2020年11月10日 ローレル賞(GDJ)
優勝馬:ケラススヴィア
プロフィール
- 生年月日
- 2018年05月09日 02歳
- 性別/毛色
- 牝/黒鹿毛
- 戦績
- 国内:4戦3勝
- 総収得賞金
- 95,700,000円
- 母 (母父)
- レディパッション by ネオユニヴァース
- 馬主
- 小田 吉男
- 生産者
- ヒサイファーム (三石)
- 調教師
- 小久保 智
- 騎手
- 森 泰斗
『グランダム・ジャパン2020』2歳シーズンの第4戦「ローレル賞(川崎)」を、3番人気のケラススヴィアが2馬身差快勝。道中3~4番手追走から直線外に持ち出し、前を行くセカイノホシ、ナジャをゴール前できっちりと捕らえ、デビューから無傷の3連勝で重賞初勝利をおさめた。
ケラススヴィアの生まれ故郷は、新ひだか町三石のヒサイファーム。南関東の牝馬交流重賞で6勝を挙げた女傑トーセンジョウオーや、3年前のシリウスステークス(G3)でクビ差2着したドラゴンバローズなどを生産した家族経営の牧場で、現代表の久井直彦さんが2代目。15年ほど前から昼夜放牧に切り替え、昨年は当歳馬の放牧地にシェルターも増設。強い馬づくりのために、日々改革を試みている。
またヒサイファームは繁殖牝馬の導入にも力を入れており、ケラススヴィアの起源も米国キーンランドの繁殖セールで祖母アリゲーターアリーを購入したことに遡る。「アリゲーターアリーを購入したのはちょうどリーマンショックの頃だったのですが、安く買えるかと思っていたら意外に高くなってしまいました。それでも、活躍馬が多く出ているグロウイングトリビュートの名牝系ですし、半弟に日本で活躍したシーキングザベストもいる良血馬なので、思い切って購入することにしたんです」と当時を振り返る。
インディアンチャーリー(1998年のケンタッキーダービー(G1)3着馬)の仔を宿した状態でヒサイファームにやってきたアリゲーターアリーは、来日3年目に父ネオユニヴァースの牝馬を出産。のちにレディパッションと名付けられ、岩手競馬で3勝を挙げることになるその牝馬の馬生が、ケラススヴィアの誕生に大きく関わってくる。「レディパッションはせりに上場したのですが、希望価格に届かなくて主取りになってしまったんです。そんな経緯から自分の名義で競馬を使うことになり、現役引退後に牧場へ戻して繁殖にしました。あの時、せりで売れていたら牧場に戻ってきたかどうか分かりませんし、そういう運命だったのかもしれませんね」と久井さんは感慨深い表情を浮かべる。
そのレディパッションが繁殖入りして3年目に、サウスヴィグラスを交配して生まれてきた牝馬がケラススヴィアだった。「体のラインがきれいでバランスが良く、とても柔軟な動きをしていました。1歳9月のセプテンバーセールまで、怪我や病気もなく順調に育ちました」と、ケラススヴィアが牧場で過ごした時期を昨日のことのように話してくれた。
競走馬の育成を手掛けるエクワインレーシングによって落札されたケラススヴィアは、2歳5月のトレーニングセール上場に向けて順調に調教されていた。しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響でトレーニングセールが中止。急遽、エクワインレーシングが運営する競走馬販売サイト「UMAKAU.COM」でオークションにかけられ、現オーナーと出会うことになる。「予定通りにトレーニングセールが開催されていれば、また違う道を歩んでいたかもしれませんね。コロナ禍ならではのインターネットオークションで良縁に恵まれたのですから、分からないものです」とケラススヴィアの強運ぶりにも感心する。
母レディパッションは現在9歳。順調に出産をつづけており、現1歳の牡馬(父アドマイヤムーン)は今年9月のセプテンバーセールで無事に落札。今年は父キンシャサノキセキの牡馬が誕生し、同期の馬たちと元気に放牧地を駆け回っている。「当歳の牡馬も、来年のサマーセールかセプテンバーセールへ上場することになると思います。その成長ぶりを毎日チェックしながら、楽しみにしています」と話し、誕生してからの馬体重をグラフ化した成長曲線のデータを見せてくれた。
「今年はコントレイルやデアリングタクトが無敗で勝ち進み、競馬を盛り上げてくれました。ケラススヴィアもこれまで無敗ですから、このまま勝ち進んで競馬ファンに夢や希望を与えられるような存在の馬になってくれるといいですね。オーナーは『浦和の桜花賞を勝ちたい』と仰っているので、その夢を叶えてほしいと思います」とエールを送る。
「これまで何度も人に助けられて牧場をつづけて来られました。諦めないでやっていれば、こうして報われることもあるんですね」と最後にしみじみと語ってくれた久井さん。ラテン語で“桜の道”を意味するケラススヴィア。ぜひ来年の桜の季節に、美しく大きな花を咲かせてほしい。