重賞ウィナーレポート

2021年10月17日 秋華賞 G1

2021年10月17日 阪神競馬場 晴 良 芝 2000m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:アカイトリノムスメ

プロフィール

生年月日
2018年04月16日 03歳
性別/毛色
牝/黒鹿毛
戦績
国内:7戦4勝
総収得賞金
222,680,000円
馬主
金子真人ホールディングス (株)
生産者
ノーザンファーム (安平)
調教師
国枝 栄
騎手
戸崎 圭太
  • ノーザンホースパークの道沿いにある、1歳馬の放牧地
    ノーザンホースパークの道沿いにある、1歳馬の放牧地
  • 母のアパパネも育成されてきた
    母のアパパネも育成されてきた

 白毛初のG1馬となったソダシに注目が集まった今年の秋華賞(G1)。しかしながら、勝利したのは同じ金子真人ホールディングス(株)の所有馬、そして同じノーザンファームの生産馬であるアカイトリノムスメだった。

 アカイトリノムスメの母は、金子真人ホールディングス(株)の勝負服を来て牝馬三冠制覇を果たしたアパパネであり、そしてノーザンファームの生産馬。それどころか、アカイトリノムスメとアパパネ、そしてソダシの育成調教を手掛けたのは、ノーザンファーム空港の中川晃征厩舎長だった。

 「これだけの馬を任せてくれた関係者の皆さん、特に金子オーナーには感謝しかありません。ソダシもこの夏は牧場で調整を行って札幌記念(G2)を優勝。その意味でも人気に応えるようなレースを期待していましたが、同じぐらいに期待をしていたのが、母も良く知るアカイトリノムスメでした」(中川厩舎長)

 これまで誕生した産駒は全て牡馬だったアパパネが、4番仔にして誕生させた牝馬がアカイトリノムスメだった。育成も母を良く知る中川厩舎長の元で管理されることとなったが、2歳時から大きなタイトルを取れると思えた程の能力が感じられただけでなく、母を彷彿とさせるような成長力もその頃から感じられていたという。

 「2歳、3歳、4歳と年齢を重ねるごとに、更に良くなっていくような印象がありました。3歳の春にクイーンC(G3)を勝ってくれた時には、今の完成度で重賞を勝てたのならば、G1も視野に入ってきたと思えましたし、オークス(G1)の2着は悔しかったと言えども、母に近づくような成績を残せるのではとの期待も膨らみました」(中川厩舎長)

 オークス(G1)の後に調整を行ってきたノーザンファーム天栄の調教主任を務める岡崎謙氏は、育成時のアパパネも良く知るスタッフでもあった。その岡崎氏からは至って順調に来ているだけでなく、更なる良化も伝えられていたと話す中川厩舎長。ぶっつけでの秋華賞(G1)挑戦となったが、状態面の不安は全く無かったと言う。

 「ソダシといった春に結果を出していた馬に並び、そして逆転できるのは、3歳の秋だと思っていました。勿論、どの馬も成長を遂げているとは思いましたが、アパパネを知っているだけに、アカイトリノムスメの成長力は、それを凌駕できるとも思っていました」(中川厩舎長)

 オークス(G1)以来のレースとなった、アカイトリノムスメの馬体重はその時よりマイナス2キロの448kg。しかしながら、パドックを周回する歩様にも表れていたように、その中身はしっかりと、そして逞しさを増していた。

 「岡崎主任からも、春先よりどっしりとした馬になったと聞いていました。いいスタートを切ってくれましたし、道中も折り合いがついていたので、後は直線で伸びてくることを信じていました」(中川厩舎長)

 逃げたエイシンヒテンをマークする形でレースを進めたソダシだったが、最後の直線で馬群に飲み込まれていく。一方、アカイトリノムスメは馬場の真ん中に進路を取ると、母を彷彿とさせるかのような力強い末脚を使い、アンドヴァラナウトやファインルージュの追撃を振り切った。

 この勝利で馬主の金子真人ホールディングス(株)はJRA G1を30勝。そこにはアカイトリノムスメの父であるディープインパクトがあげた7つのG1タイトルだけでなく、中川厩舎長やスタッフが手掛けた、8つのG1タイトルも含まれている。

 「金子オーナーにあやからせていただいたタイトルだとも言えます。それだけに金子オーナーの所有された牡馬、牝馬の三冠馬同士という夢の配合である、アカイトリノムスメには活躍して欲しいと思ってきましたし、そのドラマの中に自分たちも参加できたこともまた、嬉しかったですね」(中川厩舎長)

 勿論、ソダシも金子真人ホールディングス(株)の所有馬、こちらも白毛馬として、数々の記録を打ち立ててきた、まさにドラマティックな馬と言える。

 「ソダシも負けたレースから、何かを掴み取ってくれていると思いますし、この経験を糧に、次はどんなレースを見せてくれるかも楽しみです。いずれにせよ、この世代は凄い馬たちに携わらせてもらえたと思っています」(中川厩舎長)

 アカイトリノムスメの次走はエリザベス女王杯(G1)を予定。このレースはアパパネが2度に渡って挑戦しながら、勝つことのできなかったG1レースでもある。

 「アカイトリノムスメには、母の無念を果たしてもらいたいとの思いがあります。母と同様に3歳時は勝てなくとも、来年は更に良くなっていると思いますし、繁殖牝馬となった母の価値を更に高めてもらいたいです」

 そう話した中川厩舎長は、「将来的にはアカイトリノムスメの娘で、母や祖母の勝ったG1を勝つのが目標です」とも力強く話す。まだまだ続く血統のストーリーであるが、まずは今年、アカイトリノムスメに母の果たせなかったエリザベス女王杯(G1)制覇を叶えてもらおう。