2015年06月10日 関東オークス(中央交流) Jpn2
優勝馬:ホワイトフーガ
プロフィール
- 生年月日
- 2012年03月28日 03歳
- 性別/毛色
- 牝/芦毛
- 戦績
- 国内:7戦4勝
- 総収得賞金
- 291,415,000円
- 馬主
- 西森 鶴
- 生産者
- 梅田牧場 (荻伏)
- 調教師
- 高木 登
- 騎手
- 大野 拓弥
『グランダム・ジャパン2015』3歳シーズンの最終戦「関東オークス(Jpn2)」は、2番人気のホワイトフーガが1周目のスタンド前で早くも先頭に立つと、終始楽な手応えでレースを引っ張り、最後の直線では見る見る間に後続を引き離して大差勝ち。2着馬に2.3秒もの差をつける圧勝で、嬉しい重賞初勝利を飾った。
ホワイトフーガの生まれ故郷は、浦河町荻伏の梅田牧場。もともとは稲作と乳牛を飼う兼業農家だったが、2代目の梅田和義さんの代にサラブレッド生産に切り替え、1978年に法人化。現在は将来の3代目・幹也さんご夫婦が中心となり、ご両親とパートさんを含めた5人で、繁殖牝馬9頭、1歳馬7頭、当歳馬5頭を管理している。
生産馬の重賞勝利は、2008年の京王杯2歳S(Jpn2)を制したゲットフルマークス以来、約7年ぶり。その歓喜の瞬間をご夫婦揃って現地で味わったという梅田幹也さんは、「夫婦そろって生産馬の応援に行くことはめったにないのですが、たまたま種付けのスケジュールが空いたので、急遽いっしょに川崎競馬場へ行くことにしたんです。もともと2100mは少し長いかもと思っていましたし、早々と先頭に立ってしまったので差されるんじゃないかと心配して見ていましたが、僕たちが考えている以上に強かったですね。ホワイトフーガしか見ていなかったので着差までは分からず、“あれ? 本当に勝っちゃったの?”と半信半疑のような気持ちでした」とゴールのシーンを振り返る。「馬主さんの代理で表彰式にも参加させていただき、本当に嬉しかったです」と、夢見心地の夜を思い出してくれた。
ホワイトフーガが生まれた当時のことを伺うと、「実は、大変だったんです」と梅田さんは切り出した。「ホワイトフーガが生まれる3~4日前に、母のマリーンウィナーが腸捻転を起こしてしまったんです。幸い手術は成功し、クリニックに入院したまま出産を迎えました。母仔ともに無事だったのですが、そんな状態だったので初乳を飲ませることができず、免疫力をつけるために血漿輸血を行ったんです。いろいろと心配しましたが、仔馬は元気に育ち、母馬も順調に回復してくれました。この生命力の強さが、今の活躍につながっているのかもしれませんね」と、ホワイトフーガ誕生の秘話を教えてくれた。
ジェイエス繁殖セールで購入したマリーンウィナーは、とてもおとなしい性格で、いっしょに放牧している当歳馬たちが慕ってまわりに集まってくるほど優しい母馬だそうだ。3番仔の配合相手にクロフネを選んだ理由については、「クロフネ産駒の成功パターンに、マリーンウィナーの血統がピッタリとハマったんです。名牝グロリアスソングからつながる血統をぜひとも残したいと思っていましたので、牝馬が生まれてくれたのは狙い通りでした」と話す。生産者には共通の意識だとは思うが、梅田さんの配合に対するこだわりは相当のものだ。「私たちのような家族経営の牧場が大手牧場さんに対抗するには、そこに懸けるしかないですから」と、笑顔のなかにも強い意志を感じさせる口調で語ってくれた。
1歳夏まで牧場で過ごし、新冠町のキタジョファームで育成されることになったホワイトフーガ。「よくここまで強くなった」と育成者の北所さんも感心するほど、当時は脚元が弱くてケアが大変だったそうだ。「誕生の際のアクシデントを乗り越えたこともそうですが、キタジョファームさんや高木登厩舎の皆さんが一生懸命にケアしてくれた結果、すべてが良い方向へ向かったのだと思います」と話し、ホワイトフーガに関わったすべての人に感謝する梅田さん。
現在、ホワイトフーガの半弟にあたる1歳馬(父シンボリクリスエス)が牧場にいて、仲間の馬たちと放牧地を元気に駆けまわっている。2歳の半妹(父ベーカバド)はデビューに向け、育成が施されている最中だそうだ。姉の重賞勝利を受け、妹弟に対する梅田さんの期待も高まっていることだろう。
「牝馬の重賞を獲って、その馬の仔で活躍馬を出したいというのがひとつの目標でした。今後も無事に競走生活を送り、ホワイトフーガが牧場へ戻ってくる日を楽しみにしています」とエールを送り、未来の配合を考えながら目を輝かせる梅田さん。ホワイトフーガの次走は、新潟のレパードステークス(G3)か、門別のブリーダーズゴールドカップ(Jpn3)のどちらかになるそうだ。「同世代の牡馬相手、または古馬の牝馬相手となりますが、いずれにしてもどれぐらいやれるか楽しみです」と期待を膨らませる。芦毛の女傑伝説は、まだ始まったばかりだ。