重賞ウィナーレポート

2025年04月12日 阪神牝馬S G2

2025年04月12日 阪神競馬場 曇 良 芝 1600m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:サフィラ

プロフィール

生年月日
2021年02月01日 04歳
性別/毛色
牝/黒鹿毛
戦績
国内:11戦3勝
総収得賞金
104,144,000円
ハーツクライ
母 (母父)
サロミナ(GER)  by  Lomitas(GB)
馬主
有限会社シルク
生産者
ノーザンファーム (安平)
調教師
池添 学
騎手
松山 弘平
  • 昨年から厩舎の場所が移動となった
    昨年から厩舎の場所が移動となった
  • 2歳馬の移動も順調に進んでいる
    2歳馬の移動も順調に進んでいる

 まずはこの重賞ウィナーレポートにおける、2023年10月28日にアルテミスS(G3)を制したチェルヴィニアの記事を見ていただきたい。(https://uma-furusato.com/winner_info/entry-62797.html)

 そこには、ノーザンファーム早来の牝馬厩舎全てを管理していた(現在は調教管轄主任)の日下和博氏が、JRA-VANの2歳馬情報で述べたコメントを引用する形で、「東の横綱がチェッキーノ21 (父ハービンジャー)、西の横綱がサロミナ21(父ハーツクライ)ですね」と書かれている。

 東の横綱こと後のチェルヴィニアはその後、オークス(G1)と秋華賞(G1)を優勝して牝馬二冠馬となった。一方、西の横綱とされた後のサフィラはアルテミスS(G3)でチェルヴィニアと差の無いレースをしたものの、1番人気の支持を集めた阪神ジュベナイルF(G1)で4着に敗退。その後はオークス(G1)にも出走するも、ライバルだったチェルヴィニアの後塵を拝する形で13着に敗れていた。

 「ようやくこの馬の期待値に相応しいタイトルを、まずは1つ取ることができたと思います」と話すのは、サフィラだけでなくチェルヴィニアの育成調教も手掛けてきたノーザンファーム早来の山根健太郎厩舎長。育成時のサフィラはまだ良化の余地を残していながらも、調教は順調に進められており、その世代で手掛けてきた牝馬たちの中でも、最も進んだ調教メニューも消化できていた。

 「完成はまだ先だとは思っていましたが、本州へと送り出した時には、2歳戦からもいいパフォーマンスができるとの期待はありました」(山根健太郎厩舎長)

 2戦目に2歳未勝利戦を勝ち上がり、アルテミスS(G3)でも2着となった姿は、まさに牧場時代の高い評価通りの走りだったとも言える。ただ、チェルヴィニアといった春のクラシックを沸かせた馬たちが3歳を迎えてからも活躍していった一方で、サフィラは3歳を迎えて出走したクイーンC(G3)でも9着に敗れてしまう。

 「今から思うと他の馬たちと比べた場合にはまだ、成長曲線が先にあったのでしょう。オークス(G1)の後は成長を促すべく、北海道へと戻して夜間放牧を行っていました」

 その期間、馬体にはボリュームが出てくるようになり、調教を進めても馬体重は安定し続けた。秋初戦となるローズS(G2)は11着に敗れたものの、続く3歳2勝クラスで馬体重を460kg台にアップさせてからは、レース内容も安定してきただけでなく、レースを使われながらでも馬体重の変動はほぼ無くなっていった。

 「ローズS(G2)以降は直線に入ってからの走りや躍動感などが、春先と変わってきたように見えました。向こうで調整をしてくれていたノーザンファームしがらきのスタッフからも夏を越してから馬が充実していると話しており、ようやく完成を迎えてきたのではないかと思いました」

 その答えは重賞での走りで証明された。3勝クラスの斑鳩Sで3着となってから迎えた阪神牝馬S(G2)。サフィラの評価は9番人気でしかなかったが、逃げたイフェイオンの後ろにつける形で積極的にレースを進めていくと、最後の直線では先頭へと躍り出る。

 「レース前からのコメントにもあったように、陣営やジョッキーがこの馬の脚の使いどころをイメージした中での先行策だったと思います。そのプランが呼び込んでくれた勝利となりましたが、サフィラ自身もゴール前は本当に良く粘ってくれました」

 しかも、勝ち時計の1分32秒8はこのレースが芝1,600mで行われてからは史上2位タイ記録となる高速決着ともなった。ゴール前での勝負根性もさることながら、スピード能力の高さも証明した走りはここに来ての本格化を予感させる。

 「今回は人気(9番人気)にも現れていたように、重賞で戦ってきたメンバーを相手にまだ条件馬であるサフィラが、どこまでやれるかといった気持ちもありました。次はG1(ヴィクトリアマイル(G1))でまだまだメンバーは強くなりますが、昨年や一昨年にG1に挑んでいた頃よりは馬の成長度は格段に違っています。挑戦者であるのは変わりありませんが、どんなレースをしてくれるか楽しみです」と山根健太郎厩舎長は期待を寄せる。ヴィクトリアマイル(G1)は同世代の4歳馬たちもずらりと顔を揃えたレースとなるが、ここで「西の横綱」が本領を発揮してくれるのかもしれない。