2017年07月02日 CBC賞 G3
優勝馬:シャイニングレイ
プロフィール
- 生年月日
- 2012年05月22日 05歳
- 性別/毛色
- 牡/鹿毛
- 戦績
- 国内:7戦4勝
- 総収得賞金
- 135,610,000円
- 馬主
- (有) キャロットファーム
- 生産者
- ノーザンファーム (安平)
- 調教師
- 高野 友和
- 騎手
- 北村 友一
管理技術の向上や血統の更新により、日本競馬のレベルは年々向上している。今や世界のG1レースでも日本生産馬は高い評価を受けているだけでなく、海外のホースマンが日本の競走馬市場に足を運ぶようになったことからも、それは明らかである。
その一方、芝やダート、そして距離と条件を選ぶことなく活躍を続ける競走馬は、年々その数を減らしている印象がある。これもより競走馬のスペシャリスト化が進んだ影響とも言えるが、特に距離の壁を乗り越えて活躍を見せる競走馬は、クラスを上げていく程にほぼ見られなくなってきた。
そう考えると芝2000mのホープフルS(G2)、そして芝1200mのCBC賞(G3)と、異なる距離体系の重賞レースを制したシャイニングレイは、重賞2勝という実績以上に称えられるべき競走馬と言えるだろう。
しかし、この距離変更には様々な要因があった。それは怪我による長期の休養。そして、一人は育成厩舎長、一人は管理調教師という異なる立場ながらも、深くシャイニングレイに接してきただけでなく、昔からの交友もあった二人のホースマンの存在だった。
「ホープフルS(G2)を勝ったときには、次の年にクラシックを狙える馬だと思っていました。しかし、弥生賞(G2)の後に故障を発症し、その後も脚元の不安で長期の休養を余儀なくされました」とは育成を手がけた、ノーザンファーム空港の細田誠二厩舎長。その休養期間は約2年。そのほとんどの時間をシャイニングレイは、ノーザンファーム空港牧場で過ごすことになった。
「幸いなことに脚元の回復は早く、牧場でも順調に乗り込みを図ることが出来たのですが、その一方で育成時には見られなかった気性の強さを、調教から見せるようになり、落ち着いて走らせたい時にも、ハミを取って行こうとする素振りを見せるようになりました」
シャイニングレイがレースを使ってから、前向きさを見せるようになったということを、細田厩舎長は管理をする高野友和調教師からも聞いていた。実は細田厩舎長と高野調教師はノーザンファーム空港で共に働いていた時期があり、それどころか同じ厩舎で仕事をしていた非常に近い存在でもあった。
「高野調教師には、『復帰後は短いところを使ってみてもいいのでは?」と話をしたこともあります。高野調教師も同じことを考えていたようで、その辺の意思疎通ができる存在だったのは大きかったですね」
まさに旧知の仲だからこそ話し合えた、シャイニングレイにとって最適な管理と、今後の目標。細田氏は足元のケアとレースに耐えうる体力を牧場で付けていく一方で、そのバトンを託された高野調教師は約2年ぶりとなる実戦を、初めてのダート戦となる仁川Sに定めていく。
「レース後の脚元だけが心配でしたが、高野調教師から『大丈夫でした』との言葉を聞いてホッとしました。あとはシャイニングレイにあったレースを使って行ければと思っていましたが、芝1400mで行われた安土城Sのレースを見て、やはり、今の気性に向いているのは短距離戦だと思いましたね」
その安土城Sよりも更に一ハロン短い条件で行われたCBC賞(G3)。レースが行われたのは、最後の直線が長い中京競馬場ではあるが、それでもスプリントのスペシャリストが揃い、600m通過が33秒1という速い流れについていけなかったのか、シャイニングレイは後方からレースを進めることとなる。
「最後の直線に入ってからのポジションを見た時には、駄目かなと思いました。それでもどんどん順位を上げていき、まさかと思っていたら、前を走っていた馬を捕らえていたのでとても驚きました」
この辺の地力は、やはり3歳時にクラシック候補と言われた能力の違いなのかもしれない。そうとは言っても、全く流れの違う競馬で勝利をあげたのは紛れもない事実であり、クラシック制覇の夢こそ叶わなかったが、今後は芝短距離界で頂点を目指せる新星となっていきそうだ。
「この馬の復活に際しては自分たち牧場スタッフだけでなく、高野調教師や厩舎のスタッフ、そしてノーザンファームしがらきと、関わって来た全ての関係者が復帰に向けて最善の調整を行ってきた成果だと思います。それぞれのホースマンが、それぞれに特別な思いを持っていると思いますし、この重賞勝利は、その努力の結晶とも言えそうです」
努力の結晶が叶ったからこそ、シャイニングレイの未来にはG1タイトルがはっきりと見え始めている。