2025年04月13日 桜花賞 G1
優勝馬:エンブロイダリー
プロフィール
- 生年月日
- 2022年02月01日 03歳
- 性別/毛色
- 牝/鹿毛
- 戦績
- 国内:6戦4勝
- 総収得賞金
- 224,551,000円
- 馬主
- 有限会社シルク
- 生産者
- ノーザンファーム (安平)
- 調教師
- 森 一誠
- 騎手
- J.モレイラ
仕事の目標として「G1勝利」をあげるホースマンは多い。ノーザンファーム早来の大谷渡厩舎長は育成スタッフの頃に騎乗してきた馬がG1馬となり、その夢は叶えられた。
2021年からは牝馬厩舎の厩舎長となると、早速1世代目の育成馬となるラヴェルがアルテミスS(G3)を優勝。そのラヴェルを始めとして、育成馬たちはG1に挑戦を重ねていったが、なかなかタイトルまでには届かなかった。
「G1を取れるかどうかは、巡り合わせや運も入ってくると思います。それよりも大事なのは、その馬が持っている能力をしっかりと引き出していくことだと、厩舎長になってからは特に感じるようにもなりました」(大谷渡厩舎長)
エンブロイダリーもここまで2度のレコードを更新しているように、高い能力を育成時から引き出せた馬と言える。
「クイーンCG3)だけでなく、新馬戦でも手前を変えてからの伸びが良かったので、スピード勝負なれば桜花賞(G1)でも力を出せるのではと思っていました。それだけに馬場の状態だけが気がかりでした」
競馬に運の要素が絡むのは、その時の天気によって力を出せる馬と、出せない馬がいることにも証明されている。桜花賞(G1)当日の阪神競馬場は雨が振っており、馬場も稍重となっていた。
「この馬場で脚が取られ無ければいいなと思っていました。ただ、枠はいいところ(4枠7番)に入ったと思いました」
過去の桜花賞(G1)でも4枠は有利な枠であるのが証明されていた。この点においてエンブロイダリーは「運」を持っていたと言える。ただ、レースでは枠の良さも馬場の悪化も、全く問題としないような走りをエンブロイダリーは見せた。
内枠からハナを切っていったのは、1番人気の支持を集めたエリカエクスプレス。1,000m通過は58秒6と、この馬場にしては速いペースで後続を引っ張っていくと、最後の直線では荒れたインコースを避けて、馬場の真ん中に進路を取る。
それをも目標としたかのように、後続馬が一気に交わしにかかる。横一線となる中、外から脚を伸ばしていったのは昨年の阪神ジュベナイルF(G1)の勝ち馬アルマヴェローチェ。すると、そのアルマヴェローチェに併せ馬を挑んでいくかのように馬体を寄せていったエンブロイダリーは叩き合いを制して抜け出すと、その勢いのままに先頭でゴール板を駆け抜けた。
歓喜の瞬間を、大谷渡厩舎長はテレビの画面越しに見ていた。「道中の位置取りを見た時は、やはりこの馬場は合わないのかなとも思いましたし、直線に向くまでもG1を勝つのは難しいのかなと思いました。ただ、鞍上のモレイラ騎手が上手く馬群を捌いてくれただけでなく、エンブロイダリーもその動き出しに良く反応してくれました」
ゴールの瞬間、一気にスマートフォンには着信が届き始めた。「ようやく勝ったな、と思い安堵に浸っていたのですが、これが厩舎長としてG1を勝つことなんだと思いました。返信は大変でしたが、それでも嬉しさの方が大きかったです」
次走は二冠をかけての出走となるオークス(G1)。クイーンC(G3)の時にも取材をさせてもらっているが、牧場時代から折り合いの不安を感じさせなかったエンブロイダリーは、マイルから距離を伸ばしていった方がより安定したレースができるとの話をしていた。
「まずはオークス(G1)へ無事に出走してもらいたいです。今回は稍重でのレースとなりましたが、良馬場ならば更にいい脚が使えるはずであり、左回りも不安はありません」
エンブロイダリーの牝馬二冠だけでなく、大谷厩舎にとってのG1 2勝目もまた、運を使わずともその実力だけで手に入れられそうだ。