2013年10月19日 富士S G3
優勝馬:ダノンシャーク
プロフィール
- 生年月日
- 2008年03月09日 05歳
- 性別/毛色
- 牡/鹿毛
- 戦績
- 国内:23戦6勝
- 総収得賞金
- 486,778,000円
- 母 (母父)
- カーラパワー(GB) by Caerleon(USA)
- 馬主
- (株) ダノックス
- 生産者
- 下河辺牧場 (門別)
- 調教師
- 大久保 龍志
- 騎手
- 内田 博幸
マイルCS (G1)の前哨戦・富士S(G3)はダノンシャークが好位から抜け出し、1番人気に応えて快勝した。G1馬・G1好走馬を下しての堂々たる勝利で、本番に向けて弾みをつけた。
本馬の生産は日高町の下河辺牧場。今年は桜花賞(G1)を制したアユサンをはじめ、同じ3歳世代のヒラボクディープ、古馬レッドスパーダといった生産馬がJRAで重賞を制し、たびたびこのコーナーでも紹介している。この秋には準オープン入りを果たしたサンライズメジャーや、3連勝でオープン馬となったスイートジュエリーといった伸び盛りの4歳馬も頭角を現し、生産馬活躍のたすきをつないでいる。
同牧場の育成部門を担う下河辺隆行さんは、レース当日、東京競馬場で本馬の走りを見守っていた。「近走、惜しい結果が続いていましたから、ホッとしました。前走から-12kgでの出走となったので、レース前はそのあたりを心配しましたが、問題ありませんでしたね。最後の直線は応援の声が出ました。オーナー、厩舎の皆さんと一緒に口取りができて良かったです。」と、安堵の表情で勝利を振り返った。
父ディープインパクト、母カーラパワー、母の父カーリアンという血統の本馬は、2008年に同牧場で誕生した。隆行さんは、「父の産駒らしく小柄で、柔らかい身のこなしをしていました。手のかからない馬で、行儀良く育ったことを覚えています。上の兄姉との比較では、特に気性面が優れていました。順調に競走馬としての道を歩んでくれました。」と、幼少期を振り返る。当歳時、セレクトセールに上場し、(株)ダノックスが3,150万円で落札。以後、競走馬としてはその10倍に迫る賞金を獲得している。
イギリス産の母カーラパワーは凱旋門賞馬モンジューと同じ牝系で、競走生活引退後に同牧場が購入した。最初の交配相手には隆行さんが育成時の調教で携わったシンダーを選び、その仔を宿して日本へとやってきた。「カーラパワーは交配種牡馬の長所を引き出すタイプで、優秀な繁殖牝馬です。馬体はやや小さめで、時折かん性の強い面を見せます。仔は総じて芝向きですね。今年はディープインパクトを受胎しています。」と、隆行さんは紹介する。
初仔ターキーは3勝をマークし、凱旋門賞馬シンダーの産駒らしく芝中長距離戦で力走を見せた。本馬とターキー以外にもワキノパワー(3勝)、レッズフィールド(1勝)、スティルゴールド(4勝)、レイカーラ(現4勝)、ボブキャット(現1勝)と、競走年齢に達した全ての産駒がJRAで勝利を収め、驚異的ともいえる実績を残している。
同牧場には本馬の全妹となる1歳馬がおり、こちらも順調に育成が進んでいるという。また、ターキーはカーラパワーの血を継ぐ娘として、故郷で元気に子育てに励んでいる。
今年、出走してきたレースは全てマイル戦という本馬。その一貫したローテは、固い意志を感じさせる。層が厚く、ライバルの多い路線で揉まれながら、着実にレベルを上げてきた。これまで出走したG1・2戦は0.4秒差の6着と、0.1秒差の3着。弾ける決め脚は、チャンピオンマイラーの地位へと迫っている。
「まずは、今後も無事に走ってきて欲しいです。それが第一ですね。これまでG1では賞金不足だったり、ボーダーラインだったり、出走できるかどうかも難しい状況でしたが、今回はそうした心配もなく挑めます。昨年のマイルCS(G1)では不利があり、全力を発揮できませんでしたので、今年はそのうっ憤を晴らすような走りを見せて欲しいと思います。」と、悔いのないレースを願う隆行さん。3度目の頂上アタックへ向け、視界は明るく広がっている。プロの投手が投げる球のように、プロのサッカー選手が放つフリーキックのように、圧倒的なキレが研ぎ澄まされてきた。一流のサラブレッドとして完成されてきた今、背中に受ける歓声は最高潮へと達する。