重賞ウィナーレポート

2023年11月12日 エリザベス女王杯 G1

2023年11月12日 京都競馬場 曇 良 芝 2200m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:ブレイディヴェーグ

プロフィール

生年月日
2020年04月11日 03歳
性別/毛色
牝/鹿毛
戦績
国内:5戦3勝
総収得賞金
253,876,000円
ロードカナロア
母 (母父)
インナーアージ  by  ディープインパクト
馬主
(有) サンデーレーシング
生産者
ノーザンファーム (安平)
調教師
宮田 敬介
騎手
C.ルメール

 ここまで4戦2勝ながら、ローズS(G2)の2着が最高の順位で重賞はまだ未勝利。それでも、その4戦の中でG1級の能力を感じ取った競馬ファンは、3歳馬のブレイディヴェーグを一番人気に評価した。

 「昨年の優勝馬(ジェラルディーナ)といった古馬や、他にも重賞勝ち馬もいた中で、普通は1番人気にならないだけに、ファンの皆さんからの評価を嬉しく思いました」とは育成を行ったノーザン空港の林寛明厩舎長。厩舎長となってからは2世代目、そして初めてのG1馬がブレイディヴェーグとなった。

 「イヤリングから来たばかりの頃は、かっこいい馬との印象がありました。馴致で跨った時の背中の感触も良く、落ち着いた性格をしていたこともあって、将来は綺麗なフォームで、ゆったりと走る馬になるのではと思っていました」と林厩舎長は当時を振り返る。背中越しにも能力を感じさせていたブレイディヴェーグであるが、林厩舎長の見解と違っていたのは、エリザベス女王杯(G1)までの過去4戦で、全て上がり最速の脚を使えるほどに、切れのある走りをする馬だということだった。

 それが証明されたのは、2歳8月のメイクデビュー新潟。アタマ差の2着に敗れはしたものの、勝ち馬を上回る末脚を使ってみせた。だが、その後に左前脚の剥離骨折が判明。それでも年明け2月の3歳未勝利戦で、2着馬に6馬身差を付ける圧巻のレース内容を見せるも、レース後に次は右前脚に剥離骨折が見つかり、再度、休養を余儀なくされてしまう。

 「2戦目に勝ち上がった時に、改めていいところまで行けると思いましたが、骨折と聞かされた時にはついていないなと思いました」(林厩舎長)

 それでも2度目の骨折からの復帰戦となる、3歳6月の1勝クラスを難なく勝利。その走りを見た林厩舎長は、ブレイディヴェーグが重賞級の能力を持った馬であることを改めて感じ取った。

 「ローズS(G2)も1番人気に支持していただきましたが、自分もここでは勝ち負けのレースをしてくれるだろうとの期待はありました」(林厩舎長)

 ただ、直線勝負にかけたブレイディヴェーグよりも先に仕掛けていたマスクトディーヴァを捉えられずに2着に敗退。その後、秋華賞(G1)に出走したマスクトディーヴァは、三冠牝馬となったリバティアイランドに肉薄した末脚を使っていたように、レベルの高いレースだったと言える。

 「それでも直線での末脚で見せ場を作ってくれました。これだけのレースができるのならば、どこかでタイトルは取れるなと思っていましたが、それがエリザベス女王杯(G1)となるとは思っていなかったです」(林厩舎長)

 桁違いの末脚を使いながらも、落ち着いた性格であることを証明するかのように、これまでのレースで先行、追い込みと多彩な脚質を見せてきたブレイディヴェーグであるが、このエリザベス女王杯(G1)では、煽ったようなスタートを切るも、1枠1番を生かすかのようにインコースを回りながら、終始5番手でレースを進めていく。

 「外周りのレースとなっただけに、この位置でも最後の直線で詰まることはないだろうと見ていました。ただ、4コーナーに入った時には手ごたえが無いのでは?とも見えましたが、直線に入ってからの伸びを見た時には大丈夫だと思えました」(林厩舎長)

 育成時代はトップスピードに入るようなギアが備わっているのかと不安になったほどに、ゆったりと走っていたブレイディヴェーグだったが、ルメール騎手はそのギアをしっかりと探していた。前を行くアートハウスを交わして先頭に躍り出ると、後続馬の追撃も振り切ってのゴール。

 デビュー5戦目での戴冠となったが、これは2022年の天皇賞(秋)(G1)を制したイクイノックスに並ぶキャリア最少タイでのG1制覇ともなる。

 しかも、デビューからそのイクイノックスの鞍上を任されてきただけでなく、同じロードカナロア産駒でG1 9勝馬のアーモンドアイにも騎乗してきたルメール騎手は、レース後の記者会見で、ブレイディヴェーグの能力を「アーモンドアイ級」と高い評価をしている。

 「これも無事にレースを使ってくれた宮田先生や厩舎の皆さんのおかげであり、そして、ノーザンファーム天栄スタッフの管理のおかげです。まだ次走のローテーションは決まっていませんが、いつかは同世代のリバティアイランドと戦うレースもあると思います。競馬ファンの1人としても、その対決は楽しみです」と笑顔を浮かべる林厩舎長。ローズS(G2)のリベンジを果たさなければいけないマスクトディーヴァも含めて、来年の競馬は2020年産まれの牝馬たちの戦いから目が離せそうにない。