馬産地見学ガイドツアーレポート[ツアー1日目]
ツアー1日目:快晴のなかツアーはスタートしました。牧場、スタリオンを見学。このツアー初となる門別競馬場グランシャリオナイター観戦しました。
2016年9月15日
新千歳空港
すっかり秋の恒例行事となりました「北海道馬産地見学ガイドツアー」。回を重ねて、今回が8回目。毎回、リクエストの多い馬を漏らすことなく、少しずつ行程に変化を加えて参加者の方に楽しんでいただけるように工夫を凝らしています。今回は、もともとリクエストが多かった胆振地区の、普段は見学ができないような牧場を多く組み入れて参加者の方々に楽しんでいただきました。
新千歳空港の集合時間は午前10時。台風の影響が心配されましたが、参加者の方々はひとりも欠けることなく集合場所にお集まりいただきました。
追分ファーム
バスに乗り込むと、まず目指すのは追分ファーム。社台グループの中では比較的新しい牧場ですが、ゴールドアリュールやレジネッタ、ソングオブウインドなど数々のG1勝ち馬を送る名門牧場です。
ここでは伊関太郎さんの案内で2008年の桜花賞馬レジネッタ、2013年、2014年の天皇賞(春)(G1)を連覇したフェノーメノの母ディラローシェ、追分ファームゆかりの血統でニキーヤ産駒のラバヤデールと当歳馬(牡、父シンボリクリスエス)追分ファームが繁殖牝馬として迎え入れた2012年のエリザベス女王杯優勝馬レインボーダリアが紹介されます。
ツアー最初に訪れるのが、とてもリクエストの多い「生産牧場」。普段は防疫の関係で見学できない牧場が多いなか、快く引き受けていただいた追分ファームさんには感謝の言葉しかありませんが、ツアー最初の牧場でG1優勝牝馬と、生まれて間もない当歳馬が紹介されたことで参加者の方々からシャッター音が鳴りやむことはありませんでした。
ダーレー・ジャパン・ファーム
昼食後、一行が向かった先は日高町に複数拠点を構えるダーレー・ジャパン・ファーム。牧場ゲートで待ち構えていた繁殖マネージャーの福原博さんを乗せて、一行はそのままバスで場内をゆっくりめぐりました。NHKマイルC(G1)の覇者ダノンシャンティをはじめ、ディサイファ、ミッドサマーフェアといった生産馬を手がけてきた福原さんによる牧場案内を耳にしながら、車窓からどこまでも広がる青空と、緑一面の放牧地を眺めました。
バスは繁殖厩舎に入って一行が降りると、2頭の繁殖牝馬が待ち構えていました。2012年の全日本2歳優駿(Jpn1)を逃げ切ったサマリーズと、2014年シルクロードS(G3)2着の実績馬レディオブオペラです。ともに年齢的には6歳と若く、繁殖牝馬としてスタートを切ったばかりですが、一回り大きくなった体や優しい眼差しは、アスリートから母馬への変化を感じさせました。厩舎の近くには母子が群れをなす放牧地があり、展示終了後には生産牧場ならではの光景を、参加者は目に焼き付けていました。
ダーレー・ジャパン スタリオンコンプレックス
仲むつまじい母子の姿を見た後は、ダーレー・ジャパンのスタリオン部門へ。ツアーではおなじみ、ノミネーション担当の石澤考康さんによる解説で、繋養全5頭の種牡馬展示を楽しみました。トップバッターを務めたモンテロッソは2012年ドバイワールドC(G1)の覇者。エイシンフラッシュ、スマートファルコン、トランセンドといった日本からの遠征馬を負かしての勝利でした。次に登場したのは、エイシンフラッシュの父としても知られるキングズベスト。両馬とも今年は120頭近くと交配し、人気の高さを表すように、自信の表情で展示場に立ちました。日本のファンにもおなじみ、G1馬アドマイヤムーンはいつもながら紳士的な雰囲気で、フリオーソは輝くような毛並みを映して周回しました。最後に、今年184頭と交配したパイロが登場。はちきれんばかりの真っ黒なボディは充実一途で、いかにも種牡馬らしい猛々しさが伝わってきました。
