2018年05月10日 東京プリンセス賞(GDJ)
優勝馬:グラヴィオーラ
プロフィール
- 生年月日
- 2015年03月04日 03歳
- 性別/毛色
- 牝/栗毛
- 戦績
- 国内:11戦4勝
- 総収得賞金
- 55,025,000円
- 母 (母父)
- カクテルラウンジ by タニノギムレット
- 馬主
- 村田 紀次
- 生産者
- ハクツ牧場 (新冠)
- 調教師
- 佐藤 賢二
- 騎手
- 今野 忠成
『グランダム・ジャパン2018』3歳シーズンの第6戦、そして南関東牝馬クラシックの二冠目でもある「東京プリンセス賞(大井・1800m)」を、2番人気のグラヴィオーラが圧勝。桜花賞(浦和)を無敗で制したプロミストリープが単勝1.2倍と圧倒的人気を集める中、道中はそのプロミストリープをピッタリとマークする3番手でレースを進め、馬なりのまま先頭を捕えたところで今野騎手がGOサインを出すと、見る見る間にプロミストリープを置き去りにして7馬身差のゴール。走破タイムの1分53秒1は、前日に同条件で行われた羽田盃よりコンマ6秒速く、あがり3ハロン37秒0という数字も大井1800m戦ではめったに見られない時計。昨年暮れの東京2歳優駿牝馬につづく重賞2勝目を飾るとともに、その快走劇はファンやライバル陣営に強烈なインパクトを植え付けた。
グラヴィオーラの生まれ故郷は、新冠町のハクツ牧場。ご家族で自己所有の繁殖牝馬12頭とその仔たちの世話をする牧場で、グラヴィオーラは代表の村田紀次さんの名義で競馬をしているオーナーブリーディングホースである。「東京プリンセス賞は現地で応援していました。プロミストリープが圧倒的人気をしていましたが、競馬に絶対はないので、うちの馬にもチャンスはあると思っていました。でも、あんなに強い勝ち方をしてくれるとは、夢にも思っていなかったですね。スタンドの上から見ていたのですが、直線は新聞で机を叩きながら大声で叫びっぱなしでした(笑)」と話す村田さん。いっしょに北海道から応援に駆けつけたお父様や東京に住む親戚と喜びを分かち合い、勝利の美酒を味わったそうだ。「浦和の桜花賞は3着だったのですが、その時2着に入ったアンジュキッスもうちの生産馬なんです。その年は牝馬が2頭だけだったのですが、その2頭が南関東牝馬クラシックで2着と3着に入るなんて、すごいことですよね。そしてきっちり二冠目でリベンジを果たすのですから、たいした馬だと思います」と愛馬たちの頑張りに感心する。
グラヴィオーラの母カクテルラウンジは、現役時代に東京2歳優駿牝馬(大井)3着、オパールカップ(盛岡)優勝という実績があるタニノギムレット産駒。1歳上の半兄に2008年のジャパンカップ優勝馬スクリーンヒーローがいて、その祖母はニッポーテイオーのライバルとして80年代後半の重賞戦線を沸かせつづけた名牝ダイナアクトレス。遡れば社台ファームが英国から輸入して現在の礎を築く基礎牝馬の一翼となったマジツクゴデイスにたどり着き、“超”の付く良血馬と言って過言ではないだろう。「カクテルラウンジは、ジェイエスのウインター繁殖セールで購入しました。大好きな血統なので、何が何でも落札しようと思ってようやく手に入れた馬なんです。購入した時は空胎だったのですが、それから4年連続でサウスヴィグラスを交配しました」と繁殖導入の経緯について話してくれた。その初年度に生まれたのがグラヴィオーラで、その後も3年連続で父サウスヴィグラスの牝馬が誕生している。「この血統を育てていきたいと思っていたので、牝馬が生まれてくれて大喜びでした。将来は必ず牧場へ戻ってきてほしいので、最初から売る気はまったくありませんでした」と当時を振り返る。
グラヴィオーラの1歳下の全妹は現在、浦河町のグランデファームで育成中。クラブ法人・ローレルクラブの募集馬となっており、JRA美浦の清水英克厩舎からデビューする予定だ。「馬名もブルーコーラルと決まり、デビューに向けて順調に調整中です。ブルーコーラルには、昨年グラヴィオーラが2着に敗れたエーデルワイス賞(Jpn3)を勝って姉の雪辱を果たしてほしいと思っているんですよ。そしてクラブ会員の皆さまと喜びを分かち合えれば最高です」と現2歳の全妹に夢を託す。現1歳と今春生まれた当歳の全妹は牧場の放牧地を元気に駆け回っており、こちらも姉に負けない好馬体に育ってきているようだ。「この姉妹はみんなバネがあり、幼少期から全身を使った走りをして放牧地でも目を引くんです。グラヴィオーラもそうですが、将来は牧場に戻って血をつなぎ、その仔たちがG1を勝ってくれればと願っています。そしてこの血統からいつか、スクリーンヒーローのような種牡馬をつくるのが私の夢です」と目を輝かせて未来を見つめる村田さん。中学生の頃から世界中の血統本を読み漁っていたという村田さんは、高校卒業後に千葉のシンボリ牧場で3年間修行し、シンボリルドルフの三冠を現場にいながらリアルタイムで体感したそうだ。「当時、シンボリ牧場の和田共弘社長が『馬づくりは情熱』と言っていたのが、今になって身に染みます。どれだけ考えても答えの出ないのが馬づくりの世界で、だからこそ情熱を注ぎつづけなければならないのだと思っています」と熱い眼差しで語ってくれた。
グラヴィオーラの次走は、牡馬相手の東京ダービー(大井・2000m)も視野に入れているという。「右回りの方が競馬がスムーズですし、広くて直線も長い大井コースはグラヴィオーラに合っているような気がします。最終的には佐藤賢二調教師の判断にお任せしますが、私は東京ダービーに挑戦してほしいと思っています」と話す村田さん。牝馬の東京ダービー優勝となるとクラーベセクレタ以来7年ぶりの快挙、佐藤賢二調教師は昨年のヒガシウィルウィンにつづいて2年連続の東京ダービー制覇が懸かる。そんな偉大な記録も、東京プリンセス賞で見せたグラヴィオーラの圧倒的なパフォーマンスを振り返れば、決して可能性の低い話ではないと思えてくる。長年思い描いた村田さんの夢が、グラヴィオーラの走りで急速に現実味を帯びてきた。