重賞ウィナーレポート

2019年03月03日 弥生賞 G2

2019年03月03日 中山競馬場 雨 重 芝 2000m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:メイショウテンゲン

プロフィール

生年月日
2016年03月10日 03歳
性別/毛色
牡/芦毛
戦績
国内:6戦2勝
総収得賞金
127,176,000円
馬主
松本 好雄
生産者
三嶋牧場 (浦河)
調教師
池添 兼雄
騎手
池添 謙一
  • メイショウベルーガ親仔
    メイショウベルーガ親仔
  • メイショウベルーガの2019は父ハーツクライの牡馬(芦毛)
    メイショウベルーガの2019は父ハーツクライの牡馬(芦毛)
  • 今もファンの多いメイショウベルーガ
    今もファンの多いメイショウベルーガ
  • 厩舎
    厩舎
  • きれいに整備されている場内。今年の日高は雪解けが早い
    きれいに整備されている場内。今年の日高は雪解けが早い
  • 看板
    看板

 雨の中山競馬場。クラシック皐月賞(G1)への優先出走権をかけた弥生賞(G2)を制したのは8番人気のメイショウテンゲンだった。

 本馬が産まれたのは浦河町にある三嶋牧場。先月の共同通信杯(G3)を制したダノンキングリーをはじめ、カンタービレ、ミッキーチャームなど特にここ最近の生産馬の活躍が目をひく。

 また、メイショウテンゲンの母メイショウベルーガも、同牧場の生産馬。追い込みを得意とした馬で、京都大賞典(G2)や日経新春杯(G2)を制するなど数々の重賞戦線で活躍し今なおファンの多い生産馬だ。

 そのメイショウベルーガの母パパゴからこの血統を全て見てきているという分場の繁殖スタッフ芦田康一さんはレース直後の様子をこう話した。

 「おじさん3人で涙、涙でした(笑)」。種付けで移動中だった芦田さんは、道中にある同牧場の富川育成場でレースを観戦した。そこにはメイショウテンゲンの1歳時を担当したスタッフ2名がおり、レース後には喜びで一緒に泣き崩れたそうだ。「レース前は人気もありませんでしたし、勝つとまでは思っていませんでした。でもパドックを見たら落ち着いているし馬体を前走より良くみせていたので『これは一発あるかもしれないね』と話していました」。レース内容をあまり覚えていない程、応援に夢中になっていたそうで「途中からはテンゲンではなく、なぜか母の名『ベルーガ、ベルーガ』と必死に呼び続けていました」。

 芦田さんにとってこの血統は気持ちの入り方が特別だという。「場内の人事異動で僕が別の厩舎へ移動する際にはもれなくメイショウベルーガもついてきます。それだけにベルーガの話になると止まらないんです。」と愛に溢れた顔で話した。

 母としてのメイショウベルーガは出産や種付けにおいて、その母パパゴと同じような癖があるという。「年齢とともに丸くなってきましたが気の強い面があるので、特に種付けは皆さんの協力があってのもの。毎年親身になって頂き最高峰の種牡馬を付けさせて下さるスタリオンの方々や獣医師には本当に感謝しています」。この血を知り尽くしている芦田さんのケアも欠かせないポイントとなっていることだろう。

 メイショウベルーガは今年、ハーツクライの牡馬を無事に出産した。安産だったそうだが、「北海道が寒波に包まれた日の早朝に出産しました。何ともベルーガらしいですよね」と芦田さんは笑った。

 メイショウテンゲンの当歳時は、ひとことで言えば「やんちゃ坊主」だったらしい。芦田さんは「とにかく楽しかった」と優しい目で当時を振り返る。「テンゲンは馬も人も大好きで、放牧地では必ず他の馬に挨拶にいく仔でした。放牧地に1頭で新しく入ってきた馬は、本来そこのグループに混ざるのに苦労するのですが、テンゲンが挨拶にいくおかげですんなりグループに入ることができて助かりました。不思議な魅力をもった仔でしたね。母のメイショウベルーガは子煩悩でしたが、テンゲンが動き回って一緒にいないため、放任主義にならざるを得なかった様子でした」。

 メイショウテンゲンの馬体の良さは当時から目をひいたそうだが、それ以上に半端のないスタミナ量に日々驚かされていたという。「他馬がヘトヘトになっている夜間放牧明けの朝でも走っている程で、他の馬の3~4倍は動いていたと思います。疲れ知らずで、本気で走る姿はほぼ見たことがなかったです。このままいけば大物になるのではないかと感じていました」。

 今後のメイショウテンゲンのレースについて「権利をとった皐月賞(G1)はもちろんですが、中山の坂を克服した力を見ると、もう少し長い距離のダービー(G1)、菊花賞(G1)を期待せずにいられないです。」と力強い言葉。付け加えて、愛情たっぷりの芦田さんらしく「どうか無事に。そして、『テンゲンらしい』走りを見せてほしいです」。更なる嬉しい涙が故郷へプレゼントされることを期待したい。