馬産地見学ガイドツアーレポート[ツアー1日目]
ツアー1日目:天候にも恵まれてツアーがはじまりました。門別地区を中心に見学。夕方から門別競馬場でグランシャリオナイター観戦と食事を楽しみました。
2017年9月21日
ヴェルサイユファーム
ツアー最初の目的地は日高町のヴェルサイユファームです。昭和62年設立の牧場で、以前は「三城牧場」という名でウインラディウスやトーセンシャナオー、ライジングリーズンといった重賞馬を生産しました。現在は「ヴェルサイユファーム」と名を改めて強い馬づくりに励んでいます。元宝塚歌劇団というプロフィールを持つ岩﨑美由紀代表の牧場らしく、馬たちがいる厩舎内には優雅な音楽が流れ、牧場内はきれいに芝が刈られ、美しい景観が広がっています。ここでは、繁殖牝馬のジョウノファミリーと、母子でエールドクラージュ、ティエッチグレースが展示となりました。時折、強い風が吹く天候となりましたが、今年生まれたばかりの当歳馬たちはどの馬もよく躾されていて、大勢のツアー参加者を前にしながらも堂々としていました。
ヤナガワ牧場
近年、最も活躍著しい牧場として知られるヤナガワ牧場では、あの有名馬のファミリーが待っていました。一行を迎えた梁川正普代表の挨拶のあと、まず現れたのはダート界の王者コパノリッキーの母コパノニキータで、コパノリッキーの全妹となる当歳馬(父ゴールドアリュール)と一緒に登場しました。当歳馬はとても落ち着きがあり、顔にはサンデーサイレンス系らしい流星がありました。次はまぶしいほどに白い毛並みのブラボーデイジー。牡馬のようなパンチのある体つきもインパクトを与えました。寄り添う当歳牝馬(父アイルハヴアナザー)も、母同様に芝、ダートで重賞Vを予感させます。締めくくりは2016年の年度代表馬キタサンブラックの母シュガーハート。参加者より「バクシンオーそっくり」という感想が聞こえてきたように、父サクラバクシンオー譲りの体型で、スターホースを生んだ母馬らしい風格を漂わせていました。
ダーレー・ジャパン・ファーム
続いては世界で競走馬事業を展開しているダーレー・グループの日本拠点へ。近年、ダノンシャンティやディサイファ、ティーハーフといった重賞馬を生産し、日本競馬に新風を吹かせています。ツアーでおなじみ、ノミネーションオフィス・石澤考康さんの案内と解説で繁殖牝馬、当歳馬が展示となりました。全日本2歳優駿(Jpn1)の勝ち馬サマリーズは、今年初子を生み、いちだんと母親らしくなっていました。初子の当歳馬はディープインパクトを父に持つ牝馬で、もしセールに出れば相当な高値になりそうな良血馬。芝短距離で出世したレディオブオペラは、競走馬時代はよくメンコをしていたので、初めて素顔を目の当たりにできた参加者も多かったことでしょう。サマリーズと同じ7歳で、繁殖牝馬としては若々しくあり、キレのある動きを見せていました。ともにこれからのダーレー・ジャパン・ファームを盛り立てる存在となり、先々は「あのG1馬の母」として、紹介される日が来るかもしれません。
ダーレー・ジャパン スタリオンコンプレックス
引き続き、石澤さんの解説で次はダーレー・ジャパンの種牡馬エリアへ。「まるで外国にいるよう」という参加者の感想通り、建物の景観や英字の案内、外国人スタッフの姿などは、日本の牧場にはない雰囲気があります。ここでは今年から種牡馬生活を送っているディスクリートキャットを含め、5頭が展示となりました。トップバッターを務めたパイロは格闘家のような威圧感があり、先ほどの繁殖牝馬たちとは対照的に、種牡馬らしさ満点の馬でした。産駒セイウンコウセイのG1勝ちで評価を上げるアドマイヤムーンは利口な性格で、石澤さんは「人間ならば勉強が得意なタイプ」と紹介。5シーズン目を終えたフリオーソは参加者との対面を楽しむように、余裕たっぷりに歩いていました。
ブリーダーズ・スタリオン・ステーション
ブリーダーズ・スタリオン・ステーションでは事務局・遠藤幹さんによる解説で、種牡馬展示から始まりました。まるでその日の空模様を思わせる「すばらしいお天気の一日」という名を込められたラブリーデイや、バラ一族のG1馬ローズキングダム、期待のニューフェイス・リオンディーズらが歩きました。ジャングルポケットは今回のツアーでもフレーメンで参加者を出迎え、移動初年度を無事に終えたトーセンラーは環境にも慣れた様子でした。ブラックタイドの黒塗りの高級車を思わせるピカピカの毛ヅヤは、種牡馬としての大成ぶりを物語っているようでした。展示終了後は厩舎前での自由見学となり、希望者はバスでお墓前まで移動し、ステイゴールド、エアシャカールなどのお墓に向かいました。特に、ステイゴールドのお墓参りは希望者が多く、それぞれ静かに手をあわせていました。
下河辺牧場
初日最後の牧場見学は、日高の名門・下河辺牧場です。最近では、菊花賞(G1)を制したキセキやグレーターロンドンが活躍しています。ここではまずオークス馬ダイワエルシエーロと当歳牡馬(父ロードカナロア)、ブロードストリートと当歳牡馬(父ロードカナロア)を見学しました。ともに牧場自慢の名牝系で、まさに“生きた芸術品”とも言われるサラブレッドの美しさ、気品を教えてくれる母子でした。続いては、牧場が生んだ桜花賞馬アユサンの子が登場。父ルーラーシップの当歳牝馬で、大勢の参加者を前にしながら、まっすぐにウォーキングしました。端正な顔立ちで、良血馬の才能を感じた参加者も多かったに違いありません。ツアー初日では最後の展示馬となったシュンドルボンは、さすが重賞馬といった好馬体を見せ、母としても大仕事をやってくれそうです。帰り際、牧場内の坂路コースに入らせていただき、下河辺行雄社長の説明を受けながら、参加者はウッドチップの感触や勾配を実感しました。
門別競馬場
一行は門別競馬場へ移動し、夕食を楽しみながら競馬観戦となりました。夕食は北海道らしくジンギスカンで、参加者の皆さんは馬談義に花を咲かせながら、門別競馬場名物のバケツに入った七輪を囲みました。サマーハウスからは門別競馬場のコースが見渡せて、レースが始まると、参加者の皆さんは食事を中断して、迫力の門別競馬を観戦していました。また、初の試みとして、実況放送の古川浩アナウンサーに協力いただき、中継をしている実況スタジオを見学できました。希望した参加者の皆さんは、滅多に入れない実況室からの眺めに興味津々で、実況室ならではの緊迫した空気を感じていました。