重賞ウィナーレポート

2023年11月18日 東スポ杯2歳S G2

2023年11月18日 東京競馬場 晴 良 芝 1800m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:シュトラウス

プロフィール

生年月日
2021年01月24日 02歳
性別/毛色
牡/黒鹿毛
戦績
国内:3戦2勝
総収得賞金
65,014,000円
馬主
(有) キャロットファーム
生産者
ノーザンファーム (安平)
調教師
武井 亮
騎手
J.モレイラ

 東京スポーツ杯2歳S(G2)を制したシュトラウスは、マイルCS(G1)の勝ち馬ブルーメンブラットを母に持つ。繁殖牝馬としても期待をかけられてきたブルーメンブラットであるが、シュトラウスが初めての重賞勝ち馬ともなった。

 「自分がこの血統に関わるのは初めてだったのですが、伊藤(賢)育成主任が厩舎長時代に携わってきた血統馬でもあり、繁殖入りしてからも産駒の動向は常に気になっていたようです」とは育成を手掛けてきた、ノーザンファーム空港の藤波明厩舎長。その伊藤育成主任は常々、母のブルーメンブラットや産駒について、時として闘争心となり、時としては折り合いの不安ともなっていた、前向きすぎる気性を藤波厩舎長にも伝えていた。

 シュトラウスまでに9頭の産駒が中央でデビューしているブルーメンブラットの産駒たちだが、そのうち8頭が勝ち鞍をあげているという安定ぶりながら、オープンでの勝ち馬はフォラブリューテ(紅梅S)とブルメンダール(清秋ジャンプS)の2頭しかいなかった。

 牧場時代から高い評価を集めていたブルーメンブラットの産駒たちは、2歳の早い時期からその評価通りの走りを見せていく。ただ、レースを使われるうちに気性の難しさが出てくるようになり、能力を存分に発揮できないまま引退をする産駒がいたのも事実だった。

 「ただ、シュトラウスは初めて跨った時は気性面の難しさはそれほど感じられなかった一方で、仕上げていくのが大変だと思えた程に動きが重たかった馬でした。それでも他の馬よりは馬格があり、体力面でも優れていたこともあって、早期デビューに向けて仕上げていったのですが、2歳になってからも動きはそれほど変わることなく、気持ちを入れるために、調教では3頭併せの真ん中に入れたこともあります」(藤波厩舎長)

 3月の上旬には管理を行う武井厩舎へと移動。ゲート試験に合格後、ノーザンファーム天栄でデビューに向けての再調整が行われていったが、武井厩舎に戻ってからも、まだ気持ちと身体のバランスを欠くような姿も見られていた。

 「向こうで追い切った時には、スタートしてもっさりとした動きをしていたので、ムチを入れたところ、スイッチが入ったかのように一気に駆けだしていったそうです。こちらではムチを入れることはほとんどなかっただけに、環境の変化がシュトラウスの前向きさを引き出していったのかもしれません」(藤波厩舎長)

 そして迎えた6月のメイクデビュー東京では、スタートも良く2番手を追走していくと、3コーナー過ぎでは早くも先頭へと躍り出る。その後も行きっぷりの良さで後続との差をみるみる開いていくと、2着馬に9馬身差をつける圧勝。一躍、注目を集める存在となった。

 2戦目は重賞のサウジアラビアRC(G3)となった。ここではボンドガールに続く2番人気を集めるも、レース前からの入れ込みもあったのか、後方からのスタートとなり、直線に入ってからもメイクデビューで見せた末脚を発揮できずに3着に敗れる。

 そして迎えた東京スポーツ杯2歳S(G2)。重賞実績では出走メンバーの中でも抜けた存在だったにも関わらず、ここでは4番人気まで評価を落としてしまう。

 「ファンの皆さんも気性面を気にされていたのではと思います。ただ、その不安を払拭できるような強い勝ち方でした」(藤波厩舎長)

 この東京スポーツ杯2歳S(G2)ではまずますのスタートを決めると、道中では行きたがる素振りを見せながらも3番手を追走。最後の直線に入ると、残り1ハロン手前から抜け出しにかかり、最後は追走してきたシュバルツクーゲルを振り切るかのように、1馬身半差を付けてゴール板を駆け抜けた。

 「レースは厩舎の休憩室で見ていたのですが、一緒に応援してくれていた隣の棟の厩舎長も喜んでくれました。芝の中距離まではこなせる馬だとは思いますが、現時点におけるマイル適性の高さからしても、朝日杯FS(G1)もいいレースを見せてくれると思います」と藤波厩舎長。もし、朝日杯FS(G1)をシュトラウスが勝利すれば、厩舎長として手掛けた初めてのG1馬となる。その時も隣の棟の厩舎長だけでなく、多くの関係者から祝福の言葉をかけられることだろう。