2022年11月27日 ジャパンC G1
優勝馬:ヴェラアズール
プロフィール
- 生年月日
- 2017年01月19日 05歳
- 性別/毛色
- 牡/青毛
- 戦績
- 国内:22戦6勝
- 総収得賞金
- 549,680,000円
- 馬主
- (有) キャロットファーム
- 生産者
- (有)社台コーポレーション白老ファーム (白老)
- 調教師
- 渡辺 薫彦
- 騎手
- R.ムーア
上がり馬というには、その前から堅実な成績を残しており、本格化というには、ダートで大成とはならなかった。ただ、走っている場所が芝に変わっただけで、ヴェラアズールは重賞初制覇から、一気にG1馬へと駆け上がっていった。
ジャパンカップ(G1)のレース当日、白老ファームの吉武幾夫繁殖主任は東京競馬場にいたもののパドックの人の多さに、近くのモニターを通して周回するヴェラアズールの姿を見つめていた。
「画面越しに見ていてもいいなあと思いました。東京コースは脚質的にも合っていると思いましたし、この状態ならば力を出せると思いました」(吉武繁殖主任)
京都大賞典(G2)の優勝後の取材でも、東京コースに行ける適性の高さを期待していた吉武繁殖主任であるが、ジャパンC(G1)と同じ条件で行われたジューンSでも見事な差し脚で優勝。しかも前走の京都大賞典(G2)も含めて、芝2400mでは3戦2勝、3着1回という安定感溢れるレースを見せていた。
ゲートが開くと、戦前の予想通りにユニコーンライオンがハナを奪う。ただ、1000mの通過が61秒1と比較的落ち着いた流れに。馬群が凝縮したまま迎えた最後の直線。その時、ヴェラアズールの姿は1秒ごとに動きを変えていく馬群の中心にあった。
「あの時は無理かなと思いました。ただ、これまでのレースもそうですが、手前を自由自在に変えられるので、ああなった場合でも機敏に左右に動いていましたし、そのうち、隙間を見つけて抜け出してきた時には勝てるのではと思いました」(吉武繁殖主任)
名手ライアン・ムーア騎手でさえ、「前が何度もふさがって行き場を失くしかけた」と話したほどのタイトなレースとなったが、世界の大レースを制してきた腕と勝負勘は、僅かなチャンスを見逃さなかった。その合図にヴェラアズールも即座に反応する。残り100mでシャフリヤールとヴェルトライゼンデの間に入ると更に鋭く伸びて、先頭でゴール板を駆け抜けた。
牧場スタッフと共に関係者席でレースを見ていた吉武繁殖主任は、G1馬となったヴェラアズールを迎えるべく、検量室へと向かう。
「数分前までは想像もしていなかった光景でした。牧場の生産馬では久しぶりのG1制覇でもあり、嬉しさと感動に浸っていたところに、ヴェラアズールが戻ってきてくれました」(吉武繁殖主任)
パドックでは実際に目にできなかったヴェラアズールは、G1を勝ったからなのか、どことなく凛々しく映っていた。
「その姿に改めて凄い馬になったなと思いました。これもムーア騎手のおかげであり、管理をしてくださった渡辺先生や厩舎の皆さん、ノーザンファームしがらきの皆さん、ノーザンファーム空港の皆さんのおかげだと思います」
そう話した吉武繁殖主任は、もう1人、この勝利に無くてはならない騎手の名前をあげた。
「G1の舞台に出られたのは、京都大賞典(G2)を勝たせてくれた松山騎手のおかげです。この場を借りて感謝したいですね」(吉武繁殖主任)
レースの後、有馬記念(G1)への出走が決まったが、そこでコンビを組むのは松山騎手。鞍上を選ぶことなく安定したレースを見せてきたヴェラアズールであるが、その末脚を知っている騎手とのコンビは関係者やファンだけでなく、ヴェラアズール自身にも心強いはずだ。
「渡辺先生に初めてのG1タイトルを授けられたのも嬉しかったです。有馬記念(G1)でも関係者の皆さんと喜び合えるような結果となってくれたらいいですね」と期待を寄せる吉武繁殖主任。上がり馬でも本格化でもなく、まさにスターホースへの道を走り始めたヴェラアズールの勢いは、このまま止まりそうにない。