2012秋 北海道馬産地見学ガイドツアー 現地取材レポート

馬産地見学ガイドツアーレポート[ツアー2日目]

ツアー2日目:早朝から夕方まで盛りだくさんな1日です。
名牝、名牝を産んだ母馬を見学しました。

2012年10月5日

JRA日高育成牧場BTC軽種馬育成調教センター


2歳馬4頭がダートコースでの行う調教を見学
他の写真を見る
他の写真を見る

すっきりと晴れ渡った2日目の朝。6時30分に出発したバスは、アジア最大級の調教施設を誇るJRA日高育成牧場・BTC軽種馬育成調教センターへ。昨年に続いてJRA日高育成牧場名倉総務係長によるナビゲートで各施設をめぐる。「BTCの規模は1500ha。ちょうど渋谷区の広さに値します」という説明に、驚きの声を上げる参加者。どこまでも続くグラス馬場を横目に丘へ上がると、ちょうど子ギツネが待ち受けていて、その愛くるしさに癒される一幕も。展望台で年間約180万頭、1日平均570頭が利用する調教コースを眺めた後、800mダートコースで山口ステーブルの調教を見学。2歳馬4頭の調教を山口ステーブル・山口裕介社長がわかりやすく解説し、馴致やデビュー前の調教ポイントを伝えた。

イーストスタッド


メイショウドトウと記念撮影・2班
他の写真を見る
他の写真を見る

2日目午前は昭和の3冠馬シンザン誕生の地、浦河町で名馬めぐり。まず立ち寄ったイーストスタッドではオレハマッテルゼ、タイキシャトル、メイショウボーラーの3頭と対面した。初年度産駒ハナズゴールの活躍で人気上昇中のオレハマッテルゼは、緑に映える尾花栗毛の美しい姿を披露。タイキシャトルとメイショウボーラーは父子共演で、一流のスピードも納得の好馬体を披露した。展示後は放牧エリアの自由見学となり、青草のにおいを感じながらタイキフォーチュン、ネイティヴハート、メイショウオウドウらを眺めた。最後にグランプリホース・メイショウドトウと記念撮影。気性の大人しい馬で、撮影中に何度かあくびをしては、参加者を和ませた。

川越ファーム


記念撮影後には特別に触らせてもらうことに
他の写真を見る
他の写真を見る

初日から種牡馬見学が続き、いよいよ繁殖牝馬が登場。川越ファームでは桜花賞馬テイエムオーシャンが、その母リヴァーガールとともに放牧地で待ち受けていた。ある参加者は「初めて繁殖牝馬を見ました」と、種牡馬や功労馬との違いを観察。お腹を大きくしたテイエムオーシャンはディープスカイを受胎中で、夜間放牧明けということもあって非常に大人しく、引き手の川越祐樹さんを信頼し、初対面の参加者に囲まれても穏やかに記念写真に収まり、ほんわかとした雰囲気に包まれた。「現役時代は牡馬を負かすほどの牝馬でしたが、今ではすっかりお母さんの顔でしたね」と、参加者は以前の姿とのギャップと時の流れを感じていたようだ。

日高スタリオンステーション


ヤエノムテキと記念撮影
他の写真を見る
他の写真を見る

太平洋から最も近い場所にある種牡馬施設、日高スタリオンステーションではNHKマイルC(G1)を制したウインクリューガー、ダートを中心に重賞馬を送り出しているプリサイスエンド、オグリキャップと同世代の天皇賞(秋)馬ヤエノキテキが展示された。27歳となったヤエノムテキは健在で、長寿を願いながら全員で記念撮影。その後は放牧エリアの自由見学となり、三々五々、ゴーカイ、ゴスホークケン、スキャン、ノボジャック、ビッグサンデーらへ会いに行く。放牧地の遠くまで行ってしまった馬には、牧場スタッフの方がわざわざ間近まで連れてきて、シャッターチャンスを届けた。帰り際には2010年に亡くなったスーパークリークのお墓参りをし、参加者は1990年前後の競馬ブームを思い出していた。

伏木田牧場


伏木田牧場
他の写真を見る
他の写真を見る

数多くの有名馬と会えるこのツアーにして、毎回注目の的となるのがファインモーション。現役時代は無敗で秋華賞(G1)、エリザベス女王杯(G1)を制し、有馬記念(G1)では3歳牝馬にして1番人気に推された。観衆の心を鷲づかみにした華麗な走りを、昨日のことのように思い出すファンも少なくない。余生を過ごす伏木田牧場へと到着すると、ひっそりとした林の近くで伏木田修さんと一緒にファインモーションはいた。牧場のご厚意で参加者は人参をあげることができ、各々恐る恐る手を差し伸べる。ペロッと食べると心が通じたような気分になり、名牝との刹那のふれ合いに参加者は胸を躍らせていた。近くの放牧地には東京2歳優駿牝馬の勝ち馬プリマビスティーと、母としてエンジェルツイート、オオエライジンの2頭の重賞ウイナーを生んだフシミアイドルが参加者をもてなし、優しい眼差しでファインモーションを見守っていた。

