2013年09月02日 ビューチフル・ドリーマーC(GDJ)
優勝馬:シャイニングサヤカ
プロフィール
- 生年月日
- 2007年02月15日 06歳
- 性別/毛色
- 牝/黒鹿毛
- 戦績
- 国内:30戦3勝
- 総収得賞金
- 22,736,000円
- 馬主
- 伏木田 達之
- 生産者
- 伏木田牧場 (荻伏)
- 調教師
- 田中 淳司
- 騎手
- 岩橋 勇二
水沢競馬場で行われた『グランダム・ジャパン2013』古馬シーズンの第5戦「ビューチフル・ドリーマーカップ」には、シリーズ優勝を狙う強豪馬が全国から集まった。南関東競馬からは、昨年の関東オークス(Jpn2)を制するなど重賞6勝の実績馬アスカリーブル。またホッカイドウ競馬からも、道営クラシック三冠を含む重賞8勝馬クラキンコ、道営記念を含む重賞7勝馬ショウリダバンザイなどが参戦。それら遠征馬が人気を集めるなか、見事に勝利を収めたのはホッカイドウ競馬からの第3の刺客シャイニングサヤカだった。好スタートからハナを奪ってマイペースに持ち込み、水が浮くような不良馬場も味方につけ、猛追してきたアスカリーブルとの叩き合いを制して嬉しい重賞初勝利を成し遂げた。
シャイニングサヤカの生まれ故郷は、浦河町姉茶の伏木田牧場。一昨年のNARグランプリにおいて、生産馬であるオオエライジン&エンジェルツイートの兄妹が各世代の最優秀馬に選出され、大きな注目を集めたのは記憶に新しい。創業は明治35年と古く、その長い歴史の中で、1964年の天皇賞(秋)&有馬記念を連勝したヤマトキヨウダイや、1976年の菊花賞4着馬コーヨーチカラ(優勝馬はグリーングラス)、1986年の鳴尾記念(G2)を制したロンスパークなどが誕生してきた。また馬主としても、同牧場先代の伏木田達男氏が、デビューから無敗で秋華賞(G1)とエリザベス女王杯(G1)を制した名牝ファインモーションを所有していたことでも広く知られる。現在、牧場には9頭の繁殖牝馬がいて、ご家族とスタッフ1名でその世話に当たっている。
「最高に嬉しい勝利です。最近、勝てないまでも門別で良い内容のレースを続けていたので、今回も密かに期待してたんですよ。補欠からの繰り上がりで出走できるようになった強運もありましたしね(笑)。サヤカは馬体を併せると強さを発揮するので、最後に並ばれた時はむしろチャンスだと思いました。ホッカイドウ競馬へ移籍してからずっと岩橋勇二騎手に乗ってもらっていますので、その辺を熟知したうえでの好騎乗だったと思います」と満面の笑みを浮かべて愛馬の勝利を振り返るのは、同牧場の伏木田修さん。当日はリニューアルオープンしたばかりのAiba浦河で、奥様とレースを観戦していたそうだ。
「長らく手をかけている血統なので、サヤカに対する思い入れは強いんです」と感慨深く話す伏木田さん。シャイニングサヤカにとって4代母にあたるフシミエースからその歴史は始まり、曾祖母チヨウコーピート(中央5勝)、祖母ピンクノワンピース(中央2勝)、母シンセイアカリ(中央2勝)と40年以上の年月をかけて大切につないできた牝系。そのファミリーからは、兵庫チャンピオンシップ(G2)を制し、ダービーグランプリ(G1)でも3着と健闘したメイショウムネノリが誕生している。
「この血統は見た目のきれいな馬が多く、動きも良くて育成・調教の時点から目立つんです。サヤカも線のきれいな馬で、母に似ておとなしく、とても扱いやすい馬でした」と、シャイニングサヤカの幼少期を振り返る伏木田さん。順調に成長を遂げ、1歳時にHBAサマーセールへ上場。262万5,000円(税込)で落札され、加藤ステーブルでの育成を経て、3歳2月に美浦・小島茂之厩舎からデビューした。中央競馬で5戦したが勝利を挙げることができず、3歳秋に兵庫競馬へ移籍。2勝を挙げて中央競馬へ再転厩したものの500万クラスを突破することができず、今年からホッカイドウ競馬の田中淳司厩舎で仕切りなおすことになった。そして門別での成績は4着→3着→4着→2着→3着。前走の重賞ノースクインCでは、ホッカイドウ競馬の牝馬路線を牽引しているクラキンコ、ショウリダバンザイとタイム差なしの3着に入り、一躍注目を集める存在となった。
「惜しい競馬が続いていましたから、いつか結果を出せると信じていました。門別での競馬もずっと見ていて、牡馬を相手にしてもよく走っていましたし、水も合っていると感じていました。今回の補欠から繰り上がりでの優勝、グランダム・ジャパン古馬シーズンでもアスカリーブル、メーデイアと並んで1位につけるなど、すべてがサヤカにとって良い方向に動いてきたと思います。そして、信じ続けてきた彼女の能力を証明できたことが、何よりも嬉しいです。本当に大きな1勝ですね」と愛馬の頑張りを讃える伏木田さん。ホッカイドウ競馬へ移籍する前には、そのまま繁殖入りさせることも頭を過ぎったと言うから、その思いの強さは計り知れないものがある。
そして、今回の勝利には伏木田さんの胸を熱くさせる要因がもうひとつある。母のシンセイアカリが、今年の出産を終えたあとに生命を落としてしまったのだ。残された当歳馬(牡、父プリサイスエンド)には乳母がつき、今のところ何の問題もなくすくすくと育っているそうだ。「今回のレースは天国にいるアカリが、サヤカの背中を押してくれたのかもしれませんね」と、放牧地を元気に走り回る当歳馬を遠めに見ながら空を見上げる伏木田さん。
1歳にも父フォーティナイナーズサンの牝馬がいて、将来はシャイニングサヤカと共に、この牝系をのばしていってくれる存在となってくれることだろう。「1歳は筋肉が発達してきて、グラマーな牝馬になってきました。当歳はサヤカに似ていて、姿や動きのきれいな馬です。来年の1歳セール上場を検討しています」と妹弟を紹介してくれた。
シャイニングサヤカは、グランダム・ジャパン古馬シーズンチャンピオンを目指して、シリーズ最終戦のレディスプレリュード(Jpn2)(大井)へ挑戦する予定だ。「また強い相手との対戦になりますが、シリーズ優勝も懸かっていますし、1つでも上の着順に来て欲しいという気持ちです。重賞を勝ったことでブラックタイプも濃くなりましたし、繁殖牝馬としても期待は膨らみます。まずは無事に、レースを走り切って欲しいですね」と愛馬にエールを送る伏木田さん。その先のJBCも視野に入れているというから、シャイニングサヤカに対する期待の大きさが伺える。現役馬としてもうひと花咲かせ、大きな勲章を手土産に生まれ故郷へ里帰りしてくれることを願いたい。