重賞ウィナーレポート

2021年06月09日 東京ダービー(DS2021)

2021年06月09日 大井競馬場 晴 良 ダ 2000m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:アランバローズ

プロフィール

生年月日
2018年02月08日 03歳
性別/毛色
牡/鹿毛
戦績
国内:8戦6勝
総収得賞金
170,000,000円
ヘニーヒューズ(USA)
母 (母父)
カサロサーダ  by  ステイゴールド
馬主
猪熊 広次
生産者
大狩部牧場 (新冠)
調教師
林 正人
騎手
左海 誠
  • アランバローズの母カサロサーダと今春生まれた当歳馬
    アランバローズの母カサロサーダと今春生まれた当歳馬
  • アランバローズの母カサロサーダ(8歳)
    アランバローズの母カサロサーダ(8歳)
  • アランバローズの半弟(牡当歳、父ファインニードル)
    アランバローズの半弟(牡当歳、父ファインニードル)
  • 大狩部牧場の放牧地
    大狩部牧場の放牧地

 『ダービーシリーズ2021』の第3戦「東京ダービー(大井)」は、1番人気に推されたアランバローズが逃げ切り勝ち。南関東クラシック一冠目の羽田盃は惜しくも2着に敗れたが、一世一代の大舞台でその雪辱を果たすとともに、2歳チャンピオンとしての矜持を取り戻した。

 アランバローズの生まれ故郷は、新冠町の大狩部牧場。2018年には生産馬のクロスケとクリスタルシルバーが黒潮盃(大井)でワンツーして話題をさらい、昨年は京成杯(G3)をクリスタルブラックが優勝。中央にも地方にも多くの活躍馬を送り出している生産牧場だ。「レースはスタッフといっしょに牧場のテレビで観ていました。距離を不安視する声もありましたが、前走(羽田盃)のようにイレ込んではいなかったですし、向正面でうまく息が入ったので最後までもつと信じていました。左海騎手も上手く乗ってくれたと思います」とレースを振り返ってくれたのは、大狩部牧場の渡邉隆夫社長。獣医師でもある渡邉社長は名門・インターナショナル牧場で場長を長年務め、数々の名馬を送り出してきた経歴を持つ。それでも今回のダービー制覇は特別に嬉しかったそうで、「長くこの世界にいますが、やはり“ダービー”の重みは格別です」と感慨深い表情で話してくれた。

 アランバローズの母カサロサーダはノーザンファームの生産馬で、その父はステイゴールド。JRAで2歳新馬戦を快勝したものの、4戦したのみで早々に引退。2017年秋のジェイエス繁殖セールにヘニーヒューズの仔を宿した状態で上場され、池田喜吉オーナーによって落札されている。「母のカサロサーダは、池田オーナーといっしょに繁殖セールへ行って購入してきた預託馬なんです。南米の牝系にステイゴールドですから、面白い血統の繁殖牝馬だと思いました」と母馬について説明する。

 「翌年生まれた初仔は小柄で、父ヘニーヒューズのような筋骨隆々という感じの馬体ではありませんでした。皮膚が薄く、トモも発達していたので良い馬だとは思っていましたが、同期の馬たちと比べても特別に目立つ存在ではありませんでした」とアランバローズが牧場で過ごした時代を思い出す。「オーナーから売ってほしいとお願いされていたので、1歳夏まで育ててサマーセールに上場しました。我々もそうですが、オーナーもまさかこれほど走るとは夢にも思わなかったのでしょうね。その後に生まれた仔は、オーナー自らが所有されています。今年はアランバローズと同じヘニーヒューズを交配しました」と話す。

 そのサマーセールで、“バローズ”の冠で知られる猪熊広次氏が落札。浦河町の山口ステーブルへ移動し、育成が施されることになる。「育成場にいる時から『ヘニーヒューズ産駒の凄いのがいる』と評判になり、船橋の厩舎へ移動してからは『バケモノが出た!』と知り合いの調教師から私のところに連絡が来るほどでした。一気に素質が開花したようですね」とアランバローズがデビーするまでの道のりを教えてくれた。

 アランバローズは評判通りの走りを見せ、デビュー戦と2戦目を地元・船橋で圧勝したのちに、ゴールドジュニア(大井)、ハイセイコー記念(大井)と2歳重賞を連勝。そして全日本2歳優駿(Jpn1・川崎)で並み居るJRA勢を退け、不敗の5連勝で2歳チャンピオンに輝いた。休み明け3歳初戦の京浜盃(大井)でデビュー以来初の黒星を喫したが、羽田盃(大井)2着で復活の兆しをつかみ、今回の東京ダービー(大井)で南関東3歳馬の頂点に上り詰めた。「2歳チャンピオン、そして今回はダービー。年間25頭前後の生産馬の中から、これほどの馬を送り出せたことを誇りに思います」とアランバローズの活躍に感謝して目を細める。

 母カサロサーダは今春、父ファインニードルの牡馬を出産。母にぴったりと寄り添いながら、放牧地で元気いっぱいに育っている。「今年の当歳は母の4番仔になりますが、兄姉と比べても1番馬体が良いですね。父がファインニードルですから、芝のスピード馬に育っていってほしいと願っています」と、渡邉社長はアランバローズの半弟にも大きな期待を寄せている。

 アランバローズの次走は、7月14日(水)に大井競馬場で行われる真の3歳ダート王決定戦「ジャパンダートダービー(Jpn1)」となりそうだ。「強い相手と戦うことになりますが、2歳時にはJRA勢を退けて頂点に立ちましたので、今回も自分の競馬をして頑張ってほしいと思います」とエールを送る渡邉社長。船橋競馬からはアブクマポーロ、アジュディミツオー、フリオーソ、そして現役馬のカジノフォンテンなど、中央馬相手に一歩も引けを取らない名馬が多数輩出されてきた。アロンバローズの未来にも、そんな先輩たちが見てきた輝かしい世界が広がっていそうだ。