2025年02月15日 クイーンC G3
優勝馬:エンブロイダリー
プロフィール
- 生年月日
- 2022年02月01日 03歳
- 性別/毛色
- 牝/鹿毛
- 戦績
- 国内:5戦3勝
- 総収得賞金
- 55,760,000円
- 馬主
- 有限会社シルク
- 生産者
- ノーザンファーム (安平)
- 調教師
- 森 一誠
- 騎手
- C.ルメール
アドマイヤマーズ産駒として、初めてのJRA重賞勝ち馬となったエンブロイダリー。デビューまでの騎乗育成を担当したのは、ノーザンファーム早来の大谷厩舎となる。
「育成厩舎に来た時の印象としては、1歳馬にしては完成度が高いと思いました。競馬を使っている際の馬体重にも現れているように、馬体には安定感があっただけでなく、その後に調教を進めていっても、飼い葉が落ちるようなこともありませんでした」と話すのは大谷渡厩舎長。育成厩舎としてのスタートを切ってから、毎年のように重賞馬を誕生させてきた大谷厩舎であるが、この3歳世代からもクラシックの舞台に重賞馬を送りだすこととなった。
馬体の良さや調教の動きの良さもあって、早期移動となったエンブロイダリーは、2歳6月のメイクデビュー東京(芝1,600m)に出走。そこでは2着に敗れるも、7月新潟の2歳未勝利戦では、距離を一ハロン伸ばした芝1,800mでは、2着に7馬身差をつけただけでなく、新潟芝1,800mの2歳レコードを更新(1分45秒5)してみせた。
「送り出した頃の印象としては仕上がりの良さからしても、早めにデビューできると思っていました。陣営も馬の状態を掴んで、早い時期のレースに臨ませてくれたのだと思います。それでもレコードを記録した走りには驚きました」(大谷渡厩舎長)
そのメイクデビューと2歳未勝利戦では共に上がり最速を記録。その走りは管理をしてきた大谷渡厩舎長にとっては意外な姿だった。
「牧場での印象からすると、馬体をしっかりと動かしながら、持続する脚を使っていく印象があっただけに、そこまでの切れる脚があるとは思っていませんでした」
その後もエンブロイダリーはサフラン賞、2歳1勝クラスとデビューから4戦続けて上がり最速を記録。世代屈指のスピード馬であることを証明するかのごとく、初めての重賞挑戦となるクイーンC(G3)に出走してきた。
「重賞で好走を見せていた馬だけでなく、新馬戦でいいレースしていた馬も出走してきたので、力関係的には読み辛かったです。それでも自分のレースができたのならば、いい結果を出せるのではと思っていました」
それまでのレースではハナを切ることもあれば、中団に構えるなど様々な位置取りを取ってきたエンブロイダリーではあったが、クイーンC(G3)では逃げたロートホルンをマークするような位置取りでレースを進めていく。
前半の3ハロン目からゴールまで、11秒台のラップが刻まれていく流れの中、エンブロイダリーは手応えも良く、東京競馬場の長い直線へと入っていく。残り2ハロンを過ぎたあたりで、鞍上のC.ルメール騎手からゴーサインが出ると、内のロートホルンを交わしただけでなく、後続との差もじわじわと広げていった。
「持ち時計のある馬なので、スピード勝負は持ってこいだと思っていました。前での競馬にはなりましたが、直線に入ってからも大崩れはしないと見ていましたし、最後までしっかりと脚を伸ばしてくれました」
レース前の寸評では、1分33秒台の決着になるとの記事を見ていた大谷渡厩舎長であったが、勝ち時計はそれよりも速い1分32秒2。これは2016年のNHKマイルC(G1)の勝ち馬となった、メジャーエンブレムが記録した1分32秒5より、0秒3も速いレースレコードともなった。
「勝ち時計を見た時にはさすがに驚きました。この内容ならば、桜花賞(G1)でも勝負になるのではないかとの期待も膨らんできました」
このクイーンC(G3)では5戦続けての上がり最速とまではいかなかったものの、それでも牧場時代に大谷渡厩舎長が感じていたような、長くいい脚を使えることを証明してみせた。
「折り合いの不安も無かっただけに、マイル以降の距離の方が向いているのではとも思っています。前に行ける馬なので、桜花賞(G1)でも展開を問わずにいいレースを見せてもらいたいです」
これまでの勝ち鞍は芝1,800m、芝1,400m、そして芝1,600mと全て異なった距離で上げている。東京コース、新潟コースと長い直線で真価を発揮してきたが、持ち前のスピードがあれば、阪神競馬場の芝1,600mでも、手綱を持ったままで押し切ってしまうのかもしれない。