鮫川啓一牧場


オースミハルカ2012とも記念撮影
他の写真を見る
他の写真を見る

2003年のクイーンS(G3)でファインモーションを相手に逃げ切ったオースミハルカ。ここではその母ホッコーオウカと一緒にお披露目された。育ての親である鮫川啓一さんの解説でオースミハルカは当歳牡馬(父ハーツクライ)を、ホッコーオウカは当歳牝馬(父ディープインパクト)を連れ立って登場。「以前ツアーで紹介したオースミイチバン(オースミハルカの3番仔)は、競走馬として重賞を勝ちました。今回紹介する馬たちも同じように活躍して欲しいです」と、鮫川さん。前夜の懇親会でも生産馬について熱心に語っていて、ここではそれぞれの配合の経緯について詳細に説明してくれた。クラシックを狙う未来の優駿と記念写真を撮った後は、「せっかくですから、1歳馬も」という鮫川さんの計らいで母オースミハルカの1歳牝馬(父マンハッタンカフェ)とも記念撮影。以前からオースミハルカのファンという参加者は「すっかりお母さんらしくなっていましたね。ますます応援したくなりました」と、感激していた。

三石川上牧場


三石川上牧場では無敗でオークス、秋華賞を制したカワカミプリンセスを見学
他の写真を見る
他の写真を見る

地元で評判の三石温泉「蔵三」で昼食を済ませ、一行が向かったのは2006年のオークス(G1)、秋華賞(G1)を制したカワカミプリンセスの待つ三石川上牧場。2012年、コマンズとの間に待望の初仔(牝馬)を生んだカワカミプリンセスは、初めての離乳を終えてややナーバスになっていたが、山奥にある分場でひと際大きな存在感を示した。たくさんのカメラに囲まれても耳をピンと立て、自慢のプロポーションを披露する。今年はエンパイアメーカーを受胎中とのことで、2番仔のカップリングも要注目だ。ここに来て空が曇ってきたものの、何とか雨は避けられてバスは静内へと北上する。

ノルマンディーファーム(旧カントリー牧場)


ノルマンディーファームではウオッカの母タニノシスターを見学
他の写真を見る
他の写真を見る

三石から40分ほど移動し、バスは女傑ウオッカの生地へ。カントリー牧場の生産事業撤退のため、現在はノルマンディーファーム(岡田スタッド分場)に変わったこの場所では、ウオッカの母タニノシスターと、菊花賞馬ビッグウィークの母タニノジャドールが展示された。カントリー牧場時代から生産現場に携わっている田村主任は「ウオッカは当歳時から体つきの良さが目立ち、手のかからない馬でした。一番の思い出のレースは天皇賞(秋)(G1)です」と、エピソードを明かした。タニノシスター、タニノジャドールを引き継いだノルマンディーファーム・岡田壮史さんは「ウオッカ、マツリダゴッホ、スマートファルコンに続く強い馬を生産していきたい」と、抱負。参加者は展示後、マーチス、タニノチカラ、タニノムーティエらの墓参りをし、バスへと戻った。

JBBA静内種馬場


フォーティナイナーと記念撮影
他の写真を見る
他の写真を見る

2日目のツアーも終盤。今度は海外から優秀な種牡馬を導入しているJBBA静内種馬場へと到着する。2012年は検疫のため一般見学を中止しているため、下車時に靴底を消毒して入場。パレードリンクで展示されたのはアルデバランⅡ、エンパイアメーカー、ヨハネスブルグの現役種牡馬3頭と、ハクタイセイ、フォーティナイナーの引退種牡馬2頭。中でも、エンパイアメーカーは2012年の日高管内種付頭数トップの種牡馬で、当歳馬市場では産駒が高値で取引された。「どんな馬なのか注目していました。品のある顔立ちで、なおかつ貫録がありましたね」と、参加者は感想を話す。未来の種牡馬勢力図を変えるとも言われているゆえんを、遊佐繁基獣医師の丁寧な解説から参加者はひも解いていた。

新和牧場


乗馬歴のある方はスタッフの方の手綱なしで乗りました
他の写真を見る
他の写真を見る

夕方4時に2日目最後の目的地・新和牧場に着くと、あいにくの雨に見舞われた。「さっきまで晴れていたんだけどね」と、残念そうな表情を浮かべたのは新和牧場の谷岡毅社長。参加者はレインコートを着用して、放牧地で草を食むサクラローレル、サクラチトセオーらを見学した。まもなく「実はサプライズを用意しているんだ」と、谷岡社長のひと声で登場してきたのは、馬装されたサクラシンオー(1996年・青葉賞(G3)3着馬)。厩舎近くのスペースを使って、希望者に乗馬体験(引き馬)の機会をプレゼントした。思いもよらぬイベント発生で、乗馬希望者は続出。時間の関係で何人かに限られたが、交代で温かな馬の背を体感した。サクラシンオーはサクラユタカオー産駒らしい栗毛馬で、四白流星がチャームポイント。雨のしぶきにも色あせないサラブレッドの美しさが、最後の最後に映し出された。