重賞ウィナーレポート

2021年04月24日 福島牝馬S G3

2021年04月24日 新潟競馬場 晴 良 芝 1800m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:ディアンドル

プロフィール

生年月日
2016年02月14日 05歳
性別/毛色
牝/黒鹿毛
戦績
国内:16戦6勝
総収得賞金
179,883,000円
ルーラーシップ
母 (母父)
グリューネワルト  by  スペシャルウィーク
馬主
有限会社シルク
生産者
ノーザンファーム (安平)
調教師
奥村 豊
騎手
団野 大成

 スプリンターから中距離馬への見事な転身。言葉でいうと簡単なように思えるが、そもそも、ディアンドルはデビュー戦から3歳8月の北九州記念(G3)までの7戦の全てで、芝1200mの条件に出走。うち5勝2着2回という、スプリンターとしてほぼ完璧な成績を残している。

 スプリンターとして必要なスピード能力は、競走馬として必要不可欠な能力と言えるが、速い流れのレースに対応できる前向きな気性は、距離が伸びた時にデメリットともなりうる。それまで3歳時のスプリンターズS(G1)で13着に敗れてからは、緊張の糸が切れたかのように敗戦が続き、距離を一ハロン伸ばした京都牝馬S(G3)、安土城Sでも二桁着順に敗退。

 しかしながら、その年の10月に初の芝マイル戦となるポートアイランドSに出走したかと思えば、芝2000mのアンドロメダS、愛知杯(G3)と一気に出走する距離を伸ばしていく。

 昨年の安土城SからポートアイランドSまでの約4か月。その期間のほとんどを、ディアンドルは、育成先でもあったノーザンファーム早来で過ごしている。ここに、スプリンターから中距離馬へと生まれ変わった秘密が隠されていた。

 「これまでは芝のスプリントで結果を残してきましたが、育成時の印象としては、距離を伸ばしても対応できるのではとも思っていました」と話すのはノーザンファーム早来の村上隆博厩舎長。1つ下の半弟となるミエノワールドがダートながらスプリントで2勝。近親にはデイリー杯2歳S(Jpn2)の優勝馬であるシェーンヴァルトの名前も見つけられるスピード血脈ながらも、ディアンドルの母であるグリューネワルトは、晩年は芝のスプリント戦線に戦いの場を移したものの、初勝利をあげたのは芝1800mの条件。しかも父は芝中長距離で多くの活躍馬を送り出しているルーラーシップであり、距離延長に対応できる血統背景を持ちあわせていた。

 「こちらに来る前には、先生からも距離を伸ばしてみたいとの連絡を受けていました。ただ、気持ちが前向きになっていたこともあり、調教では厩舎でも一番のベテランスタッフに乗ってもらっていました」

 そのベテランスタッフは育成時に数多くのG1馬に跨ってきただけでなく、山元トレーニングセンターに勤務していた時代には、現役馬の調整も任せられていた。まさに的役と言えるその技術の高さで、馬をコントロールしていくうちに、その走りはスプリンターから中距離馬へと変わっていった。

 「時には放牧地につれていくなど、精神的にもリラックスさせるように努めました。自分たちがやってきたことを、ノーザンファームしがらき、そして、奥村(豊)先生や厩舎スタッフの皆さんも引き継いでくれたことが、今の走りに繋がったと思います」

 先手を奪ったアンドロメダSと愛知杯(G3)では、思うような結果は出せなかったものの、芝1800mで行われた小倉大賞典(G3)では2番手でレースを進めると、4コーナーで先頭に立ち、そのまま粘りこんで3着。そして、この福島牝馬S(G3)では行く馬がいないと見るや、団野騎手の好判断で自らレースを作りに行く。

 折り合いの付いた走りで、1000m通過が1分0秒6というスローペースに落とし、後続が迫ってきた残り3ハロンを過ぎてからゴーサインを出すと、そこからしぶとく脚を伸ばす。最後はドナアトラエンテの猛追をハナ差振り切って、2019年5月の葵S(重賞)以来となる勝利をあげた。

 「元々力のある馬だと思っていましたし、それがこの条件でも証明できたことが本当に嬉しいです。昨年、牧場から送り出した時には、馬体も充実していて、改めて成長力も感じられましたし、その成長のままに、更なる重賞タイトルを期待したくなります」

 次走は優先出走権を得たヴィクトリアマイル(G1)への出走を表明。福島牝馬S(G3)と同じ左回りのコースで、折り合いのついたレースができるようならば、あれよあれよの押し切りも十分に考えられる。