2013秋 北海道馬産地見学ガイドツアー 現地取材レポート

馬産地見学ガイドツアーレポート[ツアー2日目]

ツアー2日目:朝から夕方まで見学が目白押しな1日です。今年のダービー馬の母、お母さんとして優しい表情となった名牝を見学しました。

2013年9月27日

アロースタッド


清々しい朝日を浴びながらの見学
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初日に続き、2日目も快晴のもとでの出発となりました。最初の目的地は新ひだか町の桜の名所、二十間道路に構えるアロースタッド。今年4月、大御所的存在だった名種牡馬ブライアンズタイムが亡くなり、寂しい春となってしまいましたが、若手種牡馬の産駒が次々に3歳G1を制し、屋台骨に揺るぎはありません。現場を指揮するアロースタッド主任・本間一幸さんが案内役となり、今年の交配頭数等の情報をまじえて6頭の種牡馬が展示されました。大井競馬所属時代の内田博幸騎手と名コンビを成したアジュディミツオーをトップバッターに、産駒マイネルホウホウがG1馬となったスズカフェニックスが、明るく「おはよう」の挨拶を交わすように登場しました。本ツアー初登場のヒルノダムール、トランセンド、リーチザクラウンはフレッシュな馬体を見せ、ところどころで記念写真の場をいただきました。トリを務めたのは馬産地屈指のロングセラー種牡馬サウスヴィグラス。昨年には地方チャンピオンサイアーの座につき、パワフルな風貌は相変わらず。日高管内繋養種牡馬の重鎮的存在となっています。展示終了後は放牧地エリアにて自由見学となり、参加者は終了時間一杯まで馬たちの素顔を追っていました。

レックススタッド


レックススタッド
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24頭の種牡馬を繋養しているレックススタッドでは、参加者に放牧状況の地図が手渡され、終始放牧地での自由見学となりました。馬産地に初めて来る方も含まれていた中、いくつかの牧場をまわって、すっかりその雰囲気にもなじんできた様子の参加者。見学マナーについても深く理解いただいたようで、比較的自由が許される状況下であっても、ルールを守って見学のひと時を満喫していました。また、昨日の懇親会で交流を深めたこともキッカケに、参加者同士で「この放牧地にいるのはどの馬ですか?」「○○ですよ」といった情報交換・コミュニケーションも、初日以上に活発だったようです。レックススタッドで人気を集めていたのは新入厩のスペシャルウィーク。「顔が好きなんです。今日も本当に格好良かった」と、ある女性参加者はうっとり。今年、産駒がクラシックを制したローエングリンも放牧地には写真を撮る方がズラリと並びました。父母がG1馬という良血馬らしい上品さで、参加者もそのたたずまいに見惚れていました。近隣の「桜舞馬公園」でトイレ休憩をとった後、次の目的地へ移動となりました。

トウショウ牧場


連れてきていただいたのはスイープトウショウ親子
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トウショウ牧場はその名の通り「トウショウ」の冠名で知られる競走馬の故郷で、古くはアメリカから輸入したソシアルバターフライの子孫により繁栄を遂げ、天馬トウショウボーイをはじめ、数多くの重賞馬を生産・育成してきました。別の牧場生産馬ではありますが、平成の名牝ウオッカもその血を受け継ぐ末裔です。山奥深い東別地区にある本場へ到着すると、繁殖主任の山本さんの案内で繁殖牝馬と当歳馬のいる放牧地へ歩みました。あたりは山に囲まれ、起伏に富んだ自然あふれるロケーション。シカやキツネの姿も頻繁に見受けられるそうです。山本さんは手慣れた手つきでスイープトウショウ母仔に引き手綱をつなぎ、牧柵沿いで参加者に展示しました。当歳馬の父は初日に見学したステイゴールドで、立派な牡馬。多数のカメラを目にしながらも落ち着いた素振りの仔馬に対して、「気の強い同士の配合なのに、仔馬は大人しかった」と、目を丸くする参加者もいました。その後は馬道を少し歩き、2006年のサマースプリントシリーズ覇者シーイズトウショウのいる放牧地へ。こちらも山本さんの引き手で牧柵沿いでの見学となりました。父ダイワメジャーの当歳牡馬は、額に三日月の流星があり、品のある表情をしていました。山本さんによると、双方の母馬は放牧地ではボスだそうですが、展示の際は母馬らしい優しい表情をのぞかせていました。また、放牧地の群れでは仔馬に乳を飲ませる光景もあり、子育てに触れる場面にも遭遇しました。最後に今年25歳となったシスタートウショウの健在な姿を見学し、なでしこパワーをもらうように牧場を後にしました。

