2016年07月21日 ノースクイーンC(GDJ)
優勝馬:タイムビヨンド
プロフィール
- 生年月日
- 2012年04月09日 04歳
- 性別/毛色
- 牝/栗毛
- 戦績
- 国内:20戦5勝
- 総収得賞金
- 42,790,000円
- 母 (母父)
- ブルーダイナ by カコイーシーズ(USA)
- 馬主
- 木谷 ツヤ
- 生産者
- 船越牧場 (門別)
- 調教師
- 堂山 芳則
- 騎手
- 宮崎 光行
『グランダム・ジャパン(GDJ)2016』古馬シーズンの第2戦は、門別競馬場1800mが舞台となる「ノースクイーンカップ」。昨年のGDJ古馬シーズンチャンピオン・サンバビーン(牝6歳)や、一昨年のGDJ2歳チャンピオン・ジュエルクイーン(牝4歳)などの強豪が顔を揃える中、1.9倍の1番人気に支持されたのは重賞未勝利馬タイムビヨンド(牝4歳)。その期待に応えるように中団から落ち着いてレースを進め、最後の直線で外から力強く脚を伸ばして先頭でゴールイン。デビューから20戦目にして、嬉しい初重賞勝利を飾った。
タイムビヨンドの生まれ故郷は、門別競馬場のすぐ近くに牧場を構える船越牧場。もともとは平取町で牧場を創業したが、二風谷ダムの建設に伴って立ち退きとなり、現在の場所へと移転してきた。過去には1997年の帝王賞(G1)を制したコンサートボーイや、2011年の北海優駿馬ピエールタイガーなどの活躍馬を生産。現在は創業者の船越三弘さんと息子の弘美さんのご家族で、7頭の繁殖牝馬とその仔たちの世話をする傍ら、肉用牛の生産も並行して行っている。
「北海優駿も王冠賞も2着。JRA札幌や水沢のダービーグランプリに遠征しても2着。本当に2着の多い馬なんですが、ようやく重賞を勝ってくれましたね。初めての重賞勝利はもちろん嬉しかったのですが、生産者賞が付いていることをレース後に知って、ダブルの喜びでした」と満面の笑みを浮かべる船越さん。副賞で得た種付権のキングズベストを来年、どの繁殖牝馬に交配しようかと、夢を膨らませながら頭を悩ませているそうだ。
タイムビヨンドが牧場で過ごした時代について伺うと、「馬体もそれほど大きくはなく、とてもおとなしい馬でした。特に目立ったエピソードはないのですが、ちょうどタイムビヨンドの世代から通年での昼夜放牧を始めたんですよ。この辺は海が近いので風が強く、冬場は吹雪く日も少なくありません。それでも昼夜放牧をつづけていると、ちょっとしたことでは物怖じしない精神的な強さが育まれているように感じますし、どの馬も風邪を一切ひかなくなりました」と、新たに始めた取り組みに手応えを感じているようだ。
昼夜放牧で心身を鍛えられながら健やかに育っていったタイムビヨンドは、1歳夏の北海道サマーセールに上場。しかし、価格が折り合わずに主取りとなってしまい、がっくりと肩を落として牧場へ連れて帰ってきたという。聞けばコンサートボーイもピエールタイガーも、なかなか買い手がつかずに苦労した馬だったそうだ。「そういう馬に限って結果を残すのですから、本当に分からないものですね」と、複雑な表情で苦笑いを浮かべる船越さん。
タイムビヨンドの母ブルーダイナはコンサートボーイの全妹にあたり、南関東で17戦2勝の戦績を残して生まれ故郷の船越牧場へ戻ってきた。「コンサートボーイが大活躍してくれたので、それからはこの牝系にカコイーシーズをつづけて交配していきました。ピエールタイガーもこの牝系出身のカコイーシーズ産駒ですから、本当に相性が良いですね」と、その血統について説明する。
現在、放牧地ではタイムビヨンドの全妹にあたる当歳馬がすくすくと育っており、母のブルーダイナはタイムパラドックスの仔をお腹に宿しているそうだ。「全妹ですが、タイムビヨンドとは少しタイプが違いますね。こちらの方が大きく育ってくれそうです」と、姉の活躍を受けて妹やお腹の仔にも期待を膨らませている。
「サラブレッドの生産は縮小していこうかと考えていたところにタイムビヨンドが活躍してくれて、また繁殖の数も増やし始めました。コンサートボーイも今年で24歳になりましたが、まだ元気で過ごしてくれていますし、この牝系からまた新たな活躍馬を出したいです」と目を輝かせる船越さん。
船越牧場で生まれ、競走馬として育っていく仔たちの姿を、向かいの放牧地からコンサートボーイが優しい目で見守っている。偉大なG1馬のパワーが宿るこの地から、新たな歴史を刻む名馬が誕生してきてほしい。その最も近いところにいるのが、『グランダム・ジャパン』古馬チャンピオンをめざすタイムビヨンドなのかもしれない。