重賞ウィナーレポート

2014年05月10日 京都新聞杯 G2

2014年05月10日 京都競馬場 晴 良 芝 2200m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:ハギノハイブリッド

プロフィール

生年月日
2011年02月21日 03歳
性別/毛色
牡/栗毛
戦績
国内:9戦3勝
総収得賞金
148,994,000円
タニノギムレット
母 (母父)
ハッピーペインター  by  トニービン(IRE)
馬主
日隈 良江
生産者
社台ファーム (千歳)
調教師
松田 国英
騎手
秋山 真一郎

 ハイブリッドとは異なる種類を混合、もしくは混成したもの。競走馬として速く走るために単一種のみで品種改良されてきた、サラブレッドとは対義語とも取ることができる。

 「カムイオー」、「トップレディ」といった名馬たちの冠名としても知られる「ハギノ」に、「ハイブリッド」が混合されたと言えるのが、京都新聞杯(G2)の勝ち馬であるハギノハイブリッド。とは言えども、その血統背景を見るとトップサイアーが幾重にも配合されており、まさに近代競馬の象徴と言える馬でもある。

 「2011年のセレクトセール当歳セクションにおいて、日隈オーナーと松田国英調教師に見初められてご購買いただきました。当歳時はこの牝系らしく、スラリした好印象がありながらも非力な面があり、夜間放牧を行っていた時期は、疲労感を残さぬように慎重にケアを続けていました」とは社台ファームの1歳厩舎長である澤田充正さん。その澤田さんの言葉にある「この牝系」との言葉だが、牝系を振り返った時、やはり目に止まるのは曽祖母レガシーオブストレングスの名前。ハギノハイブリッドの祖母で、4歳牝馬特別(G2)、ローズS(G2)と重賞2勝をあげたサイレントハピネスだけでなく、阪神3歳牝馬S(G1)を優勝。その後も重賞で4勝をあげたスティンガー。またオーシャンS(G3)を勝ったアーバニティなど、卓越したスピードを産駒へと伝えていった。

 牝系について触れたので、改めて配合されてきた種牡馬たちにも触れたい。サイレントハピネスの父となったのが、日本競馬を変えた大種牡馬であり、母父としても優れた成績を残し続けるサンデーサイレンス。そのサンデーサイレンスの前にリーディングサイアーとなったトニービンとの間に生まれたのがハギノハイブリッドの母、ハッピーペインターであり、ハギノハイブリッドの父タニノギムレットはウオッカと共に、史上初となる父娘日本ダービー(G1)制覇を達成。そのタニノギムレットの父ブライアンズタイムは、サンデーサイレンスとリーディングサイアーを争った名種牡馬でもあった。

 この血統の良さが次第に出てきたのだろうか。澤田さんの厩舎にいたハギノハイブリッドは成長と共に馬体の印象を変えていく。

 「1歳の春から一気に体格が良化して、敏捷性だけではなく力強さも出てきました。育成へと送り出せた時には『これなら上のクラスでも十分に戦える馬になる』という自信もありました」(澤田さん)

 しかし、重賞制覇に向けてのその道筋は、決して平坦だったわけではない。2歳9月のメイクデビュー阪神でデビューするも、勝ち上がったのは4戦目の中京で行われた2歳未勝利戦。3歳2月の共同通信杯(G3)では重賞の壁に阻まれるように、勝ったイスラボニータから0秒8差の6着に敗れている。

 だが、その重賞挑戦が成長のきっかけとなったかのように、続く大寒桜賞で2着となると、続く新緑賞も勝利。3番人気で迎え入れられた京都新聞杯(G2)では、後方から一気に脚を伸ばし、重賞制覇と、そして賞金面での日本ダービー(G1)出走を確定させることとなった。

 「新緑賞の内容が良かったので、これから重賞でもいいレースを見せてくれるかここが試金石だと思っていましたが、その想像を遙かに超えるような素晴らしい内容でした。しかも勝ってダービー(G1)出走を決めたわけですから言うことがありません」(澤田さん) 

 来るべき日本ダービー(G1)は6月1日、東京競馬場で発走。その選ばれた18頭の中にハギノハイブリッドをゲートインさせたことに対し、澤田さんは、「どんなレースを見せてくれるのか楽しみにしています」と期待を寄せる。近年、ハイブリッドはエンジンとモーターという2つの動力源を持つ「ハイブリッドカー」が滲透したことで、速さの象徴ともとらえられるようになってきた。

 ハギノハイブリッドの血脈の中にも、日本ダービー(G1)を制してきた、4頭の種牡馬の名前(トニービン、サンデーサイレンス、ブライアンズタイム、タニノギムレット)がある。まさに異なるダービー馬を混在してきたハギノハイブリッド。まさに日本ダービー(G1)のために生まれてきた「ハイブリッド」の血統馬が、どんな走りを見せるのか注目したい。