重賞ウィナーレポート

2017年06月11日 岩手ダービーダイヤモンドC(DS2017)

2017年06月11日 水沢競馬場 曇 重 ダ 2000m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:キングジャガー

プロフィール

生年月日
2014年04月15日 03歳
性別/毛色
牡/鹿毛
戦績
国内:14戦5勝
総収得賞金
29,216,000円
キングヘイロー
母 (母父)
ケージーササニシキ  by  ファスリエフ(USA)
馬主
廣松 金次
生産者
イワミ牧場 (新冠)
調教師
板垣 吉則
騎手
高橋 悠里
  • キングジャガーの母ケージーササニシキ(7歳)
    キングジャガーの母ケージーササニシキ(7歳)
  • キングジャガーの半妹(牝2歳、父プリサイスエンド)と生産者の岩見昌弘さん
    キングジャガーの半妹(牝2歳、父プリサイスエンド)と生産者の岩見昌弘さん
  • キングジャガーの半弟(牡1歳、父ローズキングダム)
    キングジャガーの半弟(牡1歳、父ローズキングダム)
  • イワミ牧場の放牧地
    イワミ牧場の放牧地
  • イワミ牧場の厩舎
    イワミ牧場の厩舎
  • イワミ牧場の看板
    イワミ牧場の看板

 『ダービーシリーズ2017』の第5戦「岩手ダービー ダイヤモンドカップ(水沢)」は、1番人気に応えてキングジャガーが快勝。好スタートから楽にハナを奪うと、快調に飛ばしてレースを引っ張り、最後の直線では追いすがるハドソンホーネットを突き放してそのままゴールイン。王者の風格漂う逃げ切り勝ちで、4月のやまびこ賞につづく重賞2勝目をダービーの大舞台で飾った。

 キングジャガーの生まれ故郷は、新冠町のイワミ牧場。2014年のスプリンターズステークス(G1)優勝馬スノードラゴンの生産牧場として一躍脚光を浴びたのは記憶に新しいが、牧場の歴史は古く、1976年の北関東ダービー(宇都宮)を制したマツノコウゲン、1994年の栄城賞(当時は佐賀所属馬限定のダービー)に勝ったトミシュガー、2009年の兵庫ダービー(姫路)優勝馬カラテチョップにつづき、“ダービー”のタイトルも今回で4つ目となる。「1番人気に支持されていたので期待はしていましたが、逃げてそのまま押し切るという完璧な勝ち方でしたね。どのレースでも生産馬の優勝は嬉しいものですが、やはりダービーと名のつくレースは格別です」と話すのは、イワミ牧場の3代目場主・岩見昌弘さん。岩見さんは競走馬の生産に加え、修業時代にビッグレッドファームで培った騎乗技術を活かし、自家生産馬や他の牧場から預かった馬に自ら跨って騎乗育成も行っている。先日、9歳でサンタアニタトロフィー(大井)を制したゴーディーも、岩見さんが自ら乗って調教をつけた育成馬だ。

 キングジャガーの母ケージーササニシキは、お腹にキングヘイローの仔を宿した状態でイワミ牧場へとやってきたそうだ。「母にとっての初仔でしたが、馬格のあるしっかりとした牡馬が生まれてきてくれました。すごく出来が良いとは感じていましたが、まさかダービーを獲ってくれるような馬に成長してくれるとまでは想像しませんでした」と、キングジャガーが生まれた当時の印象を明かす。

 実はキングジャガーと同じ2014年にイワミ牧場で生まれ、同じ放牧地で仲良く育った馬の中に、昨年のダリア賞(新潟)に優勝して朝日杯フューチュリティステークス(G1)へも駒を進めたリンクスゼロがいた。「不思議なことに、活躍馬の出る年は重なるんですよね。スノードラゴンの同期にも、JRAで4勝を挙げたのちに佐賀へ移籍して重賞を5勝したケージーヨシツネという馬がいました。どちらの世代も放牧地にいる頃から、何か光るものを感じていました」と、数年前の話をまるで昨日のことのように詳細に語ってくれた。

 牧場には現在、キングジャガーの半妹(牝2歳、父プリサイスエンド)と半弟(牡1歳、父ローズキングダム)がいて、母ケージーササニシキはお腹に父ヴァンセンヌの仔を宿している。「2歳の牝馬はデビューに向けて、私が毎日乗って調教を行っています。牝馬なのでキングジャガーと比べると体はコンパクトですが、骨量が豊富でがっちりとした馬体をしていますね。大井競馬に所属して南関東でデビューする予定ですが、いかにも地方のダートが合いそうなタイプです。1歳の牡馬も体は立派な方ですね。こちらは8月のサマーセールに上場する予定です。ケージーササニシキは仔出しの良い母馬なので、ディープインパクトの後継種牡馬であるヴァンセンヌとの交配で、来年どんな仔が生まれてくるか楽しみです」と妹弟、そしてお腹の中の仔にも期待を膨らませる。

 「この規模の牧場で、生産から育成までを一貫して行っている人は日高でも少ないと思うんですよ。だからこその夢があって、生産・育成した牝馬が繁殖として牧場に戻り、その仔をまた育成して重賞を獲れるような馬に育ててみたいんです。まさにキングジャガーの妹なんかは、その夢を懸けてみたい1頭ですね」と目を輝かせる。「繁殖にも種付にもそれほど投資できていませんが、本当に馬が頑張ってくれるんですよ。感謝の気持ちでいっぱいです」と話す岩見さんだが、きっとその優しい性格や馬づくりへの真摯な取り組みが関わった馬たちに伝わり、それが結果として現れているのだろう。愛情たっぷりに生産馬を見つめる岩見さんの表情を見て、そんな風に感じた。