重賞ウィナーレポート

2015年05月10日 NHKマイルC G1

2015年05月10日 東京競馬場 晴 良 芝 1600m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:クラリティスカイ

プロフィール

生年月日
2012年03月07日 03歳
性別/毛色
牡/鹿毛
戦績
国内:8戦3勝
総収得賞金
209,823,000円
クロフネ(USA)
母 (母父)
タイキクラリティ  by  スペシャルウィーク
馬主
杉山 忠国
生産者
パカパカファーム (新冠)
調教師
友道 康夫
騎手
横山 典弘
  • タイキクラリティ、当歳馬と牧場の皆さん
    タイキクラリティ、当歳馬と牧場の皆さん
  • 優勝後の万歳写真
    優勝後の万歳写真
  • タイキクラリティは今年もオルフェーヴルと交配
    タイキクラリティは今年もオルフェーヴルと交配
  • 今年生まれた牝馬(父オルフェーヴル)
    今年生まれた牝馬(父オルフェーヴル)
  • 厚賀分場からは太平洋が見渡せる
    厚賀分場からは太平洋が見渡せる
  • 起伏に富んだ放牧地がいくつもある
    起伏に富んだ放牧地がいくつもある

 3歳マイルの頂点、NHKマイルカップ(G1)はクラリティスカイが好位から抜け出し、見事栄冠を手にした。

 本馬の生産は新冠町のパカパカファーム。アイルランド人の獣医師ハリー・スウィーニイさんが代表を務める牧場で、2001年に新和(新冠町)に本場を、2008年に厚賀(日高町)に分場を開設している。現在、繁殖牝馬は約30頭いて、スタッフはアイルランド人やフィリピン人を中心に約12名が働いている。ダービー馬ディープブリランテを生産したことで知られ、NHKマイルカップ(Jpn1)は2007年に制したピンクカメオ以来2度目の勝利となった。

 レース当日、牧場からはハリーさんら7名が応援に出向き、3年ぶりとなる生産馬G1制覇に期待を膨らませていた。時を同じくして厚賀の分場では、スタッフがテレビの前に集まり、スタートからの快調な走りに胸を高鳴らせていた。

 「最後に抜け出した時は、後続とのリードこそ僅かでしたが、道中の走りから大丈夫だろうと信じていました。横山典弘騎手が上手く乗ってくれましたね。優勝できて嬉しいです。2歳時にいちょうSをレコード勝ちしているように、この距離は向いています。ちょうどその日の夕方に、クラリティスカイの母タイキクラリティの種付けとなったので、牧場でレースを見てからすぐ移動できる態勢を整えていました。レース後は嬉しさと合わせて、タイキクラリティがG1馬の母馬となったので、その実感から種付け場へ行くのに緊張が走りました(笑)」と、語ってくれたのは場長のミック・ブックリーさん。無事に種付けを終えて帰宅すると、駆けつけた新冠町の小竹国昭町長や新冠町軽種馬生産振興会の中本隆志会長らと万歳をして喜び合った。

 父クロフネに続いて同レース2代制覇を成し遂げた本馬だが、当歳時はセレクトセールで主取りとなった経緯がある。その後に杉山忠国さんと縁が結ばれ、3年後、オーナーへ初G1をプレゼントすることになった。牧場時代についてミックさんは、「手がかからなくて、賢い馬でしたね。1歳上のクラリティシチーの出来が良かったので、この馬も楽しみにしていました。当時はインディウム(園田の重賞馬)と同じ放牧地で、傾斜のある場所でも、全速力で駆け上がっていたのを覚えています。真冬でも馬服を着せずに放牧し、厳しい環境下でも自然のまま育てました。基礎体力だけではなく、精神力も鍛えられたと思います。」と、振り返る。当歳~1歳春ごろまで同牧場で過ごし、その後は杉山オーナーが経営する明治牧場(新ひだか町)へ移動し、引き続き順調に育った。

 本馬の母タイキクラリティは現役時代JRA・1勝。その母タイキダイヤはクリスタルカップ(G3)の勝ち馬で、NHKマイルカップ(G1)初代覇者であるタイキフォーチュンの半妹にあたるから、父系・母系ともにこのレースとは相性が良い。タイキクラリティは昨年、父キングズベストの牡馬を生み、こちらはセレクトセールでダーレー・ジャパンが落札。今年は父オルフェーヴルの牝馬を生み、来るセレクトセール上場を視野に入れ、準備を進めている。当歳馬についてミックさんは“very nice”と連発。自信を裏付けるように、今年もタイキクラリティにオルフェーヴルを交配している。

 レース後、澄み切った青空のもと、ウイニングランを終えたクラリティスカイが検量室前に来ると、競馬中継の映像はハリーさんと横山典弘騎手が握手する場面をとらえていた。勝者の陣営らしい、晴れやかな表情が見えた。種付けの仕事が迫っていたミックさんは、その様子まで見られただろうか。殊勲の母馬とともに、馬運車に向かう最中だったかもしれない。

 「約20頭の生産規模から、再びG1馬を出せて嬉しいです。牧場は沢山のスタッフがいる状況ではなくて、それぞれ忙しい毎日を送っている中で、良い結果を出せました。クラリティスカイは1,600mが合っていますから、今度はクラリティシチーと一緒のレースになるかもしれませんね。」

 もしそうなれば、どちらにも勝たせたいという本音を込めながら、ミックさんは笑みを浮かべた。牧場自慢の血統馬たちの進撃はなおも続いていくだろう。優勝記念の万歳写真では、現場の柱のごとく真ん中に立っていたミックさん。再び大きな勝利を掴むべく、高々と上げた手は誰よりも大きかった。