重賞ウィナーレポート

2014年10月26日 菊花賞 G1

2014年10月26日 京都競馬場 晴 良 芝 3000m このレースの詳細データをJBIS-Searchで見る

優勝馬:トーホウジャッカル

プロフィール

生年月日
2011年03月11日 03歳
性別/毛色
牡/栗毛
戦績
国内:7戦3勝
総収得賞金
213,280,000円
スペシャルウィーク
母 (母父)
トーホウガイア(USA)  by  Unbridled's Song(USA)
馬主
東豊物産 (株)
生産者
竹島 幸治 (門別)
調教師
谷 潔
騎手
酒井 学
  • トーホウジャッカルの母トーホウガイア
    トーホウジャッカルの母トーホウガイア
  • 右から竹島幸治さん、場長の飯田秀倫さん、スタッフの高根将来さん
    右から竹島幸治さん、場長の飯田秀倫さん、スタッフの高根将来さん
  • 繁殖牝馬は15頭
    繁殖牝馬は15頭
  • 日高町庫富(くらとみ)地区に本場と分場を構える
    日高町庫富(くらとみ)地区に本場と分場を構える
  • レース後、万歳で勝利を喜ぶ皆さん
    レース後、万歳で勝利を喜ぶ皆さん

 牡馬クラシック最後の一冠、菊花賞(G1)はトーホウジャッカルが好位から抜け出し、最後はサウンズオブアースとの競り合いを制して、日本レコードで快勝した。

 本馬の生産者は日高町庫富の竹島幸治さん。繁殖牝馬15頭の牧場を経営し、代表の竹島幸治さんと場長の飯田秀倫さん、スタッフ1名で経営している。過去には2004年のCBC賞(G2)2着のゴールデンロドリゴや2008年のマーメイドS(G3)優勝馬トーホウシャイン、今年のCBC賞(G3)を制し、秋のスプリンターズS(G1)に駒を進めたトーホウアマポーラを生産している。

 当日、京都競馬場へ応援に駆けつけていた竹島幸治さん。午後3時をまわると、出走馬関係者しか入れないG1パドックの輪の中、栄えあるその中に立っていた。日高町の自宅ではその姿を竹島さんの妻・絹江さんや娘さんたちがテレビの画面から探していた。

 「このような機会は今後ないかもしれないと思いながら、中に入っていました。騎乗する酒井学騎手がすごく落ち着いていて、その話しぶりから間違いなく自信を持っている様子だとわかりました。レースは私の見ていた場所の関係で、4コーナーを向いてから馬を見失ったのですが、残り200mから見えて、その瞬間には先頭を走っていました。ただ、内からサウンズオブアースが迫っていて、一瞬交わされるかと思いましたが、それからまた伸びましたからね。『強い馬が勝つ』と言われる菊花賞(G1)をいつか勝ちたいと生産に励んできたので、本当に嬉しかったです。この馬に携わった皆さんのおかげですね。」と、喜びを語ってくれた。

 レース直後は日高町の三輪茂町長や近隣の牧場関係者が竹島さん宅に駆けつけ、竹島さん家族と一緒に万歳で優勝を祝った。絹江さんはG1制覇を受けて、場長の飯田さんと「夢が叶ったね」とがっちりと握手をした。

 本馬は父スペシャルウィーク、母トーホウガイア、母の父Unbridled's Songという血統。半姉に前述の重賞馬トーホウアマポーラがいる。中長距離適性のある種牡馬を、というオーナーの意向でスペシャルウィークの交配が決まり、母の4番仔として誕生した。幼少期については、「父に似て薄手で脚長なタイプでした。わりと穏やかな気性で、人に反抗するようなことはなかったです。1歳2月に高い牧柵を飛び越えたことがあり、馬は擦り傷で済んだのですが、その時は“ジャンプレースの馬みたいだな”と思いました。」と、竹島さんは記憶をたどる。

 本馬の出産から立ち会い、竹島さんとともに成長を見守ってきた飯田さんは、「ジャッカルが生まれた日は2頭生まれていて、慌ただしい夜でした。生まれた時は62kgあり、立派な栗毛馬でした。ただ、それから少し食の細い傾向が出て、なかなか体に実が入らず、体高のわりに体重が増えませんでした。様子を見ながら飼い葉を増やすなど試行錯誤した一頭です。」と、当時を振り返る。

 1歳11月からは同牧場を離れ、浦河町の武田ステーブルに移動し、更なる育成が施された。2歳8月には重度の腸炎を患い、一時は体重が50kg近く減ったものの、育成牧場、獣医師の努力や、本馬の秀でた生命力から立ち直り、新馬戦終了後の3歳5月末、初陣(京都・芝1800m)にこぎつけた。竹島さんは、

 「腸炎の話も聞いていたので、無事にデビューできた時はホッとしました。着順ほど悪い内容でもなかったですからね。オーナーはジャッカルについて“素質はアマポーラより上”と、谷調教師は“距離が延びて良い”と話していました。」と、思い出す。されど、初戦10着で2戦目は9着。のちのクラシックホースながら、競走馬生命の危機を経験し、夏までは無名に近い存在だった。

 母トーホウガイアは海外トレーニングセール出身馬で、JRAでデビュー後岩手へ移籍し、9勝をマーク。連戦連勝でオープンまで昇級し、敗れたものの岩手重賞・第31回ビューチフル・ドリーマーCでは2番人気に推されるほど出世した。

 2006年から同牧場で繁殖入りし、これまで6頭を出産。1歳は父ネオユニヴァースの牝馬で、栗東・高橋亮厩舎に入厩予定。今年は出産をお休みしており、来年に向けてハーツクライの仔を受胎している。栗毛の美しい馬で、撮影では落ち着き払ってポーズを決めてくれた。2番仔トーホウアマポーラ(父フジキセキ)は芝1200mの重賞馬で、本馬が芝3000mのG1馬。父馬は違えど、両極端な結果をもたらしている。

 「今年13歳となったトーホウガイアは順調に繁殖生活を送っています。子育てはわりと放任主義で、ジャッカルは放牧地で他の繁殖牝馬の近くにいたこともよくありました。」と、竹島さん。トーホウアマポーラを含めすでに5頭の牝馬が生まれており、これから母系の枝葉は広がっていくだろう。牧場から始まる名牝の流れに注目したい。

 デビューから史上最短の記録を作って菊花賞馬となり、一躍全国の競馬ファンが知る存在となった本馬。東日本大震災の日に生まれたということもあり、そうした縁で同牧場には被災した方からもメッセージが寄せられたという。様々なエピソードが折り重なったことや、尾花栗毛の目立つルックスはファンを一層惹きつけている。竹島さんはG1制覇から取材が相次ぎ、勝利の大きさを改めて実感。胸中ではまた来年、彼らしい走りを望んでいる。

 「多くの方からお祝いの言葉やお花などをいただき、本当に嬉しく思っています。良いことがあった時こそ、舞い上がって油断しないように気を付けています(苦笑)。ジャッカルには今後も無事に走って、次のステップに進んで欲しいです。競馬はどの馬でも無事に出走すること、1勝することは大変ですが、牧場としてはジャッカルに続く馬を目指していきたいです。」