重賞ウィナーレポート

2023年11月26日 ジャパンC G1

2023年11月26日 東京競馬場 曇 良 芝 2400m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:イクイノックス

プロフィール

生年月日
2019年03月23日 04歳
性別/毛色
牡/青鹿毛
戦績
国内:9戦7勝
総収得賞金
1,756,556,000円
馬主
有限会社シルク
生産者
ノーザンファーム (安平)
調教師
木村 哲也
騎手
C.ルメール
  • 雪が降りしきる中を馬運車から降りてきたイクイノックス
    雪が降りしきる中を馬運車から降りてきたイクイノックス
  • 種牡馬入りの際には、桑田厩舎長やノーザンファームスタッフとの記念撮影も行われた
    種牡馬入りの際には、桑田厩舎長やノーザンファームスタッフとの記念撮影も行われた

 イクイノックスが生涯に戦った10戦の中で、最も速かったのが記録的なレコードを樹立した2023年の天皇賞(秋)(G1)だったとするなら、最も強いレースとなったのが、その年のジャパンC(G1)だったのかもしれない。

 日本最強馬の走りを見るべく、ジャパンC(G1)当日の東京競馬場には8万5,866人の来場者があった。その中には育成を手掛けたノーザンファーム早来の桑田裕規厩舎長の姿もあった。

 「パドックでの状態の良さもさることながら、レースの前からいい枠(1枠2番)を引いたなと思いました。スタートもいい馬だったので、内で包み込まれる可能性も無いと思っていましたし、1コーナーを前々で回っていった時には、あとは無事に走ってくれれば、結果は付いてくると信じていました」(桑田厩舎長)

 ゲートが開いて、まず先手を主張したのはパンサラッサ。2022年の天皇賞(秋)(G1)でも2着に粘り込んだ先行力で、後続との差をみるみる広げていく。2番手はここまでG1で3勝をあげていたタイトルホルダーとなり、イクイノックスは3番手からのレースとなったが、その後ろでは2023年の三冠牝馬リバティアイランドと、2022年の牝馬二冠馬スターズオンアースがしっかりとマークをしていた。

 逃げたパンサラッサは、前半の1000mを57秒6というハイペースで通過していく。ラップに加えて2位以下との着差がターフビジョンに出た瞬間、場内からはどよめきも起こったが、それでも桑田厩舎長に不安は無かった。

 「その瞬間、昨年の天皇賞(秋)(G1)を思い出していました。ただ、その時よりも400m距離も伸びていましたし、そして、その時よりも成長していた今のイクイノックスならば、前を捉えてくれると信じていました」(桑田厩舎長)

 最後の直線。逃げたパンサラッサだけでなく、イクイノックス自身もかなり速いペースで追走しているにも関わらず、ルメール騎手のゴーサインが出ると、そこから更に加速を始めていく。前にいたタイトルホルダーを残り2ハロンで交わし、その前にいたパンサラッサも1ハロン手前で交わしていく。

 そこからはまさに独壇場。後ろにいたリバティアイランドとスターズオンアースが末脚を伸ばしてくるも、そこから更に脚を伸ばしていき、2着のリバティアイランドには4馬身差をつける圧勝。上がり3ハロンの33秒5はメンバー中最速であり、勝ち時計の2分21秒8もまた、過去10年で2番目に速い決着という非の打ち所がない勝利となった。

 「着差、時計と本当に強いレースでした。どこか、歴史的な名馬のレースを目の当たりにしているような気持ちにもなりました。それだけに今回も無事に走り切ってくれることを願っていましたが、勝ったことと同じぐらいに、無事に走り切ってくれたのが嬉しかったです」(桑田厩舎長)

 その後、桑田厩舎長は口取りにも参加している。間近でイクイノックスの姿を見るのは、同じく口取りに参加した、2023年の宝塚記念(G1)以来となったが、その時、関係者と「おめでとう!」と言葉を交わしていく中で、改めて喜びが沸いてきた。

 「ファンの皆さんからの声援も嬉しかったです。改めてこれだけの馬に関われたことに感謝していますし、またイクイノックスのような馬を送り出したいとの気持ちも沸いてきました」(桑田厩舎長)

 このジャパンC(G1)がラストランとなり、12月16日には中山競馬場で引退式が行われた後、18日には種牡馬としての繋養先となる安平町・社台スタリオンステーションに到着。その晴れ姿も桑田厩舎長は牧場のスタッフと共に見届けていた。

 2024年に入ってからも1月9日に行われた「2023年度JRA受賞馬選考委員会」において、イクイノックスは2年連続での年度代表馬と、最優秀4歳以上牡馬を受賞。そして、20日に発表された2023ワールドベストレースホースランキングでも世界最高となる135ポンドのレーティングが付き、99年のエルコンドルパサー(134ポンド)を超えて、日本調教馬の歴代最高値ともなった。

 名実ともに世界最強馬としてスタッドインしたイクイノックスの初年度産駒は、早ければ2027年にデビューを迎える。その産駒たちの中でも、騎乗育成時の父を最もよく知る、桑田厩舎長の元で管理された馬たちが、父を彷彿とさせるような強いレースを見せてくれるはずだ。