重賞ウィナーレポート

2020年03月08日 弥生賞ディープインパクト記念 G2

2020年03月08日 中山競馬場 曇 重 芝 2000m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:サトノフラッグ

プロフィール

生年月日
2017年02月26日 03歳
性別/毛色
牡/鹿毛
戦績
国内:4戦3勝
総収得賞金
150,424,000円
ディープインパクト
母 (母父)
バラダセール(ARG)  by  Not for Sale(ARG)
馬主
(株) サトミホースカンパニー
生産者
ノーザンファーム (安平)
調教師
国枝 栄
騎手
武 豊
  • サリオスやアドマイヤビルゴの育成も手がけた、木村浩崇厩舎長
    サリオスやアドマイヤビルゴの育成も手がけた、木村浩崇厩舎長
  • 育成をされる2歳世代にも、楽しみな馬が揃う
    育成をされる2歳世代にも、楽しみな馬が揃う

 レース名に、昨年の夏に亡くなった、「ディープインパクト」の名前が刻まれた今年の弥生賞(G2)。その弥生賞(G2)にも出走していた父を彷彿とさせるかのように、3コーナーから4コーナーにかけてポジションを上げていったサトノフラッグは、直線に入ってからも後続との差を広げていく。

 このレースに出走していたディープインパクト産駒は、サトノフラッグ1頭だけ。しかも、そのディープインパクト産駒に騎乗していた武豊騎手での勝利と、まさに出来すぎた感もある結果となったが、3歳牡馬クラシック戦線に新星誕生を、強く印象付ける勝利となったことは間違い無い。

 育成先となったのは、ノーザンファーム早来の木村厩舎。木村浩崇厩舎長は、育成時のディープインパクトに騎乗してはいないものの、ディープインパクト産駒の活躍馬には数多く携わってきた。

 「ディープインパクト産駒というだけでなく、現3歳世代となった育成馬の中でも、優等生と言えるような乗りやすさがありました。折り合いも付きますし、背中も良く、むしろここまで優等生だと、『いい馬』で終わってしまうのではとさえ感じたほどです」と育成時のサトノフラッグを振り返る木村厩舎長。その優等生ぶりが逆の形で現れてしまったのが、デビュー戦となった2歳時のメイクデビュー東京だった。

 3番人気の評価を与えられながらも、勝負所でも脚を伸ばすこと無く、勝ち馬から1秒5差の6着に敗退。だが、このレース経験を見事に生かしたのが、次走の2歳未勝利戦だった。

 「こちらにいた頃から学習能力が高い馬でしたし、調教とレースの違いを感じ取ったのかもしれません。中間の様子もいいと聞いていましたが、それでも見事な勝ちっぷりでした」

 デビュー戦と同じ、東京競馬場の芝2000mに出走してきたサトノフラッグは、最後の直線ではディープインパクト産駒らしい末脚を使い、他馬をあっという間に引き離していく。この時に計時された1分59秒5の勝ち時計は、2歳コースレコード。メイクデビューの時計を3秒7も更新するという、まさに「がらり一変」のレースを見せた。

 「レース後、騎乗してくれたマーフィー騎手も、『トッププラスの能力がある』と話していたのを知って、本当に高い能力を持った馬だと実感しました。次のレース(3歳1勝クラス)もいい内容でしたし、馬格、精神面、動きと、何の不安もなく弥生賞(G2)に臨めると思っていました。と話す木村厩舎長だったが、弥生賞(G2)に向けて1つだけ気がかりだったのは、当日の天気だったという。

 「走りを見ていても、重たくなった馬場は向いていないのではと思っていました。週末の天気予報が雨だと知った時にはがっかりしましたし、実際に当日も午前中の雨が残っていて、重馬場でのレースとなったので、そこだけは不安でした」

 しかし、その不安は皆無に終わる。唯一の敗戦となったメイクデビューと同じ重馬場でのレースとなったが、サトノフラッグはその敗戦で学んだ経験を生かすかのように、力強い走りを見せていく。そして誰よりもディープインパクトを、そして産駒もよく知る武豊騎手からゴーサインがかかると、まさに『飛ぶ』ようにゴール板を先頭で駆け抜けていった。

 レース後、その武豊騎手からは、「馬上から眺める感じはディープに似ていました」との言葉も贈られたサトノフラッグ。このレースを制して、無敗で皐月賞(G1)も制覇した父とは違うが、学習能力の高さにも見られるように、本番に向けて更なる成長も見込めそうだ。

 「育成時から距離の不安も感じられなかったですし、皐月賞(G1)だけでなく、ダービー(G1)も楽しみになってきます」と話す木村厩舎長。同じ3歳世代で育成を手がけた馬では、朝日杯FS(G1)を勝利したサリオスだけでなく、若葉Sを制したアドマイヤビルゴも皐月賞(G1)の権利を獲得。ノーザンファーム内どころか、同じ育成厩舎内にも強力なライバルが揃った印象があるが、ここまでの臨戦過程も含めて、何かを「持っている」サトノフラッグが、牡馬クラシックの一冠目を制しても何ら不思議ではない。