2022年10月30日 天皇賞(秋) G1
優勝馬:イクイノックス
プロフィール
- 生年月日
- 2019年03月23日 03歳
- 性別/毛色
- 牡/青鹿毛
- 戦績
- 国内:5戦3勝
- 総収得賞金
- 1,756,556,000円
- 馬主
- 有限会社シルク
- 生産者
- ノーザンファーム (安平)
- 調教師
- 木村 哲也
- 騎手
- C.ルメール
3度目のG1挑戦となる天皇賞(秋)(G1)で、ついにG1初制覇を果たしたイクイノックス。育成を担当してきたノーザンファーム早来の桑田裕規厩舎長にとっては、まさに待ちに待ったタイトルともなった。
「2歳時に東京スポーツ杯2歳S(G2)を勝利した時には、クラシックも勝てる馬になると思っていました。そのクラシックでは悔しいレースも続いていただけに、嬉しさと共にホッとした思いもあります」(桑田厩舎長)
その東京スポーツ杯2歳S(G2)を制した後は、皐月賞(G1)に直行するローテーションが取られたものの、その皐月賞(G1)ではジオグリフから1馬身差の2着。日本ダービー(G1)でもドウデュースとはクビ差の2着でタイトルを逃してきた。
「ダービー(G1)の後は両前脚に疲れも出ましたが、その後の経過は良好であり、天皇賞(秋)(G1)への出走を目指して、ノーザンンファーム天栄で調整をされていきました」(桑田厩舎長)
順調に調整されているとの報告は、天栄のスタッフから桑田厩舎長の元にも届いていた。
「天皇賞(秋)(G1)は競馬場へ応援に行きました。2歳時よりバランスの良さはそのままに、ガラリとあか抜けていました。馬体重は日本ダービー(G1)よりも4kg増でしたが、その時よりも一回り身体が大きくなり、フレームも完成に近づいたような印象を受けました」(桑田厩舎長)
その成長した馬体の中でも、桑田厩舎長が特に注目していたのはトモの張りだった。
「以前はトモに頼りなさも見え隠れしていましたが、この張りならば確実に力を発揮できると思いました。枠順もいいところを引いただけに、あとは自分の競馬をしてくれることだけを願っていました」(桑田厩舎長)
ゲートが開くとこれまでのレースと同じく、後方に構えたイクイノックスだったが、その遥か向こうではパンサラッサがハイペースのラップを刻んでいく。
「パンサラッサがあのペースで逃げると思っていなかったですが、イクイノックス自身は落ち着いて走れていたので、ペースに左右されず、折り合いさえついてくれればいいと思いながらレースを見ていました」(桑田厩舎長)
皐月賞(G1)では大外枠からポジションを取りに行った際に、エキサイトした結果、ゴール前での一伸びを欠いた。一方、日本ダービー(G1)はゲートのタイミングが合わず、結果として先に抜け出したドウデュースを捕えきれなかった。
「こうした敗因を木村厩舎の皆さんと、ノーザンファーム天栄のスタッフはしっかりと修正してくれました。ただ、4コーナーを回ってもまだ、その先をパンサラッサが走っていた時には、スムーズに直線を迎えられたとしても、捉えられないのではと考えました」(桑田厩舎長)
前半1000mを57秒4というハイラップで駆けていったパンサラッサは、最後の直線でスピードに陰りは出たものの、それでも十分過ぎるほどのセーフティーリードを有していた。だが、馬場の真ん中に進路を向けたイクイノックスは、そこから加速を始める。
「残り2ハロンでもまだ、パンサラッサとの差はあっただけに、また2着なのかとも思いました。ただ、脚色は良かったので、届け!届け!とエールを送っていたのですが、残り50mで交わしてくれた時には、嬉しさよりもよく頑張ってくれたといった気持ちになりました」(桑田厩舎長)
まさに桑田厩舎長の思いに応えてくれたかのように、イクイノックスは見事な差し切りを決めた。上がり3ハロンの時計はメンバー最速かつ、究極の時計とも言える32秒7。それはこの天皇賞(秋)(G1)において、イクイノックスの心技体全てが整った証明とも言えた。
このレースの後、陣営は有馬記念(G1)への出走を正式に表明。中山コースは皐月賞(G1)で2着となっているように、コース適性の不安も無い。
「距離の心配もしていません。間隔を取ってレースを使えるので状態面の不安もありませんし、また強いレースを見せて欲しいです」
そう話した桑田厩舎長はポツリと、「イクイノックスに携われて良かったです」との言葉を述べる。その言葉は有馬記念(G1)の後にもう一度聞かれるのかもしれない。