2023年07月30日 アイビスサマーダッシュ G3
優勝馬:オールアットワンス
プロフィール
- 生年月日
- 2018年04月24日 05歳
- 性別/毛色
- 牝/鹿毛
- 戦績
- 国内:11戦4勝
- 総収得賞金
- 120,086,000円
- 馬主
- 吉田 勝己
- 生産者
- ノーザンファーム (安平)
- 調教師
- 中舘 英二
- 騎手
- 石川 裕紀人
限られた条件だけに、コースの得手不得手がはっきりと出る新潟芝1000m。この条件で行われる唯一の重賞競走であるアイビスサマーダッシュ(G3)で、一昨年の3歳以来となる勝利を果たしたオールアットワンスは現役屈指の新潟直線巧者とも言える。
昨年のアイビスサマーダッシュ(G3)では6着ともなっており、言わばリベンジを果たした形ともなったが、そこから1年ぶりのレースでの勝利となれば、またその勝利の価値は違ってくる。昨年の秋に右前種子骨靭帯炎を発症したオールアットワンスは、育成を手掛けたノーザンファーム空港牧場へと戻ってきていた。
「昨年の10月に牧場へ戻ってきました。当初は調教もままならず、リハビリをメインに行う厩舎で、患部のケアをしながらウォーキングマシンでの運動を行っていました。年明けの2月に入ってからトレッドミルでの調教を組み込んでいき、育成厩舎で乗り運動を行ったのは3月下旬に入ってからになります」とは中川晃征厩舎長。ただ、リハビリ先の厩舎での管理もあって、脚元の不安はほぼ無くなっていただけでなく、調教を進めてからも問題は出なかったどころか、状態面もどんどん良化を遂げていった。
「年齢的にも成長を遂げていたのでしょうね。みるみる動きだけでなく、馬体も良くなっていきました。4月に入ってから中館先生も調教を見に来てくれたのですが、凄く良くなっていると言ってくださり、その時にアイビスサマーダッシュ(G3)を目標に進めていくことが決まりました」(中川厩舎長)
勿論、新潟芝1000mは勝ち鞍を残している条件ではあった。ただ、一昨年に勝利した時は51kgと斤量に恵まれており、しかも、過去10年でも一年近い休み明けで勝利した馬は1頭もいないどころか、掲示板に入った馬さえいなかった。
「枠も昨年と同じ2枠3番と、決していいところに入ったとは思えませんでした。ただ、プラス18kgとは言えども、決して太い感じは無かっただけでなく、ホー騎手が騎乗できなかったのは残念でしたが、それでも乗り馴れていた石川騎手が手綱を取ってくれたのは、ラッキーだと思いました」(中川厩舎長)
昨年は内枠からのスタートとなったこともあってか、終始インコースでレースを進めたオールアットワンスであったが、今年は真ん中から外枠に入った馬たちが、外ラチの方へ固まっていくと、その後ろに進路を変えていく。
必然的に前には馬群の壁ができるも、オールアットワンスはこれが一年ぶりのレースとは思えない程のステップを踏みながら、僅かな隙間を確実に抜け出していく。直線で先に抜け出したトキメキの後ろに進路を取ると、目の覚めるような末脚を使い、並ぶ間もなく交わしてのゴール。奇跡はここに現実となった。
「来た時の状態からすれば、復帰は奇跡だったかもしれませんが、調整を任してもらった自分たちとしては、いい状態で送り出せたという自信もありましたし、それは中間の調整を行ってくれたノーザンファーム天栄のスタッフも一緒でした。その状態の良さを中館先生や厩舎の皆さんが、更にいい状態に引き上げてくれただけでなく、石川騎手も最高の騎乗をしてくれたのが、この勝利に繋がったと思います」(中川厩舎長)
これでオールアットワンスは重賞を2勝目。幾多の重賞馬を送り出してきたノーザンファームであるが、アイビスサマーダッシュ(G3)を勝ったのはこの馬が初めてであり、この勝利で改めて類を見ないスピード能力の高さを証明する形ともなった。
「タイトルを付けて繁殖牝馬として戻してあげたいと思っていた馬であり、この勝利で更に価値は高まったと思います。そして、復帰に関わってきた自分やスタッフにとっても、その時の経験はかけがえのない経験や、自信にもなったはずです」(中川厩舎長)
2つの重賞タイトルを携えたオールアットワンスは、スプリンターズS(G1)へと出走。意外なことにこれが初めてのG1挑戦ともなるが、そこでも奇跡の走りを見せてくれることを期待したい。