重賞ウィナーレポート

2021年05月30日 日本ダービー G1

2021年05月30日 東京競馬場 晴 良 芝 2400m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:シャフリヤール

プロフィール

生年月日
2018年04月13日 03歳
性別/毛色
牡/黒鹿毛
戦績
国内:4戦3勝
総収得賞金
603,847,000円
ディープインパクト
母 (母父)
ドバイマジェスティ(USA)  by  Essence of Dubai(USA)
馬主
(有) サンデーレーシング
生産者
ノーザンファーム (安平)
調教師
藤原 英昭
騎手
福永 祐一
  • イヤリングのステージで管理される未来のダービー候補生たち
    イヤリングのステージで管理される未来のダービー候補生たち
  • ダービー2着馬のエフフォーリアも、ノーザンファーム空港育成馬となる
    ダービー2着馬のエフフォーリアも、ノーザンファーム空港育成馬となる

 2018年に誕生した3歳世代のサラブレッドの数は7398頭(輸入馬含む)。その頂点を決める2021年の日本ダービー(G1)を制したのは、ノーザンファームの生産馬であるシャフリヤールだった。

 「日本ダービー(G1)はこの仕事をしていく上での1つの目標でした。しっかりと牧場で育てて、なおかつ、競馬場で様々な経験や、成長を遂げた馬が勝てるレースだと考えていましたし、一度はダービー馬に携わるという経験をしてみたいとも思っていました」と話すのは、シャフリヤールの育成に携わってきた、ノーザンファーム空港の佐々木淳史厩舎長。ノーザンファームに入社して16年。厩舎長となってからは6年となる佐々木厩舎長であるが、その6年の間には、育成を手掛けたサトノダイヤモンド、そしてスワ―ヴリチャードが2着と、惜しいレースも続いていた。

 「日本ダービー(G1)は届きそうで届かないレースでした。これまでは悔しい思いをしてきましたが、結果は僅差だったとはいえ、今までこの仕事を頑張ってきて良かったと思えるような勝利でした」

 デビューから4戦目での日本ダービー(G1)制覇は、96年のフサイチコンコルドに続く、史上2位の快挙。しかも勝ちタイムの2分22秒5はレースレコードであり、全兄アルアインも、現役時は皐月賞(G1)と大阪杯(G1)を優勝。まさにエリートホースと思えるバックボーンを持つものの、毎日杯(G3)の後で佐々木厩舎長に話を聞いた時には、全く別の評価が聞かれていた。

 「イヤリング厩舎からこちらに来た頃の馬体重は400kgを切っていました。調教を進めていくというよりも、成長を促していくような管理をしてきましたが、結果的には当時のシャフリヤールにとって、何がベストかと言う判断ができたと思います。それを尊重してくださった、藤原(英昭)先生。そして、こちらのイメージを共有しながら、成長させてくれた藤原厩舎の皆さんや、ノーザンファームしがらきスタッフにも感謝しかありません」

 毎日杯(G3)の後の調整を行ってきたノーザンファームしがらきのスタッフからも、ダービー(G1)に向けて更に良化していく、シャフリヤールの話が聞こえていたと佐々木厩舎長は話す。

 「レースの疲れを取ってもらっただけでなく、限られた期間の中で、いい状態まで持ってきてくれたと思います。肉体面だけでなく、精神面も成長を遂げていたのが、レース内容にも表れていたと思います」

 勝負どころの4コーナー。後方に位置取っていたシャフリヤールの姿を見た時に、佐々木厩舎長はまた、日本ダービー(G1)は届かないタイトルだと思った。

 「最後の直線でも進路を探していた時には、正直苦しいと見ていました。ただ、前が空いてからの伸びを見た時に、もしかしたらと思うようになり、最後の一ハロンではTVの画面に向かって叫びながら、必死になって机を叩いていました」

 ゴールの瞬間は勝ったかどうかの判断はできなかった。ただ、その後にゴール前のスロー映像が流れると、それを待ち望んでいたかのように、一気にスマホのあらゆる着信音が鳴り始めた。

 「ほんの少しだけ運が味方してくれたのかなと思いました。でもそれは、藤原先生や厩舎の皆さん、そしてノーザンファームしがらきスタッフや、自分の厩舎スタッフといった、馬に跨ってきた人間だけでなく、イヤリングスタッフ、繁殖スタッフと、シャフリヤールに関わった全てのステージのホースマンの思いや努力が実を結び、それが勝利へと繋がったのでしょう。皆さんにはおめでとうというよりも、感謝しかありません」

 2歳戦も始まり、次々と牧場を離れている育成馬たち。その中には佐々木厩舎長が管理するB-5厩舎の育成馬もいる。

 「自分のステージで、馬にしてあげられることは何かを、常に考えています。その中には優れたポテンシャルを持った馬や、先々が楽しみになるような将来性の豊かな馬もいます。デビュー後は様々なホースマンの力を借りながら、個々の馬の成長に合わせた活躍を残していくと思いますが、その中から、日本ダービー(G1)に出走できる馬が何頭も出てきて欲しいですし、来年以降の日本ダービー(G1)に勝つためにも、今後も1頭でも多くの管理馬を出走させたいです」と佐々木厩舎長は力強く話す。第88回日本ダービー馬の称号を得たシャフリヤールも、底知れぬポテンシャルと、この血統らしい成長力で、今後、佐々木厩舎長や関わったホースマンたちに、更なる喜びを届けてくれるのだろう。