ビッグレッドファーム


コスモバルク記念撮影
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心地よい秋の陽ざしを浴びて、バスはUターンするように新冠町へ。1998年開場のビッグレッドファーム(明和)へと向かいます。まずは小学校を改装した建物「KEIBA CLUB」内でランチタイム。ビッグレッドファーム・スタッフの浅子祐貴さん、福田一昭さん、矢吹愛美さんが歓迎の言葉を述べ、参加者と牧場トークを弾ませながら昼食(地元産野菜のカレーライス・豚汁・ゆでトウキビ)を楽しみました。その後は緑豊かな森林道を抜けて種牡馬厩舎へ。芝ダートのG1馬アグネスデジタル、ニューフェイスでケンタッキーダービー馬のアイルハヴアナザー、中央・地方の壁を破って海外でも活躍したコスモバルクが展示されました。順番をフライングしそうなぐらい、参加者の前で元気をアピールしたコスモバルクとは全員で記念写真を撮り、その後は厩舎内での自由見学となりました。スタリオンスタッフへ質問をする方も多く、種牡馬の手入れ用シャンプーについてなど、専門的な話題も飛び交っていました。帰り際には昨年亡くなったイブンベイ、マイネルラヴのお墓に手を合わせる参加者の姿もありました。

ノースヒルズ


次に登場したのはキズナの母キャットクイル
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度重なる名馬との出会いを続けている本ツアーも、いよいよ折り返し。参加者の疲れの色はどうかと心配するところですが、どの方も足取りは軽く、牧場の方への挨拶もないがしろになることはありませんでした。今度は今年のダービー馬キズナの故郷ノースヒルズへ。新冠町美宇地区に構える牧場で、こちらも牧場環境の美しさに大変定評があります。ゼネラルマネージャーの福田洋志さんの案内で、厩舎前の展示場にて繁殖牝馬を見学しました。最初に登場したキュンティアは当歳馬(牡、父クロフネ)を連れ立って、班ごとの記念撮影に応じてくれました。「ファレノプシスからキズナまで、ずっと追いかけている血統なんです」という男性参加者を虜にしていたキャットクイルは、日本ダービー馬&桜花賞馬&アメリカ重賞馬を生んだ素晴らしい繁殖牝馬。23歳となった今年も馬体はしっかりしており、ドンと構えるようにポーズを決めました。後半はラヴェリータ、ローブデコルテの芦毛2頭がお出まし。ともに母馬らしい顔つきとなり、出産を経てお腹まわりは大きくなっていました。澄み切った青空のもと、日高山脈を背景に立つ白いシルエットは、ひと際絵になりました。見学終了後はバスで10分の場所にある「太陽の森ディマシオ美術館」でトイレ休憩をとり、2日目最後の目的地へ移動となりました。

錦岡牧場


25歳になったヤマニンゼファー
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幾分、陽が沈み始めてきた午後4時前。一行が訪れたのは新冠町新和地区にある錦岡牧場。主に「ヤマニン」の冠名を持つ競走馬の故郷として古くからあり、生産と育成を行っています。過去には天皇賞馬ヤマニンゼファーをはじめ、札幌記念(G2)を制したヤマニンキングリー、神戸新聞杯(Jpn2)を制したイコピコらが巣立っています。錦岡牧場代表の土井睦秋さんによる案内のもと、功労馬生活を送っているヤマニンゼファーを見学しました。今年25歳となりますが足腰はしっかりしており、夏場は夜間放牧をしているそうです。土井さんの計らいで記念撮影の場を用意していただき、班ごとに貴重なショットを撮りました。更に「せっかくですから、どうですか」と、生産馬で里帰りしてきたジョリーダンスの仔(牡2歳、父コンデュイット)も展示していただき、素質を感じさせる好馬体と力強い歩様に、参加者はメモを走らせていまいた。また、土井さんからはジョリーダンスを所有していた俳優・小林薫さんや、馬産にまつわるエピソードを気さくに紹介し、参加者に思い出話をプレゼントしていました。ある若い参加者はホテルに帰った後にヤマニンゼファーのレース動画を検索したようで、「現役時代のパフォーマンスに驚きました。すごい馬だったんですね」と、かつての名馬を知る機会に喜びを感じていました。