ブリーダーズ・スタリオン・ステーション
僅かな移動時間で、次は約20頭の種牡馬を繋養しているブリーダーズ・スタリオン・ステーションへ。青空の下、こちらも立派な厩舎の前で、そのうち8頭が展示となりました。事務局より取締役業務部長の遠藤幹さんが立ち会い、解説役を務めました。前半は国際G1で活躍した2頭から。ローズキングダムはバラ一族らしい素軽さをアピール。過去、日本馬では最も凱旋門賞(G1)勝利に近づいたナカヤマフェスタは、ステイゴールド産駒譲りの気の強さを垣間見せました。続いては新入厩のトーセンラー。移動後間もないながら落ち着いている様子で、皮膚の薄さはディープインパクトそっくり。遠藤さんより「性欲が強く、スタリオンで一番大きい馬」というシンボリクリスエスは、メジャーリーガーのように迫力満点でした。年間3ケタの交配をコンスタントにこなすヴァーミリアン、ブラックタイドは、展示も慣れた様子で堂々たるポーズ。後半はいつもながらフレーメンで愛きょうをふりまくジャングルポケットと、孫世代も大活躍のグラスワンダーで締めくくりとなりました。展示終了後は厩舎前で自由見学となり、参加者は馬房から顔を出す種牡馬をチェック。ツアー後、産駒G1制覇の朗報が舞い込むことになるスウェプトオーヴァーボードの、真っ白な姿も目立っていました。また、エアシャカールやステイゴールドのお墓には多くの参加者が出向き、静かに手をあわせていました。
下河辺牧場
1966年開場の下河辺牧場は、長きにわたりクラシックホースやG1馬を輩出する名門牧場で、リーディング・ブリーダー・ランキング上位の常連です。今年も下河辺行雄社長が立ち合いのもと、4頭の繁殖牝馬が展示となりました。まず一行の到着を待ち構えていたのは、21歳となるロンドンブリッジ。高齢の域に達しましたが、この春ロードカナロアとの間に生まれた牝馬と元気な姿を披露しました。次は2010年の京王杯スプリングC(G2)の勝ち馬サンクスノートと2013年の桜の女王アユサンのお出まし。サンクスノートは短距離馬らしくピリッとした雰囲気で、キレのある動き。アユサンは競走馬時代にもこのツアーで展示機会がありました。今年、父キングカメハメハの牝馬を生み、新米ママとなっての再登場に、時の流れを感じました。最後を飾ったダイワエルシエーロは、先に見学した母ロンドンブリッジと同じくきれいな流星が特徴。名門出身の良血馬らしい上品さに、うっとりした参加者も多かったことでしょう。帰り際には近くの放牧地で、繁殖牝馬たちを見学。夕暮れの中で悠々と草を食む彼女たちは、いつまでも見ていたくなるような癒しを与えてくれました。
門別競馬場
ツアー初日最後の訪問地は、馬産地の競馬場として春~秋にナイター開催をしている門別競馬場です。かつてはコスモバルク、近年ではハッピースプリントやタイニーダンサーといった強豪馬が巣立っています。今回のツアーでは開催日と重なり、初めて訪れる参加者は、興味津々に場内を散策し、中にはさっそく馬券を購入している方もいました。門別競馬場のパドック、コースは観覧エリアから近く、参加者は騎手のかけ声や、馬の息遣いが聞こえてくるような、迫力の距離感を味わったことでしょう。
また、今回はとねっこ広場の一角にあるサマーハウスを貸し切り、競馬観戦と合わせてジンギスカンで夕食となりました。食事の席では、競馬談義に花を咲かせる参加者も多く、それぞれ交流を深める時間にもなったようです。あっという間に滞在時間は過ぎ、午後7時に宿泊先となる新ひだか町のホテルへと出発しました。