重賞ウィナーレポート

2022年11月01日 ラブミーチャン記念(GDJ)

2022年11月01日 笠松競馬場 雨 稍重 ダ 1600m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:ボヌールバローズ

プロフィール

生年月日
2020年05月21日 02歳
性別/毛色
牝/黒鹿毛
戦績
国内:3戦2勝
総収得賞金
50,840,000円
ヘニーヒューズ(USA)
母 (母父)
ジュリエットソング  by  ディープインパクト
馬主
猪熊 広次
生産者
酒井牧場 (浦河)
調教師
福永 敏
騎手
赤岡 修次
  • ボヌールバローズの母ジュリエットソング
    ボヌールバローズの母ジュリエットソング
  • 酒井牧場の放牧地
    酒井牧場の放牧地
  • 酒井牧場生産馬たちの馬霊碑
    酒井牧場生産馬たちの馬霊碑

 『グランダム・ジャパン2022』2歳シーズンの第4戦「ラブミーチャン記念(笠松)」は、大井からの遠征馬ボヌールバローズが1番人気に応えて優勝。ハナを奪ってレースを引っ張ると、最後の直線で後続をさらに引き離し、ゴールでは2馬身半の差をつける快勝。デビュー3戦目にして重賞初勝利を飾った。

 ボヌールバローズの生まれ故郷は、浦河町の酒井牧場。二冠牝馬マックスビューティや、エリザベス女王杯(G1)を制したのちに地方のダート交流重賞を席巻したホクトベガなどを送り出した老舗牧場だ。現役の生産馬では、ダイアトニックが短距離重賞で4勝を挙げ、ジャスティンロックがラジオNIKKEI杯京都2歳S(G3)に優勝するなどの活躍を見せている。

 「ラブミーチャン記念は、牧場のスタッフといっしょにタブレットで観戦しました。デビュー戦が強い勝ち方だったので1番人気にはなりましたが、初遠征なのでメンタル面の不安もありましたし、重賞を勝つのはそれほど甘くないですからね。あくまでチャレンジャーの気持ちでした」と話すのは、同牧場の代表・酒井一馬さん。「道中はずっとドキドキでしたが、先頭でゴールしたのを見届けた瞬間はホッとしました。サマーセールで高評価をいただいた馬ですし、福永敏調教師(大井)も早い時期から大きな期待をかけてくれていましたから、重賞を勝てて本当によかったです。今後がますます楽しみになる勝利だったと思います」とレースを振り返る。

 ボヌールバローズの血統表を見ると、4代母にマックスビューティの名前がある。先述したように1987年の桜花賞(G1)とオークス(G1)を制し、エリザベス女王杯(G1)も2着と牝馬三冠まであと一歩のところまでいった名牝だ。現役引退後に酒井牧場へ戻って繁殖牝馬となり、初仔として産んだマックスジョリーが桜花賞(G1)3着、オークス(G1)3着と活躍。そのマックスジョリーが繁殖牝馬として唯一残した産駒ビューティソングから、ボヌールバローズの母ジュリエットソングや重賞2勝を挙げたココロノアイなどが生まれている。「うちの牧場の代表産駒マックスビューティの牝系ですし、マックスジョリーが1頭だけ残した産駒から奇跡的につながった血統ですから思い入れは深いです。姉妹でもステイゴールドを父に持つココロノアイは気性がきつい面もありますが、ディープインパクト産駒のジュリエットソングは性格も穏やかで扱いやすい母馬です」と、酒井牧場に残ったマックスビューティの血を引く繁殖牝馬2頭を紹介してくれた。

 ヘニーヒューズを交配した理由については、「5歳上の姉シェーンリートがヘニーヒューズ産駒で、2歳の早い時期から南関東で好走をつづけて平和賞でも3着してくれたんです。筋肉質でボリュームがある馬体をしていたので、スピードのあるダート馬を狙ってもう1度ヘニーヒューズを交配しました。ボヌールバローズも5月21日の遅生まれにしては馬格があり、夜間放牧をするうちにしっかりとした筋肉がついてきました」と説明。1歳夏のサマーセールに上場するまで、病気や怪我もなく健やかに育ったそうだ。

 「ココロノアイの時もそうでしたが、マックスビューティの牝系から生まれた馬がこうして活躍してくれると我々のモチベーションも上がります。猪熊オーナーからも『この馬で南関東牝馬クラシックを狙いたい』と言っていただいていますし、無事にレースを迎えてその期待に応える走りを見せてほしいと思います」とエールを送る酒井さん。

 浦河の名門牧場で、脈々とつながれてきた血のドラマ。そのつづきを見られるのが競馬の醍醐味であり、人々の心を引き付けて止まないブラッドスポーツの魅力である。