重賞ウィナーレポート

2019年03月31日 大阪杯 G1

2019年03月31日 阪神競馬場 曇 良 芝 2000m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:アルアイン

プロフィール

生年月日
2014年05月01日 05歳
性別/毛色
牡/鹿毛
戦績
国内:15戦5勝
総収得賞金
511,702,000円
ディープインパクト
母 (母父)
ドバイマジェスティ(USA)  by  Essence of Dubai(USA)
馬主
(有) サンデーレーシング
生産者
ノーザンファーム (安平)
調教師
池江 泰寿
騎手
北村 友一
  • 山内厩舎長は父であるディープインパクトの背中もよく知る
    山内厩舎長は父であるディープインパクトの背中もよく知る
  • 2つの厩舎では40頭が管理されている
    2つの厩舎では40頭が管理されている

 アルアインがこの大阪杯(G1)の前に勝ち鞍をあげたのは、2年前の皐月賞(G1)まで遡らなければいけない。

 「勝てなかったとは言えども、どのレースでも善戦してはいてくれたので、いつか「その時」が来ると信じていました」と話すのはノーザンファーム早来の山内大輔厩舎長。ディープインパクト、デルタブルースなど、幾多の名馬に騎乗してきた山内厩舎長が厩舎を任された際に、初めて送り出したG1馬がアルアインであり、それだけに復活への思いもひとしおだったとも話す。

 海外遠征から戻ってきた昨年の夏、アルアインは牧場へと戻ってくる。その時、山内厩舎長はアルアインの不振の原因が疲れだけでなく、精神面にあることも感じ取っていた。

 「善戦をしながらも勝ちきれなかった理由は、最後まで真面目に走っていなかったことも関係していたと思います。いつしかレースが苦しいと思うようになり、それが反抗心となっていったのでしょう」

 リラックスできるはずの牧場での調整であったが、そこでもアルアインは騎乗した瞬間に立ち上がるなどして、山内厩舎長に反抗し続ける。疲れもあったのか、アルアインは背腰が敏感になっており、まずはそのケアから始めなければいけなかった。ようやく背中に乗れるようになってからもコースに向かおうとせず、他の調整馬を付け馬として同行させるなど、調教にも一苦労する有様だった。

 そんな時にノーザンファームしがらきでの勤務経験があるスタッフから、「背腰に問題のある馬は、先にロンギ場やトレッドミルで身体をほぐしていました」とのアドバイスを受ける。早速実行してみると、身体だけでなく気分もほぐれたのか、アルアインが悪癖を行う回数は減っていく。

 「そのスタッフだけでなく、しがらきでアルアインを担当していたスタッフとも情報を共有しながら、向こうではどんなことをやっていたのか、そして、ここではこんなことをやっていると、常に確認しあっていました」

 その個人間のコミュニケーションは、アルアインがノーザンファームしがらきに戻ってからも続けられていく。それどころか、しがらきのスタッフから管理をする池江厩舎、そしてオールカマー(G2)から手綱を取った北村友一騎手にも、アルアインの癖や性格は伝達されていった。

 「こちらにいた頃からムチを使うと気分を害するようになっていました。それはしがらきのスタッフも分かっていたようで、北村騎手にもムチを使うこと無く、馬とのコミュニケーションを優先して欲しいと伝えたそうです」

 池江厩舎でも調教にプールを取り入れるなどして、メンタル面でのサポートも行っていった。牧場から戻っての初戦となるオールカマー(G2)は2着ながらも、4コーナーでは先頭に躍り出るなど前進気勢が感じられるレース内容に、山内厩舎長は「その時」が近いことを感じ取っていた。

 昨年は2番人気の支持を集めて3着となった大阪杯(G1)。しかしながら、今年は9番人気まで評価を落としていた。

 「メンバーも揃いましたし、仕方が無いとは思いながらも、枠はいいところに入ったと思っていました。レースもキセキを外に置く形で進められましたし、ペースも含めて全てがアルアインに向いたのだと思います」

 オールカマー(G2)でも見せた前進気勢は、今回も失われていなかった。鞍上の北村騎手も、アルアインの気持ちを切らすこと無く、レースは最後の直線へと向かっていく。レースの主導権を握っていたエポカドーロが粘り込むところを、アルアインはその内に進路を取り、先頭へと躍り出る。外からはキセキ、そして最内からはワグネリアンが迫ってくるも、北村騎手は一度もムチを使うこと無く、アルアインを「その時」へと導いていく。

 「本当に嬉しかったですね。アルアインも頑張ってくれましたし、しがらき、池江厩舎、北村騎手と、みんなで取り組んだことが最高の結果となったのも嬉しかったです」

 これでG1は2勝目。それでも、これまでの重賞やG1での好走実績からすれば、次の「その時」はそう遠くない時期にアルアインの元に、そして、山内厩舎長を初めとする関係者の元へもやってきそうだ。