重賞ウィナーレポート

2023年10月01日 スプリンターズS G1

2023年10月01日 中山競馬場 曇 良 芝 1200m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:ママコチャ

プロフィール

生年月日
2019年04月05日 04歳
性別/毛色
牝/鹿毛
戦績
国内:13戦6勝
総収得賞金
291,149,000円
クロフネ(USA)
母 (母父)
ブチコ  by  キングカメハメハ
馬主
金子真人ホールディングス (株)
生産者
ノーザンファーム (安平)
調教師
池江 泰寿
騎手
川田 将雅

 白毛一族にまた、G1タイトルがもたらされた。

 その立役者となったのは、白毛ではなく鹿毛の毛色をしたママコチャ。母のブチコはその名の通りに白毛に鹿毛の斑(ぶち)が入った馬でもあるが、半姉のソダシが、この一族らしい白毛だったのに対して、ママコチャは斑となっていた鹿毛が強く出たのだろう。

 ただ、ブチコの繁殖牝馬としてのポテンシャルは、子供たちの毛色の違いにも、なんら左右されることはなかった。

 「ソダシは同じ空港牧場内の別の厩舎で調教されていましたし、その頃から毛色を含めて目立った存在でした。ただ、ソダシが2歳の早い時期から活躍を始める前から、ママコチャもいいところがあると思っていました」とは、スプリンターズS(G1)の勝利が、育成馬で初めてのG1勝利となる橋口敦史厩舎長は話してくれる。

 「ママコチャが育成厩舎に来たのは1歳の夏となりますが、その頃からボリューム感にも表れていたように、筋肉質の馬体をしており、跨った時にも力強さがあって、自分からハミを取ってグイグイ進んでいく走りには、高いスピード能力も感じられました」(橋口厩舎長)

 スタッフ内では「重賞も取れる馬」との評価を得るまでになっていたママコチャであったが、デビューは2歳の6月と早くなったものの、初勝利を挙げたのはデビュー3戦目の2歳未勝利戦。その後も重賞のファンタジーS(G3)、3歳時にはオープンのエルフィンSに出走するも、勝ちきれないレースが続いていく。

 「勝ちきれなかったレースでは、引っかかるような素振りも見せていたように、今から思うと気性面で成長しきれてなかったのでしょう」(橋口厩舎長)

 その後はマイル戦を中心に勝ち鞍をあげていくも、ターコイズS(G3)、阪神牝馬S(G2)と再び重賞の壁に阻まれて敗退を喫する。その後、芝1400mの安土城Sを使った後、更に1ハロン距離を縮めての北九州記念(G3)出走となったが、出走を知らされた時に、橋口厩舎長は当時の育成スタッフの会話を思い出していた。

 「ソダシは芝のマイルから2000mのレースでも結果を残していましたが、ママコチャはマイルから距離を縮めた方がいいかもと話したことあります。その時に『G1で勝つならスプリンターズS(G1)』と冗談交じりに目標を定めていました」(橋口厩舎長)

 初の芝スプリントとなる北九州記念(G3)では、勝ち馬と0秒1差の2着に入着。改めてスプリント適性の高さを証明すると、スプリンターズS(G1)では重賞未勝利だったにも関わらず、3番人気の評価を受ける。

 ただ、これがG1初挑戦とは思えない程に、そのレース内容は圧巻だった。まずますのスタートを決めると、スプリントならではの速い流れを徐々にポジションを上げて行き、最終コーナーを前にして、逃げたジャスパークローネを射程圏内に置く。

 北九州記念(G3)では逃げ切りを許したものの、残り100mで先頭に躍り出ると、内から脚を伸ばしてきたマッドクールとの叩き合いを、ハナ差退けての勝利。G1初挑戦にして初制覇を果たした。

 「道中はライバルたちを封じ込めるような走りを、川田騎手がエスコートしてくれていました。直線に入ってからの行きっぷりも良かっただけでなく、そのまま押し切ってしまうという、まさに横綱相撲と言えるようなレースだったと思います」(橋口厩舎長)

 レースの後、ママコチャの勝利は育成馬では初めてのG1勝利であることを知っていた牧場のスタッフたちから、立て続けに連絡が入ってきた。

 「G1勝利は厩舎長となってからの目標でもあっただけに、皆から祝福されたのは物凄く嬉しかったです。新馬戦を勝利する喜びも、長期休養明けの馬を勝たせる喜びも含めて、関係した馬たちの勝利はレースの格を問わずに全て嬉しいです。だからこそ全ての育成馬をまず一つは勝たせて、その積み重ねとしてまたG1馬を送り出したいという気持ちを、ママコチャが教えてくれたような気がしています」(橋口厩舎長)

 現2歳馬ではサウジアラビアRC(G3)で1番人気の支持を集めて、僅差の2着となったボンドガールも育成馬であり、その他にもこの2歳世代からは将来有望と言える馬たちが続々と勝ち上がっている。何よりもママコチャは、この後も幾つも重賞タイトルを手にしていくだけでなく、その中にはG1タイトルも含まれているはずだ。

 「ママコチャはまだ底を見せてはいないだけに、まずは無事にレースを使ってくれて、そしてG1でもいいレースを見せてくれたらと思っています」と橋口厩舎長はエールを送る。次走は12月23日に行われる阪神C(G2)を予定。スプリントは勿論のこと、芝1400mでも勝ち鞍を残しているだけに、ここでもG1馬らしい走りを期待したい。