重賞ウィナーレポート

2025年10月19日 秋華賞 G1

2025年10月19日 京都競馬場 曇 良 芝 2000m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:エンブロイダリー

プロフィール

生年月日
2022年02月01日 03歳
性別/毛色
牝/鹿毛
戦績
国内:8戦5勝
総収得賞金
338,331,000円
アドマイヤマーズ
母 (母父)
ロッテンマイヤー  by  クロフネ(USA)
馬主
有限会社シルク
生産者
ノーザンファーム (安平)
調教師
森 一誠
騎手
C.ルメール

 牝馬クラシック最後の一冠となる今年の秋華賞(G1)を制したのは、ノーザンファーム生産馬のエンブロイダリー。エンブロイダリーは今年の桜花賞(G1)も制しており、この勝利で牝馬二冠制覇を果たした。

 「オークス(G1)は朝からの雨の影響が残っていた馬場が合わなかったこともありますが、パドックからテンションの高さを見せており、それはゲート裏でも変わらなかったので、力を出し切るのは難しいのではと見ていました」と話すのは、騎乗育成を手掛けたノーザンファーム早来の大谷渡厩舎長。そこに初めての距離となる芝2,400mでの競馬も影響したのか、1番人気に支持されたオークス(G1)では9着に大敗。レース後はノーザンファーム天栄で調整が行われていく。

 「中間のレポートにも目を通していましたが、いい状態で調整が行われていただけでなく、折り合い面の進捗もうかがえました。父と同じマイル路線を歩んでいくのではと思っていた時期もありましたが、秋華賞(G1)に出走することになったのは、距離をこなせるという手応えも感じていたのだと思います」

 オークス(G1)からぶっつけでの秋華賞(G1)出走となったが、その時からプラス6kgの馬体は、数字以上の充実ぶりをパドックでの周回からも証明していた。

 「落ち着いた様子でゆったりとパドックを歩けていていた姿からも、天栄でいい夏を過ごさせてもらえたのだと思えました。返し馬に入ってからの走りも良かったですし、ゲート裏に行ってからも落ち着いていたので、これなら力を出せると確信できました」

 オークス(G1)に続き、秋華賞(G1)も自宅からの応援となった大谷渡厩舎長だが、これにはある理由があった。

 「秋華賞(G1)の抽選で漏れて、新潟牝馬Sに出走したカネラフィーナも育成馬だったのですが、この馬もかなり期待をしていた馬であり、2頭出しになるのなら見に行こうと思っていました」

 秋華賞(G1)の出走とはならなかったカネラフィーナであるが、1番人気の支持を集めた新潟牝馬Sでは、歴戦の古馬を退けて快勝。いい形で秋華賞(G1)のエンブロイダリーにバトンを渡した。

 まずレースの主導権を取りに行ったのは、桜花賞(G1)、オークス(G1)ともに逃げを打っていったエリカエクスプレス。好位からレースを進めていったエンブロイダリーではあるが、比較的落ち着いた流れとなったのを見逃さなかった鞍上のC.ルメール騎手が、一気にポジションを上げていく。

 「ゲートが開いてから、いい位置でレースをさせてくれていると思いました。ポジションを上げていった時にもかかっていた様子も無かったように、操縦性にも余裕があったから、あの競馬ができたのだと思いました」

 最後の直線で前を行くエリカエクスプレスの差は約2馬身。その距離は残り1ハロンを過ぎてもなかなか縮まらなかったが、C.ルメール騎手は図ったかのようにゴール前で交わしていく。

 「エリカエクスプレスに楽な競馬をさせていなかっただけに、直線ではあっさり交わしていけるのではと思いましたが、直線の入り口でもたもたしてしまい、このまま逃げ切られるのではとも思いました。それでもあのポジションに押し上げたからことが、勝利に繋がったのは間違いないだけに、C.ルメール騎手の手綱捌きには脱帽するばかりでした」

 この勝利で最優秀3歳牝馬も見えてきた感もあるエンブロイダリーであるが、13日に同馬を所有するシルクレーシングから、12月14日に行われる香港マイル(G1)の招待を受諾したことが、クラブのホームページで発表された。

 「個人的には芝のマイルが最も能力を発揮できると思っていました。初めての海外遠征だけでなく、古馬とも初めてのレースとなりますが、今はどんなレースを見せてくれるのか楽しみです」と大谷渡厩舎長は次走に向けての期待を語る。父であるアドマイヤマーズも3歳時に香港マイル(G1)を勝っているが、これまでの歴史を遡っても、3歳牝馬の優勝馬はまだいない。

 それでも新潟芝1,800mの2歳レコードを樹立。クイーンC(G3)ではレースレコードを更新と、稀代のスピード馬でもあるエンブロイダリーならば、史上初の3歳牝馬の勝利と父娘制覇のダブル快挙も成し遂げてくれるのかもしれない。