にも協力いただき、ファインモーションは伏木田さんに撫でられながら対応していました。現役時代の走りに魅せられたという男性は「競馬場で強烈なインパクトを受けました。一流牡馬にも負けない実力があり、気も強いのかなと想像していましたが、すごく品のある感じの馬でした」と、興味津々な様子で見ていました。
日高スタリオンステーション
2日目の日程も僅かとなり、スケジュールは競馬でいうと4コーナーへ。見学とバスの乗り降りを繰り返し、そろそろ疲れが出てきそうなところですが、参加者の皆さんの多くは熱心に馬を見ていました。太平洋が見渡せるロケーションが自慢の日高スタリオンステーションでは3頭の種牡馬が展示されました。そのラインナップはNHKマイルカップ(G1)の覇者ウインクリューガー、産駒トウケイヘイローが大活躍のゴールドヘイロー、先ほど訪れた伏木田牧場生産のプリマビスティーをはじめ、ダート重賞馬を数多く送り出しているプリサイスエンドです。どの馬も夏休みを経て体調は良さそうで、迫力たっぷりに展示場を周回しました。ゴールドヘイローのファンという女性は「現役時代、競馬場でレースを見ていました。引退後初めて会えて嬉しいです。これからも産駒を応援していきます」と、笑顔を見せていました。後半は厩舎で自由見学となり、入厩したばかりのダノンバラードは人気で、馬房前には人だかりができていました。
イーストスタッド
浦河町役場で休憩をとった後、一行は浦河町西幌別へ移動し、イーストスタッドに向かいました。ここでは浦河産のダービー馬メイショウサムソンや同じくクラシックホースのオウケンブルースリ、2代で種牡馬生活を送るタイキシャトル、メイショウボーラーが展示されました。青木大典場長立ち会いのもと、比較的大人しいメイショウサムソン、タイキシャトルとは記念写真を撮ることができました。一方は栄えあるダービー馬、一方は日本調教馬として海外G1を制した馬とあって、これまた豪華な機会となりました。タイキシャトルのファンという男性は「この馬に憧れて一口馬主クラブに入りました。3年ぶりに会いましたが、衰えなく元気そうで良かったです」と、健在ぶりに安堵していました。きれいな夕焼けを背景に、タイキシャトルの尾花栗毛は一層照り輝いて見えました。
ガーベラパークスタッド
2日目もいよいよオーラス。最後の目的地は午前中に訪れたアロースタッドで種牡馬生活を送っているスーパーホーネットの故郷・ガーベラパークスタッドです。代表の本巣俊光さん立ち会いのもと、重賞4勝馬スーパーホーネットの母ユウサンポリッシュと当歳牝馬(父ジャングルポケット)と、小倉2歳S(Jpn3)を制したマルブツイースターの母ミスイースターと当歳牡馬(父ネオユニヴァース)が展示されました。少し前にスーパーホーネットを見ていただけに、どこか似ているところを探っていた参加者もいたことでしょう。母ユウサンポリッシュは競走馬時代、俳優の柳葉敏郎さんの勝負服で走り、現役時は3戦して3着が最高という成績でしたが、繁殖牝馬として大きな成功を収めました。大勢の参加者を前に仔馬ははしゃぎ気味でしたが、母馬は動じることなく、どっしりと構えていたのが印象的です。日が暮れ始め、やや肌寒い中での見学となりましたが、広く整備された展示場で、2組の母仔とじっくり対面することができました。