重賞ウィナーレポート

2024年01月13日 愛知杯 G3

2024年01月13日 小倉競馬場 晴 良 芝 2000m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:ミッキーゴージャス

プロフィール

生年月日
2020年04月03日 04歳
性別/毛色
牝/黒鹿毛
戦績
国内:7戦5勝
総収得賞金
87,870,000円
ミッキーロケット
母 (母父)
ミッキークイーン  by  ディープインパクト
馬主
野田 みづき
生産者
ノーザンファーム (安平)
調教師
安田 隆行
騎手
川田 将雅

 現役時に宝塚記念(G1)を優勝したミッキーロケット産駒としては、初めての重賞勝ち馬となったミッキーゴージャス。そして、現役時にオークス(G1)と秋華賞(G1)を制した母ミッキークイーンにとっても、これが産駒では初めての中央重賞勝ち馬となった。

 ミッキーゴージャスに騎乗育成を施したのは、ノーザンファーム空港の中川晃征厩舎長。その中川厩舎長は母ミッキークイーンの背中にも跨っていた。

 「母(ミッキークイーン)は育成時から高い能力を感じていました。3歳時のパフォーマンスが際立っていますが、その後のG1戦線で活躍を見せただけでなく、宝塚記念(G1)、有馬記念(G1)といった牡馬との混合G1でも互角のレースをしてくれました」(中川厩舎長)

 そんなミッキークイーンを、中川厩舎長は古馬になってから大成する馬だと感じていた。

 「クラシック戦線を沸かせてくれましたが、成長力があったからこそ、4歳以降も安定した活躍を見せてくれたのだと思います。繁殖牝馬としてもいい仔を出してくれるとの期待もありましたし、もし、牝馬が誕生したのならば、自分の厩舎で手掛けてみたいとも思っていました」(中川厩舎長)

 2017年の有馬記念(G1)がラストランとなったミッキークイーンは、次の年から生まれ故郷のノーザンファームで繁殖入りする。1番仔にミッキーキング(牡、父ロードカナロア)を誕生させると、2番仔として生を受けたのがミッキーゴージャスだった。

 ただ、現役時は430~440kgの馬体重で競馬をしていたミッキークイーンの育成時よりも、育成厩舎に来た頃のミッキーゴージャスは、更に小柄な馬体をしていた。

 「イヤリングから来た頃は400kgほどの馬体重だったと思います。それだけに馬体の成長も含めて、時間をかけながら進めていかなければと思いました」(中川厩舎長)

 中川厩舎長はミッキーゴージャスの背中に跨った時、母と共通する背中の良さを感じ取った。ただ、その母の同時期と比べると、あまりにもミッキーゴージャスは非力であり、この馬体では持って生まれた高い能力を、競馬では発揮できないとも思えた。

 増えたり、減ったりを繰り返していた馬体が、ようやく身になり始めたと感じたのは、他の育成馬が入厩をするようになっていた、2歳の春から夏にかけての時期だった。

 「この頃には強めの調教を施しても、しっかりと耐えられるようになっていました。我慢をさせた時期は長くなりましたが、この馬も本当に良くなるのは、母のように古馬となってからだと思っていましたし、そのためにも身体ができていないうちから無理をさせたくないとの思いはありました」(中川厩舎長)

 ミッキーゴージャスがノーザンファーム空港を離れたのは、2歳の11月となる。まさに1年以上の時間を中川厩舎長の元で過ごしたが、そこで我慢をさせたことが、結果として実を結んでいった。

 デビュー戦は3歳2月に小倉競馬場で行われた3歳未勝利戦。そのレースだけでなく、中山競馬場での3歳1勝クラスも、上がり最速の脚で駆け抜けていったミッキーゴージャスは、デビュー3戦目にして、母が勝利したオークス(G1)に出走する。

 「送り出した頃の馬体重は440kgほどにはなっていましたが、自信を持ってバトンタッチしたのではなく、ノーザンファームしがらきのスタッフや、管理をしてもらっている安田(隆)厩舎の皆さんに、成長を促しながらお願いしますとの気持ちでした。向こうで成長しているとは聞いてはいましたが、それでも送り出した頃と変わらない440kgの馬体重で競馬に臨んできただけでなく、新馬戦と2戦目のレース内容には驚かされました」(中川厩舎長)

 さすがに初の重賞挑戦がG1出走となったのは敷居が高かったのか、ここでは14着に敗れるも、西海賞の5着を挟んで出走した夕月特別で3勝目をあげると、修学院Sも制してオープン入り。そして、愛知杯(G3)へと挑んでいく。

 「3歳の秋を迎えてからはレース内容を見ても、後々はオープンに入れるだろうと思えるようになっていました。それでも重賞で勝ち負けのレースができるのは4歳の秋といった、まだ先の時期だとも思っていました」(中川厩舎長)

 重賞出走歴がある古牝馬が名を連ねた、今年の愛知杯(G3)。その中で4歳牝馬はミッキーゴージャスだけだった。それにも関わらずファンは連勝の勢いを買って、一番人気の支持を与えた。

 ゲートが開くと、ミッキーゴージャスは中団よりやや後方にポジションを構える。それでも鞍上の川田騎手に促されながらポジションを上げていくと、最後の直線では先頭へと躍り出る。

 ゴール前では追い込んできたタガノパッションに迫られるも、半馬身差振り切っての勝利。ミッキーゴージャスにとっても重賞初勝利であるだけでなく、今年で定年を迎える安田隆行調教師に59勝目となる中央重賞タイトルを授けてみせた。

 「メンバー的にもいい勝負ができるのではないかと思っていましたが、それでも強い勝ち方でした。繁殖牝馬となった母の優秀さを証明できたのも嬉しかっただけでなく、父のミッキーロケットも含めて、野田オーナーの思いが詰まった配合馬であることもまた、嬉しい重賞勝ちとなりました」(中川厩舎長)

 父であるミッキーロケットも初重賞勝ちは4歳の日経新春杯(G2)であり、G1勝ちは5歳時の宝塚記念(G1)となった。こうした血統のバックボーンからしても、成長と共にまだまだ強くなっていきそうなミッキーゴージャスであるが、真に良血が開花した時には、母の勝てなかった古馬のG1タイトルも手にしているのかもしれない。