重賞ウィナーレポート

2023年06月04日 安田記念 G1

2023年06月04日 東京競馬場 曇 良 芝 1600m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:ソングライン

プロフィール

生年月日
2018年03月04日 05歳
性別/毛色
牝/青鹿毛
戦績
国内:13戦6勝
総収得賞金
688,550,000円
キズナ
母 (母父)
ルミナスパレード  by  シンボリクリスエス(USA)
馬主
(有) サンデーレーシング
生産者
ノーザンファーム (安平)
調教師
林 徹
騎手
戸崎 圭太

 ヴィクトリアマイル(G1)から安田記念(G1)を制した馬は、過去1頭しかいない。その1頭が牝馬として64年ぶりの日本ダービー(Jpn1)制覇を果たすなど、G1 7勝をあげ、JRA顕彰馬にも選出されたウオッカである。そして今年、ソングラインが史上2頭目の快挙を果たした。

 ソングラインの打ち立てた記録はそれだけではない。そのウオッカ(2008年、09年)と、そしてヤマニンゼファー(1992年、93年)に続いて、史上3頭目となる安田記念(G1)連覇も達成。まさ日本競馬史にその名を残す名マイラーともなった。

 「ヴィクトリアマイル(G1)の後、安田記念(G1)でも取材を受けたいと思っていたら、その目標通りにソングラインが叶えてくれました」とはノーザンファーム早来の佐藤洋輔厩舎長。ただ、一線級の牡馬も出走してきたこの安田記念(G1)は一気のメンバー強化となっただけでなく、決して有利とはいえない大外18番枠からの出走ともなった。

 しかも、良馬場発表ながらも前日から降り続いていた雨が、レース発走時間にも馬場を濡らすあいにくのコンディションともなったが、それでも佐藤厩舎長はソングラインが自分のレースをできたのならば、十分に勝負になると見ていた。

 「ヴィクトリアマイル(G1)では、8枠16番の発走だったソダシが2着に来ていました。今の馬場状態ならば内に入ってごちゃつくよりも、外を回ってきた方がいいのではとも思いました」(佐藤厩舎長)

 ゲートが開くと中団の外目からレースを進めたソングラインは、最後の直線で馬場の外目に進路を向けていく。

 「あまり後ろに置かれていなければと思っていました。ただ、直線に入ってからはヴィクトリアマイル(G1)より、前との差が開いていたので、伸びてくれるのを信じていましたが、戸崎騎手がソングラインの末脚を信じて馬を追ってくれたのが、勝利に繋がったと思います」(佐藤厩舎長)

 上がり33秒1の末脚を使ったソングラインは、前を行くセリフォスを交わし去ると、そのまま先頭でゴール板を駆け抜ける。勝ち時計は昨年の優勝タイム(1分32秒3)を上回る1分31秒4を記録。しかも、ヴィクトリアマイル(G1)の1分32秒2よりも速いタイムでの勝利は、まさに最強マイラーである証ともなった。

 昨年に続き中2週での安田記念(G1)参戦となったソングラインだが、今年はヴィクトリアマイル(G1)との両マイルG1制覇ともなった。佐藤厩舎長は、林徹厩舎の培ってきた管理技術を評価するとともに、このローテーションでも力を発揮できるほどに、力を付けていたソングラインも称える。

 「今年も1351ターフスプリント(G3)からの始動となりましたが、大敗してからも先生の前向きな気持ちは変わりませんでした。調教でもソングラインの能力を信じて、これまで以上に攻めた調教を行った中で、ソングラインもそれに応えてくれたと思います。実況のアナウンサーの方もゴールの瞬間に『文句なし!』と言ってもらいましたが、その通りのまさに完勝だったと思います」(佐藤厩舎長)

 昨年と同じく4番人気での勝利となった安田記念(G1)だが、その時は喜びよりも驚きが勝っていたという。だが、今年の勝利は、佐藤厩舎長にとっては「感動」の一言だった。

 「ヴィクトリアマイル(G1)を勝ったときも感動していました。自分たち育成スタッフは馬に騎乗する仕事をしていますが、他の牧場スタッフや厩舎関係者の皆さん、そして会員の方も含めて、それぞれの立場でソングラインの活躍によって嬉しい気持ちになったり、感動を覚えていると思います。それだけの気持ちにさせてくれている馬たちには感謝しかないですね」

 佐藤厩舎長は調教で自分が跨った馬に「ご苦労様」と声をかけてきたが、その言葉を「ありがとう」に変えた。

 「自分の言葉は伝わっていなくとも、自分の気持ちは伝わっていると思います。ソングラインのような馬に携われたのも奇跡だと思いますし、目の前にいる全ての馬たちも1つでも多くのレースを勝ってくれて、ファンの方も含めた、多くの方に喜んでもらえたら嬉しいですよね」(佐藤厩舎長)

 レース後、陣営はこの勝利で掴んだブリーダーズカップマイル(G1)への出走を表明。昨年は出走を叶えられなかったレースで、2年越しのタイトルを狙っていく。

 「パスポートの準備も去年からできています(笑)。コース体系などは違いますが、左回りのマイルはこの馬にとって最も適した条件だとも思いますし、舞台としては最高だと思っています」(佐藤厩舎長)

 秋は毎日王冠(G2)からの始動を予定。日本馬がブリーダーズカップマイル(G1)を勝てば、勿論、史上初の快挙ともなるが、佐藤厩舎長やスタッフの元から送り出されたソングラインならば、その奇跡も起こしてくれるのではという気がしてきた。