2018年04月07日 阪神牝馬S G2
優勝馬:ミスパンテール
プロフィール
- 生年月日
- 2014年02月21日 04歳
- 性別/毛色
- 牝/鹿毛
- 戦績
- 国内:9戦5勝
- 総収得賞金
- 219,170,000円
- 父
- ダイワメジャー
- 母 (母父)
- エールドクラージュ by シンボリクリスエス(USA)
- 馬主
- 寺田 千代乃
- 生産者
- 三城牧場 (門別)
- 調教師
- 昆 貢
- 騎手
- 横山 典弘
ヴィクトリアマイル(G1)の前哨戦、阪神牝馬ステークス(G2)はミスパンテールが逃げ切り勝ち。これまでにない戦法でライバルをねじ伏せ、重賞連勝を飾った。
本馬の生産は、日高町のヴェルサイユファーム。昭和62年設立の牧場で、「三城牧場」という牧場名で長らく親しまれた。近年は、元宝塚歌劇団の岩﨑美由紀さんが代表となり、岩﨑さんらしい牧場名に改称。本馬やライジングリーズン、コパノマイケルといったオープン馬を生産している。
牧場の自宅で勝利を見届けたという岩﨑さんに、レースの感想をうかがうと、「スタッフ一同、喜んでいます。G1馬をはじめ、強いメンバーが揃っていましたから、掲示板に入れば上出来だと思って応援していました。前2走とは対照的に、今回は逃げる展開になり、正直、意外に思いました。良馬場が向く馬だと思うので、回復したばかりの馬場状態も、不安がありましたね。ゴール前は、迫ってくる馬に抜かれないように、応援する声も大きくなりました。直線が長く感じましたね。前走同様、鞍上の横山典弘騎手の素晴らしい騎乗だったと思います。どんなレースでも結果が出ていますし、相性が良いですね。これで重賞3連勝となり、周りの皆さんからは“この強さは本物だね”と声をかけていただき、嬉しく思っています」と、振り返った。
本馬は2014年2月21日、マイル~中距離で活躍したダイワメジャーと、シンボリクリスエス肌の母エールドクラージュとの間に生まれた。岩﨑さんは、「当歳時から馬体が良くて、ダイワメジャーらしい筋肉を見せていました。母馬は人に対して悪さはしませんが、馬同士では気が強く、どの放牧地のグループになってもボスになる馬です。そうした気の強さは勝負根性として、ミスパンテールにも受け継がれたと思います」と、紹介する。
エールドクラージュは2歳に父モンテロッソの牝馬、1歳に父ブラックタイドの牝馬が生まれている。来年に向けてはダイワメジャーを交配し、受胎を確認している。「エールドクラージュ自身は、とても健康に過ごしています。種付けも無事に終わり、安堵しているところです。これからデビューする2歳牝馬は、雄大な体つきが特徴で、牧場ではパワフルな動きを見せていました。ミスパンテールとも似ていますよ。1歳牝馬はすでに移動しましたが、こちらも素質のある馬で、ともに楽しみにしています」と、本馬に続く半妹たちも大舞台を意識させている。
エールドクラージュの飼養管理も含めて、出産シーズンの春は、牧場の皆さんにとって忙しい毎日だ。岩﨑さんは代表自ら、夜な夜な出産の監視をしているという。「牧場スタッフは大事ですし、繁忙期もできるだけ無理はさせたくないですからね。私が夜から朝まで出産馬房を見ています。私も日中は仕事をしますから、この時期は満足に睡眠をとれなくて、お肌にも全然良くないです(苦笑)。出産も、予想外のタイミングになる場合があり、気の抜けない春です。
牧場をしていれば、お金もかかるし、めげそうになることもありますね。それでも、私の中では“どんなことがあっても泣かない”と決めて、先代から牧場を引き継ぎました。いろいろな局面を乗り越えてきましたが、生産馬がレースで故障して亡くなった時だけは、泣きましたね…。辛いこともありますが、若い頃に所属していた宝塚歌劇団で鍛えた忍耐や、プレッシャーに負けない気持ちを、今の仕事でも生かしていきたいと思っています」
岩﨑さんを含め、牧場の皆さんを鼓舞するように、3つの重賞タイトルを獲得した本馬。目下の成長著しく、ヴィクトリアマイル(G1)の有力馬に躍り出ている。レースに向けて、岩﨑さんも期待を膨らませている。「良馬場で、いつもの精神状態でレースを迎えられれば、再びチャンスでしょう。今度は、競馬場で応援したいと思っています」
実は取材中、岩﨑さんが何度か発した言葉が、“夢は大きく”という言葉。自身がそうだったように、どの馬も大きな舞台を目指して_ヴェルサイユファームの意気込みを表現している。牧場初のG1制覇へ向けて、その言葉が一層弾んで、競馬場のミスパンテールにも届くことだろう。