2014年06月01日 目黒記念 G2
優勝馬:マイネルメダリスト
プロフィール
- 生年月日
- 2008年04月18日 06歳
- 性別/毛色
- 牡/鹿毛
- 戦績
- 国内:36戦6勝
- 総収得賞金
- 214,810,000円
- 父
- ステイゴールド
- 母 (母父)
- ツクバノーブル by アサティス(USA)
- 馬主
- (株) サラブレッドクラブ・ラフィアン
- 生産者
- 新冠伊藤牧場 (新冠)
- 調教師
- 田中 清隆
- 騎手
- 蛯名 正義
ダービー(G1)当日のトリを飾る重賞としてすっかり定着した伝統の一戦、目黒記念(G2)はマイネルメダリストが中団から抜け出し、待望の初タイトルを手にした。
本馬の生産は新冠町高江に構える新冠伊藤牧場。国道235号線沿いにあり、伊藤さんご家族で繁殖牝馬9頭を飼養している。昭和51年創業で、最近では昨年の京阪杯(G3)を制し、今年の高松宮記念(G1)に駒を進めたアースソニックや、JRA・準オープンまで勝ち進んだワールドエンドを生産している。
同牧場の伊藤久幸さんは自宅のテレビでレースを観戦していた。手元には朝にJ-PLACE静内で購入した応援馬券があった。「親しい生産者から、レースの週に“競馬場行かないの?”と聞かれたぐらいですが、出産を控えている馬がいましたからね。G2でしたし、掲示板ぐらいに来てくれれば、という気持ちで見ていました。接戦だったので、ゴールするまで勝ったかわからず、実感もすぐには沸かなかったですね。血統的にはステイゴールド産駒で、母系のタマモイナズマは中長距離で活躍しましたから、芝2500mはぴったりの条件。蛯名正義騎手の好騎乗も光りました。近走はずっとコンビを組んでいて、調教でも騎乗していたので、人馬とも万全の態勢だったのではと思います。レース後はお世話になった方々や友達から沢山お電話をいただき、本当に嬉しかったです。」と、余韻を確かめるように感想を伝えてくれた。
ステイゴールド産駒の本馬は、母ツクバノーブルの9番仔として誕生した。当歳時、HBAセレクションセールに上場し、525万円(税込)で落札された。「サンデーサイレンス系種牡馬を交配したいと考え、ステイゴールドを交配しました。父母は気性の強い馬同士でしたが、わりと大人しい仔に生まれました。ちょうど当歳からの夜間放牧に取り組み始めた世代で、早くから長時間放牧していました。」と、幼少期を振り返る。1歳春までを同牧場で過ごし、その後コスモヴューファームに移動した。
母系は創業当時からつないでいる血統で、重賞馬のタマモイナズマやタマモヒビキが出ている。母ツクバノーブルは現役時代、JRAで6勝をマークし、通算32戦中、実にその半数で連対を果たした。
「ツクバノーブルは素軽く、芝もダートも得意とする馬でした。いつも堅実に走ってくれて、繁殖になってからもファンの方に応援していただいています。気の強い母系の遺伝で、ツクバノーブルも最初は扱いに苦労しました。ただ、仔はよく可愛がり、受胎も良かったです。」と、紹介する。
1歳には父サウスヴィグラスの牝馬がいて、現在、同牧場で育っている。「奥手の血統ということもあり、まだ馬体は小さいのですが、これから成長が進んでいくでしょう。気性は強いタイプですね。」と、伊藤さん。サウスヴィグラス×アサティスという血統構成からは、ラブミーチャンをはじめとして実績馬が多く、半兄に続く出世も期待できるだろう。
2歳夏のデビューから約4年。下積み期間は決して短くはなかったが、6歳にして待望の重賞に手が届き、晩成の血統が花開いてきた。伊藤さんは、「これまで丈夫に走ってくれているので、血統もあると思いますが、当歳から夜間放牧をした効果もあったのかなと感じています。今度は是非G1に出走して欲しいですね。勝ち負け云々もありますが、あの舞台でどれだけ走れるか楽しみです。」と、声を弾ませる。G1出走の際には、家族の方が応援に駆けつける予定だという。
その一方で、伊藤さんは少し渋い表情も垣間見せた。「牧場に新しく高速道路が通る関係で、この先、牧場を移らなければならないのです。それで、このまま牧場を続けていくかどうか、悩みを抱えています。そうした矢先で昨年、今年と重賞馬が出たので…今も牧場のこれからについて、答えが出せないところです。」と、揺れる胸中を明かした。目下の生産馬の躍進は「新冠伊藤牧場」の未来に、深く影響を及ぼそうとしているのかもしれない。