2022年09月25日 神戸新聞杯 G2
優勝馬:ジャスティンパレス
プロフィール
- 生年月日
- 2019年04月12日 03歳
- 性別/毛色
- 牡/青鹿毛
- 戦績
- 国内:6戦3勝
- 総収得賞金
- 686,878,000円
- 母 (母父)
- パレスルーマー(USA) by Royal Anthem(USA)
- 馬主
- 三木 正浩
- 生産者
- ノーザンファーム (安平)
- 調教師
- 杉山 晴紀
- 騎手
- 鮫島 克駿
2歳時にメイクデビューと黄菊賞を連勝し、ホープフルS(G1)では勝ったキラーアビリティから0秒2差の2着に入着。春のクラシック二冠の皐月賞(G1)と日本ダービー(G1)では結果を残せなかったジャスティンパレスであるが、秋初戦となる神戸新聞杯(G2)を快勝。晴れて、クラシック最後の一冠となる菊花賞(G1)へと臨むことになった。
その日本ダービー(G1)の後、ジャスティンパレスはデビューまでの期間を過ごした、ノーザンファーム空港のB-5厩舎で、秋競馬に向けて英気を養っていく。
「デビューは2歳の9月となりましたが、自分の感覚としてはまだまだ完成が先といった印象がありました。デビューから連勝こそしてくれましたが、人が何かをこの馬に施したというよりも、馬自身のポテンシャルの高さで勝ってくれたような印象も受けていました」とはノーザンファーム空港の伊藤隆行厩舎長。2020年のセレクトセール1歳セッションでも、2億900万円(税込み)と高い評価を集めたように、その血統背景の良さに加えて、品のある馬体もまた活発な取引の声ともなったが、ディープインパクト産駒らしく、育成厩舎に来た時の馬体は430kgほどしか無かった。
「アメリカで誕生した母の仔(Palace Malice)もG1馬となっていますし、そして世代的にも貴重なディープインパクト産駒。クラシックなどで優れた競走成績を残して、次のステージに上げなければいけない馬だと思ってきました。それだけに小さいながらも早い時期にデビューができれば、馬体成長のきっかけになるのではとの考えもありました」(伊藤厩舎長)
春のクラシックで思うような結果が出せなかったのは、上位入着馬たちとの完成度の違いだったとも言える。
「皐月賞(G1)やダービー(G1)の走りを見ていても、身体を使い切れていないような印象を受けましたし、直線ではふらついていました。ダービー(G1)の後は牧場に戻ってきましたが、ダービー(G1)の馬体減(マイナス10kg)に輸送の疲れもあったのか、身体は萎んで見えました」(伊藤厩舎長)
ただ育成時の印象から、完全に休ませるのではなく、動かしながら回復させた方が飼い食いも良くなると分かっていた伊藤厩舎長は、帰ってきてから1週間程で長めの距離の乗り出しを開始。それが刺激となるように新陳代謝もはかられていったジャスティンパレスは見た目だけでなく、動きもまた、日に日に良くなっていく。
「最後の一か月前から速めの調教を始めたのですが、その時にこれまでに感じたことのない反応がありました。杉山(晴紀)調教師にも、「走りが変わってきました」と伝えたように、これなら、いい状態で送り出せるとの思いも出てきました」
この神戸新聞杯(G2)の馬体重は日本ダービー(G1)より4kg増となる452kg。ただ、パドックを周回する姿は、テレビ越しの伊藤厩舎長にも見た目以上に逞しく映っていた。
「筋肉の張りも良かったですし、トモの動かし方も凄く良く見えました。追いきりの時計も良かったですが、やっと動ける身体になったのではとも思えました」(伊藤厩舎長)
レース内容も成長した姿を見せ付けるような強い内容だった。スタートを決めると、インコースの好位でレースを進めていく。勝負どころの4コーナーから動き出し、最後の直線では逃げたリカンカブールの外に進路を向けると、残り1ハロン過ぎから先頭に立ち、後続との差をみるみるうちに広げていく。
「先行しながら折り合って、直線で我慢した末脚を一気に開放していく。いい競馬ができたと思いますし、自分としても理想通りのレースでした」
2着に入ったヤマニンゼストとの着差は3馬身半。まさに完勝というべきレースぶりだったが、この勝利を受けて、陣営は正式に菊花賞(G1)出走を表明する。
「血統的には兄のアイアンバローズも芝の長距離で活躍をしていますし、他の3歳馬も含めて誰もが走ったことのない距離ですが、しっかりと自分の競馬ができればいい結果を出せると思います」(伊藤厩舎長)
菊花賞(G1)を勝利すれば、次のステージである種牡馬の道もはっきりと見えてくる。
「この馬のポテンシャルは凄いですし、それでいながら、まだまだ競走馬として完成しきっていません。その中でも、陣営が思い描いてきたローテーションでレースを戦い、そして、重賞勝ちという最高の結果を残してくれたのは有難いですし、この馬の強みだと思います」と伊藤厩舎長。まさに目標とした三冠最後の一戦となる菊花賞(G1)。それは良血馬が才能を開花させる舞台となるのかもしれない。