2017年10月08日 毎日王冠 G2
優勝馬:リアルスティール
プロフィール
- 生年月日
- 2012年03月01日 05歳
- 性別/毛色
- 牡/鹿毛
- 戦績
- 国内:13戦3勝
- 総収得賞金
- 416,768,000円
- 母 (母父)
- ラヴズオンリーミー(USA) by Storm Cat(USA)
- 馬主
- (有) サンデーレーシング
- 生産者
- ノーザンファーム (安平)
- 調教師
- 矢作 芳人
- 騎手
- M.デムーロ
もし、この「重賞ウイナーレポート」をお読みの方で、過去のレポートにも目を通せる環境にあるのなら、リアルスティールが制した、2015年の共同通信杯(G3)のレポートにも目を通していただきたい。
そこにはノーザンファームしがらきのスタッフとして、共同通信杯(G3)優勝の喜びを語る今井翔一さんのコメントが掲載されているはずだ。その後、リアルスティールはドバイターフ(G1)を優勝した後、重賞3勝目をこの毎日王冠(G2)で飾ることになるが、そのすぐ側には常に今井さんの姿があった。
「リアルスティールがノーザンファーム空港を離れたのとほぼ時を同じくして、自分もノーザンファームしがらきに研修へと行かせてもらいました。昨年の10月にノーザンファーム空港へと戻ってきたのですが、様々な経験をさせていただきましたし、改めてお世話になったノーザンファームしがらきの皆さんや、研修に快く送り出していただいたノーザンファーム空港関係者の方には感謝しかありません」
今井さんはノーザンファームしがらきでの研修期間も、リアルスティールの調整に深く関わってきた。それどころか、初の海外G1制覇を果たしたドバイターフ(G1)は、現地に赴いて感動の瞬間を分かち合った。
「昨年の夏はノーザンファームしがらきで調整を行っていたのですが、夏の暑さだけでなく、湿度の高さもあってか夏負けになってしまい、秋の始動も遅くなってしまいました。
今回は北海道で過ごすことになったのですが、その際、矢作先生の方からやってもらえないかとの話をいただき、菅谷清史場長、そして吉田俊介代表からも了承していただく形で、自分の厩舎で管理をさせてもらうことになりました」ノーザンファームしがらきに出向く前も、ノーザンファーム空港で厩舎長を務めていた今井さんだったが、戻ってきてからは再びP-3厩舎の厩舎長となっている。以前に厩舎長を務めていた頃から、ずっとリアルスティールに接してきた今井さん、いや今井厩舎長だからこそ分かる、リアルスティールの強さについても聞いてみた。
「育成時から思ってきたことですが、競走馬としての絶対能力が高いと思っています。だからこそ、年齢を重ねても安定した走りができているのでしょう。この夏は暑さや湿度を気にすること無く、いい調整ができたと思いますし、これなら競馬でもいい結果が出せるのではと思っていました」
鼻出血のために出走取り消しとなったドバイターフから帰国後の4月下旬から9月中旬まで、リアルスティールは今井厩舎長の元で管理が行われている。北海道で管理をされたノーザンファーム生産馬、あるいは育成馬たちは、その後、ノーザンファーム天栄かノーザンファームしがらきで再度調整された後に入厩をすることが多いが、リアルスティールはノーザンファームしがらきに1日滞在しただけで、矢作厩舎へと入厩していった。
「レースの3週間前に北海道からほぼ直接厩舎に戻すのは、リアルスティールにとって初めての経験でした。それだけこちらで求められている調教内容も濃くなってきますし、矢作先生や厩舎スタッフの皆さんに求められている状態で、向こうに戻さなければいけないとの責任感もありました」
しかし、この仕事は競馬場に近い場所で競走馬を管理してきた今井厩舎長にこそ適任だったのかもしれない。それを雄弁に物語っていたのが毎日王冠(G2)のレース内容だったと言えるだろう。プラス4㎏で出走したリアルスティールは、長期休み明けの影響など感じさせずに鞍上を務めたM.デムーロ騎手と息の合ったレースを見せると、最後の直線では力強く馬群を抜け出すと、そこから脚色が鈍ること無く先頭でゴールを果たす。
嬉しさだけでなく、充実感もありますと話す今井厩舎長に、改めて「リアルスティールとは今井さんにとってどんな馬ですか?」と質問をしてみた。
「一言ではとても言い表せません。ただ、初めて接した時から凄い馬であり、それは今でも全く変わりありません。そして、自分の中では、ずっと思い出に残っていく馬だとも思っています」との答えが返ってきた。次走は天皇賞(秋)(G1)に出走を予定するリアルスティールだが、今後も今井厩舎長の思い出だけでなく、競馬ファンや競馬史にもその名をしっかりと刻み込むようなレースを見せてくれるに違いない。