2017年10月29日 天皇賞(秋) G1
優勝馬:キタサンブラック
プロフィール
- 生年月日
- 2012年03月10日 05歳
- 性別/毛色
- 牡/鹿毛
- 戦績
- 国内:18戦11勝
- 総収得賞金
- 1,876,843,000円
- 馬主
- (有) 大野商事
- 生産者
- ヤナガワ牧場 (門別)
- 調教師
- 清水 久詞
- 騎手
- 武 豊
東京競馬場へ接近する台風22号がもたらした雨は、東京競馬場の馬場を三度に渡ってき濡らしていく。その雨はレースの前になると更に強さを増し、パドックに姿を見せたキタサンブラックの馬体にも激しく打ち付けた。
「重い馬場はこなせるのではと思っていましたが、ここまで悪くなってしまうとどうなるのだろうか?他にこの馬場を得意とする馬も出てくるのでは?とも思っていました」とレース当日は東京競馬場に応援へと駆けつけていた、ヤナガワ牧場の梁川正普代表は話す。今や日本競馬を代表するスターホースともなったキタサンブラックに対し、ファンはデビュー以来、6度目となる単勝1番人気の評価を与えていく。
「北島(三郎)オーナー(名義は有限会社大野商事)や、武豊騎手の人気もあるかと思いますが、それでもG1レースにおけるファンの皆さんからの高い評価は、生産者としても有り難い限りでした」しかし、ゲートが開いた瞬間、キタサンブラックを応援していたファンからはどよめきだけでなく、悲鳴のような声もわき起こる。これまでのレースでは好スタートからの好位でのレース、行く馬がいなければ逃げきりすら果たしていたキタサンブラックだが、今回はスタートが合わず、後方からのレースを強いられることになってしまったのだ。
「スタートのタイミングが合わなかったのを見た時には、正直、今回は厳しいのではと思っていました」
それでも鞍上の武豊騎手に焦りは無かった。スタートが良すぎるがばかりに、今回は扉が開く前に突進してしまったというキタサンブラックが出遅れたとみるや、他の馬が真ん中より外目に進路を取っていった中、なんと、馬場の荒れていたインコースへ進路を向けていったのだ。まさに出遅れたロスを、最短距離で取り返していったキタサンブラックは、なんと、第4コーナーでは2番手までに順位を上げていき、しかも、勝負所となる最後の直線では、馬場の真ん中に進路を向ける。
「一瞬、キタサンブラックの姿を見失った程でしたし、あのレース運びは凄いなと思いました。まさに武豊マジックでしたね」
抜け出したキタサンブラックに迫ってくるのは、宝塚記念(G1)で国内G1初勝利を掴んだサトノクラウン。ゴール前は2頭の叩き合いとなったが、それでもキタサンブラックは一度も交わされることなく、先頭でゴール板を駆け抜けた。
「サトノクラウンも強い馬でしたし、その追撃をギリギリ凌いでくれたのは偉い馬だと思いました。これまで、キタサンブラックの勝ったレースを幾度となく見てきましたが、今回が一番強いレースをしてくれたのではとも思っています。本当に馬を褒めてあげたいですね」
今年限りでの引退、そして、来年からは安平・社台スタリオンステーションでの種牡馬入りが発表されているキタサンブラック。次走は昨年に続く連覇を狙うジャパンC(G1)、そして一昨年、昨年と悔しいレースが続いている有馬記念(G1)がラストランとなることが発表されている。
「生産者としては、引退まで無事にレースを続けて欲しいというのが本当の気持ちです。あれだけの競馬をした後だけに、多少の疲れは残っているかと思いますが、それでもジャパンカップ(G1)では、ファンの皆さんの期待に応えるような姿を見せてもらいたいです」
引退まであと2戦。誰もが認めるスターホースとしての要素に、「強さ」という概念も付け加えたキタサンブラックが走る姿を、我々もしっかりと目に焼き付けておこう。