2023年04月16日 留守杯日高賞(GDJ)
優勝馬:ワイズゴールド
プロフィール
- 生年月日
- 2020年03月16日 03歳
- 性別/毛色
- 牝/黒鹿毛
- 戦績
- 国内:12戦2勝
- 総収得賞金
- 23,135,000円
- 馬主
- 馬目 卓
- 生産者
- 樋渡 志尚 (新冠)
- 調教師
- 市村 誠
- 騎手
- 山本 聡哉
『グランダム・ジャパン2023』3歳シーズンの第4戦は、水沢競馬場1600mコースが舞台となる「留守杯日高賞」。岩手競馬の3歳牝馬三冠レース一冠目となるが、グランダム・ジャパンが創設された2010年から対象レースとして全国に開放された。そして昨年のグラーツィアにつづき、今年も大井の所属馬ワイズゴールドが優勝。岩手のリーディングジョッキー・山本聡哉騎手を背にハナを奪うと、直線では後続を突き放して4馬身差。1番人気に応える圧勝で初重賞タイトルをゲットした。
ワイズゴールドの生産者は、新冠町の樋渡志尚(ゆきなり)さん。牧場は、サラブレッド銀座の入り口から東に車を20分ほど走らせた静かな場所にある。志尚さんの祖父である文雄さんが創業し、軽種馬と乳用牛を兼業。引き継いだ信義さんの代では軽種馬専業となった時もあったが、現在は軽種馬と肉用牛を兼業。軽種馬は2代目の信義さん、肉用牛は3代目の志尚さんが中心となって生産を行っている。過去の生産馬には、笠松所属ながらデビューから5連勝で2000年のデイリー杯3歳ステークス(G2)を制したフジノテンビーや、1990年の京王杯オータムハンデキャップ(G3)に勝ったオラトリオなどがいて、藤沢和雄元調教師にJRA初勝利をプレゼントしたガルダンも同牧場の出身馬。地方競馬にも、栄冠賞馬イッキトウセンや高知所属で27勝を挙げたトサノライデンなど多くの活躍馬を送り出してきた。
ワイズゴールドの母キタサンテンニョも樋渡牧場の生産馬。信義さんが他の牧場から購入した米国産馬ソラーラの6番仔にあたる。「ガルチが入っているし、面白い血統だなと思ってね」と信義さんはソラーラを手に入れた理由を明かす。「がっちりしていた」というソラーラと同様、キタサンテンニョも体格に恵まれ、気に入らないことがあると蹴る点も母と似ていたそうだ。現役時代はJRAで22戦して1勝を挙げたのみだったが、「ソラーラの後継に」と信義さんが思い描いていたとおりに引退後は牧場へ戻って繁殖入り。初仔のファッジは園田で1勝、2番仔のシゲルリュウセイは未勝利に終わったが、3番仔のガリバーストームが園田で重賞2勝を含むデビュー5連勝(2022年1月以降休養中)と活躍。そして4番仔のワイズゴールドが今回、留守杯日高賞で重賞馬となった。しかし、受胎率が低かったことから繁殖を引退。ワイズゴールドがキタサンテンニョの最後の産駒となっている。「産駒は4頭しかいないけど、そのうちの2頭が地方の重賞を勝っているんだからえらいよね」と信義さんは目尻を下げる。
気の勝っていた母とは違い、ワイズゴールドは「素直で扱いやすい仔だった。小柄だけど病気もしないし、手のかからない馬だったよね」と信義さんは振り返る。ひとつ上の半兄ガリバーストームが前走時525kgだったのに対し、ワイズゴールドは421kg。牡牝の違いはあるが、兄妹で約100kgも馬体重の差があることについては「アジアエクスプレス(ガリバーストームの父)とレインボーライン(ワイズゴールドの父)の差かもしれないね」と話す。種牡馬選択に関しては「極端な近親交配は避けるように配合を考えて、あとは体形的なものも見て丈夫な仔が生まれるように心がけている」とこだわりを教えてくれた。
ワイズゴールドは2歳6月のデビューから休みなく13戦を走り抜き、そのすべてのレースで5着以内を確保(5月17日現在)。「馬主孝行だよね。重賞を勝った時も最後までもたないかなと思ったけど、最後は離したもんね。余裕のある勝ち方だった」と小柄な体でひたむきに駆けつづける生産馬を褒め称え、「勝ってくれるとやっぱり嬉しい。馬産の喜びというのは成績が出てくれることだから」と笑顔を見せる。手塩にかけた生産馬たちの走りが、信義さんの元気の素となっているようだ。82歳を迎えた生産者は、その瞬間を思いながら今日も馬に寄り添いつづける。