重賞ウィナーレポート

2024年07月21日 中京記念 G3

2024年07月21日 小倉競馬場 晴 良 芝 1800m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:アルナシーム

プロフィール

生年月日
2019年04月14日 05歳
性別/毛色
牡/鹿毛
戦績
国内:20戦6勝
総収得賞金
161,642,000円
モーリス
母 (母父)
ジュベルアリ  by  ディープインパクト
馬主
ライオンレースホース (株)
生産者
ノーザンファーム (安平)
調教師
橋口 慎介
騎手
横山 典弘
  • ここには飾り切れない程の重賞馬を育ててきた
    ここには飾り切れない程の重賞馬を育ててきた
  • 以前の厩舎から、人馬共に管理場所を移した
    以前の厩舎から、人馬共に管理場所を移した

 2歳時の東京スポーツ杯2歳S(G2)から、実に9度目となる重賞挑戦。通算20戦目となる中京記念(G3)で、ついにアルナシームは重賞ウィナーの仲間入りを果たした。

 「折り合い面を含めた様々な課題こそありながら、橋口厩舎やノーザンファームしがらきが一つのチームとなって、この課題に向き合ってくれただけでなく、騎乗経験を重ねていく中で、最高のパフォーマンスを示してくれた、横山典弘騎手には感謝しかありません」と満面の笑顔を見せるのは、育成を手掛けてきたノーザンファーム空港の佐々木淳吏厩舎長。アルナシームは佐々木厩舎長が手掛けてきた、ダービー馬のシャフリヤールの近親ともなる。

 「育成厩舎に来た頃はフレームが小さな馬だったので、成長を促しながら調教を進めていこうと思いました。ただ、乗った時の背中の良さや、筋肉の柔らかさは、やはりドバイマジェスティの血統馬だと唸らされました」(佐々木厩舎長)

 その後は順調に調教メニューを消化していただけでなく、運動神経の良さも見せていったアルナシームは、早期入厩の目処も立っていく。

 「馬体の成長はゆっくりながらも、馬体を減らすこともなく、その中でコツコツと調教を積み上げていったような印象があります。馬体重も軽いこともあってか、脚元のトラブルも皆無で、それがレース数を重ねていったことにも繋がったのかもしれません」

 だが、調教を進めていく中で、走りにはどんどん気が入っていくようになった。新馬戦では能力の高さで押し切れたものの、続く東京スポーツ2歳S(G2)で引っかかってしまったレースにも見られたように、気性の難しさが顔をのぞかせるようにもなった。

 「気性面から短い距離を使っていたこともありますが、能力的には中距離まではこなしてくれる馬だと思っていました。以前に騎乗していただいた福永祐一さんと話したことがありますが、『距離は持つ馬だよ』との言葉を思い出して、さすが多くの活躍馬に乗ってきた方は、その馬の未来も言い当てるのだなと思いました」

 4歳の夏にオープン入りを果たしたアルナシームは、その年の秋にリステッドのカシオペアSを優勝。ただ、重賞では人気を裏切るレースが続いていく。

 「同世代で重賞を戦ってきた馬たちが、その後、目覚ましい活躍を見せていたので、この馬も上手く噛み合えば重賞で勝ち負けのレースは出来ると思っていました」

 東京スポーツ杯2歳S(G2)ではイクイノックス、朝日杯FS(G1)ではドウデュースと世代のトップホースとも戦ってきた。その時のライバルたちが、3歳時から頭角を現した一方で、アルナシームは回り道をした感こそあるが、心身ともに成長を果たした中京記念(G3)で、ついに至福の瞬間は訪れた。

 5番人気で臨んだ中京記念(G3)。小倉開催ということで施行条件は変わっていたが、右回りの芝1,800mで4勝をあげているアルナシームにとっては、願っても無い条件だった。

 テーオーシリウスとセルバーグがレースの主導権を奪い合う中、中団からレースを進めたアルナシームは、残り3コーナー過ぎから徐々に進出。直線で前が開くと、横山騎手の手綱に促されるかのように進路を向け、エルトンバローズとの叩き合いを制すると、内から突っ込んできたエピファニーの追撃も振り切っていく。

 「横山騎手は他の馬が動き出した時にも、インコースでじっと構えてくれていました。4コーナーから直線に向けての入り方は、これしかないと思えたような仕掛けでした」

 100点満点と言える騎乗に、アルナシームもしっかりと反応してみせた。

 「デビューから20㎏ほど馬体も増えていただけでなく、その馬体重をキープできるようにもなっています。昨年の函館記念(G3)の後に牧場で調整した時にも、しっかりとした馬になったと思いました。その辺のケアは厩舎やノーザンファームしらがきスタッフのおかげでもありますし、心身ともに完成を迎えつつある今ならば、更に上の条件でもいいレースをしてくれると思います」と佐々木厩舎長はエールを送る。これまで育成を手掛けてきた重賞勝ち馬のパネルを厩舎に飾ってきた佐々木厩舎長であるが、近々、アルナシームのパネルも届くという。

 「蒼々たる活躍馬たちに携わらせてもらったのには感謝しかありません。その中でもアルナシームは、また違った成長を遂げながら重賞にたどり着いてくれましたし、年齢的にも今後の更なる活躍も楽しみです」

 次走は富士S(G2)を予定。マイル戦でも好走を見せてきただけでなく、今の充実ぶりなら重賞連勝も十分に考えられる。